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菫川ヒイロ

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帰り道

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「リズ、水を汲んで来てちょうだい」


 お母さんにそう言われて私は井戸へ水を汲み行く事にした。
 
 
 はあ~
 流石に最近は寒くなってきて手をこすり合わせながら吹きかけた息は白くなって
 いた。開いた掌も白いがまあ文句を言っても仕方が無いので私はバケツを持って
 井戸へ急ぐ。


 井戸には既に何人かが集まっていた。
 
 
「おはようございます」


「ああリズ、おはよう。今日も寒いね」


 私はおばさん達の中に混ざって順番を待った。
 
 
「まったく家の馬鹿と来たらまだ寝てるんだよ、嫌になるね」


「家も同じようなもんさ。こっちは働いてんだって大口叩いているけど、大した
 額も稼げなてないのに口ばっかりでさ」
 
 
「奥さんの所なんてまだマシさね。家よりも稼いでいるだろうに」


「いやいや、家なんて大した事はないんだよ。ほんと、家は子供が多いからいろい
 ろかかって大変なんだよ」
 
 
 私はこの腹の探り合いの会話を聞きながら早く自分の番になればいいなと考えて
 いた。正直こういうのは苦手なのだ。他人の家の懐事情なんてものに興味がない、
 そんなものを知ってどうするのだろうか? 知った所で自分の懐が温まるなんて
 事がある訳もないのに。
 
 
 ただ自分達より優れているものへの妬み嫉み、足の引っ張り合い。
 自分が苦労していれば相手にも強要する、不幸の押し売り。
 一体何の為に生まれて来たのだろうか? そんな事を自分の人生の目的にして
 生きているなんて恥ずかしいとは思わないのだろうか?
 
 
 まったく朝から嫌な気分だった。
 
 
「そう言えばそろそろだっただろ? どうなるんだろうね」


「さあね。私達にはどう仕様もないさ、ただこの村の未来がかかってるんだから
 どうにかして欲しいとは思うけど、こればっかりわね」
 
 
「そうだね、私が若かったらきっと選ばれただろうね」


「何を言っているんだい、それなら私の方がいいに決まっるさね」


 二人がよく分からないポーズをとり合っているのを遠い目をしてやり過ごす。
 本当に嫌な気分だった。
 
 






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