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帰り道

１４

　バスにはいろんな人が乗っている。
　
　
　自信を叩き砕かれ、夢破れた者。
　これからの言い訳を必死になって考えている者。
　理想が現実に押しつぶされた者。
　
　
　それぞれがみな王都へと来るまでは楽しかったのに、
　帰る時はこんなにも辛いなんて思いもよらなかったであろう。
　
　
　そもそもこうして帰るという事を想定していなかったのではないだろうか？
　
　
　分からなくはない。
　登山みたいものである。山は登ったら下りないといけないのである。
　みんな下山することを頭に入れておらず、登った時の達成感を味わいたくて
　必死になって登るけど、頂上に着いたってそれはまだ半分なのである。
　これから下りないといけないという現実にみんな打ちひしがれる事になる。
　
　
　結局はそういうモノなのである。
　
　
　私だって夢を抱いて村を出た。
　何かが変わると思っていた。
　自分にはきっとそんな素晴らしい未来が待っているって思っていたのに、
　それが今はこうしてバスガイドとして働いている。
　
　
　あれから私もいろんな事があって、いろんな経験をして来た。
　少しばかりの恋もしてはみたけど、結局続かなかったのだ。
　それが何だと言われればそれまでだけど、私なりにそれは結構大きな事で……
　
　
　そう考えれば今も結構悪くはないのかもしれない。
　
　
　こっちに来て、こっちの考えに染まってしまったからこんな風に考えてしまう
　ようになってしまった自分に驚いてしまう。
　
　
「私、結構変わってるわ」


　そんな独り言を言った私を運転手が変な者を見る目で見て来るから私は笑い返す。
　それぐらいの事は出来るようになったのだ私も。小さい時の様にもう泣いたりも
　しないし、嫌味を言ったりもしない。大人の振る舞いである。
　
　
　そう言えば最近分かった事があった。
　ジータはどうやら私の事が好きだったという事である。
　あんなに嫌がらせをする意味が今でも理解に困るけど、どうやらそういう事らし
　いと学んだのだ。気を引く為だとかなんとかという理由らしいがどう考えたって
　それは逆効果だよなと思う。
　
　
　だって私はずっと警戒していたぐらいなのだから。


　ガタゴト　ガタゴト　ガタゴト
　
　
　揺れる車内で私は考える。
　まだジータは私の事を好きなのだろうか？
　今度村に帰った時に聞いてみるのもいいかもしれない。
　
　
　ガタゴト　ガタゴト　ガタゴト
　
　
　帰り道をバスは進む。