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帰り道
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しおりを挟む王都へ出て来たのは結婚する為だった。
あの頃の自分にはそれが崇高なもののように思えていたのだ。
家族だって私の事を祝福してくれたし、これからの自分の未来は明るいと考えて
いたのに現実はそんな事がなかった。
ここ王都では花嫁探しという行事? が行われる。
私にはまったく縁のないそれはお貴族様の結婚相手を探すという名目で、実際は
側室を探す催しであった。
お貴族様のする事である。
私が何かを言うなんて事が出来る訳はないけれど、はっきり言って不快でしか
なかった。そんなものを行う意味があるのかと思っていたし、そんなものに出る
女達を私は見下していたのだ。
私が嫁いだ先は王都でもそれなりに大きな宿屋。
始めて見た時はその大きさに驚いたし、その豪華な外装に圧倒された。
自分の生きて来た中でこんな場所があるなんて知らなかったのだ。
「さあ中へ」
口を開けて見上げていた私に彼は言う。
私にはそんな彼がとても煌いて見えていた。最初に見た時は道端に汚らしい恰好
で転がっていたのに、こんなにも人って変わるのかと思ってしまう。本当に現実
なのかと疑いたくなった。
たまたま見つけた彼を父親と一緒に家まで運び、介抱してあげたのが事の始まり
であった。気が付いた彼が言ったのは野盗に襲われたのだという。それは災難
だったと家でしばらく過ごす事になった彼に私はただ病人に対するように接した
だけだった。
だというのに彼は私の事を気に入ったらしく、毎日のように口説かれた。
最初は彼の言っている言葉の意味が理解出来なかったけど、だんだんそれが私の
事を褒めているのだという事が分かり、彼も理解したのだろう。遠回しではなく
直接言う方が効果があるという事を。
褒められて悪い気がするような者など存在しない訳で、私はいつしか彼の言葉に
気を良くして、結局つられてしまった。きっと私はチョロかった事だろう。
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