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まだ恋をした事がない
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しおりを挟む「どうも初めまして。私、マキタと申します。これからソヨダさんのパートナーを
見つけるお手伝いをさせて頂きますのでよろしくお願いします」
そう言って現れた仲人のマキタさんは手荷物を沢山持っていた。
その手荷物をドスドスと置くと対面に座って笑顔を向けられると正直怖かった。
苦手な笑顔である。知っているのだその笑顔はただの仮面で本心では笑ってなん
ていないという事はさんざん体験してきた。
だからさっそく不安になった。
これはお金だけをとられてしまうやつなのではないだろうかと、既に入会金を
払ってしまったからもう取り戻す事は出来ないのだが、これ以上のお金は出した
くはないし、出さないと自分に言い聞かせる。
「それではソヨダさんはどのような方を探しているのかを教えてもらってもいい
ですか? 」
そう聞かれてしまうと困ってしまう。
何を何処まで言っていいものかがよく分からないのだ。
自分の理想像をただ言えと言われてもそんな事を軽々しく口になんて出来ない、
こっちにだってプライドがあるのだから。
「そうですね、では年齢はどれぐらいがいいですか? 」
何も言わないでいることにしびれを切らして向こうから質問してきたが年齢と
言われてもとは思うのだ。
「あまり離れていない方が」
それが一番いいだろうと思う。
あまり離れすぎていても世代のギャップが出来てしまって、何かしらのトラブル
になるかもしれない。そういうのはあまりよろしくない。
「そうですか、では結婚した場合は家庭に入ってもらう方がいいですか? 」
「そうですね、身の回りの事をしてもらいたいと考えています」
出来る事なら出迎えて欲しいと思ってしまうのだ。
誰も居ない家に帰るという事の寂しさは結構堪えるものだ。
何とも言えない静けさと冷たさはどうしたって慣れる事はない。
「ほうほう。そうなりますとソヨダさんのパートナー候補はこのぐらいでしょうか
ね? えーっと20人ですかね」
マキタさんは持って来た荷物の中をガサゴソと漁って、20人分の資料をドンと
机の上に置いた。目の前に置かれたそれは中々の量で少し狼狽えてしまうが、
それだけの人が居るという事は喜ぶべき事なのだろうか? この中から選ばなけ
ればいけないというのは難しいのではないだろうか?
「もう少し、絞りましょうかね。そうですね、巨乳がいいですか? 」
まさかの質問だった。
そんなピンポイントな質問をされるなんて思っていなかったし、それが選択肢
の中に含まれているのだという事に驚いた。
「はい」
だから出た言葉は純粋な気持ちだった。
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