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帰り道

１１

　私は必死だった。
　ここに馴染むために頑張ったつもりである。
　その結果みんなに、彼の両親に認めて貰ったと思っていた。
　
　
　彼が私を連れて宿屋へ入った時、誰もが彼を歓迎し喜んだが私の事を見る目は
　冷たかった。それは私でもすぐに分る嫌悪感だった。突然現れた女が彼の嫁と
　してやって来たのだ。どこの誰だかも分からないような者に対して拒否反応は
　あからさまだった。
　
　
「どういう事ですか？　」


　彼の母親のその言葉が全てあった。
　彼も予想外の反応だったのは分かったから私は何も言わずにただ彼が説明する
　のを聞いていた。でもそれで何かが変わるという事はなかったのだ。
　
　
「そうですか。息子を助けて頂いた事には感謝しております」


　それはとても綺麗な礼だった。


「ですが結婚となると話は別。そんな大事な事を勝手に決めるなんて何を考えてい
　るのですか貴方は！　もっと跡取りとしての自覚を持って行動しなさい」
　
　
　そこからはずっと彼の話をつらつらとし続け、視線は常に彼に向けられており
　私の事など眼中になかった。
　
　
「これで貴方も分かったでしょう。世の中がそんなに甘くは無いという事が。
　これからは遊び歩いていないでちゃんと仕事を身につけなさい！　」
　
　
「母さん！　ちょっと待ってよ」


　戻って行く母親を追いかけていく彼を私はただ見ている事しか出来なく、
　突っ立っている私に従業員が言う。
　
　
「そこに居られると邪魔なんだけど、どいてくれない？　」


　何だこれは？　と思いながら私はとりあえずどいたが、その後も何度も従業員達
　から邪魔だと言われ続けて、隅に追いやられた私は戻って来た彼を見てもう泣き
　そうだった。
　
　
「ごめん、ちゃんと母さんに話をつけて来たから。
　それにしてもどうしてこんな所に居るんだ？　」
　

　我慢も限界だった。