恋愛倉庫

転売する女

１

　フットワークが軽いと言えば聞こえがいいのかもしれないが、実際にはそんなに
　いいものでもないと思っているのは私だけなのだろうか？　どこから聞きつけて
　来たのか知らないがその情報網に引っかかってしまったら、こうしてどこから
　ともなく現るのだベルミーは。
　
　
　どうしたの？　元気がないね？　何があったの？　話なら聞くよ？
　
　
　そんな言葉で近づいて行きフラれて弱っている男に近づくのは彼女の常であり、
　それが善意なのかどうかは私は分からない。だって彼女曰く、放って置くのは
　かわいそうよ。という事なのだ。
　
　
　まあそれは当事者にしか分からない事なのかもしれない。
　
　
　容姿もそれなりに整っている女に声を掛けられたら、傷心中の男がどうなるか
　なんて誰にでも分かりそうなものだ。そこに性別は関係ないかもしれないが……
　男なんてそんなものだろう？


　結局彼女に心を奪われて、掌握されてしまうのだ。


　そしてその男達は何処へ行くのかと言えば当然お相手がいない女の元へと
　送り出されるのである。
　
　
「ねえ、ベルミー。この子に誰か紹介してくれない？　」


「いいわよ。好きなタイプとかはあるの？　」


　そんな会話が普通に行われているが、これが本当に普通の事なのだろうか？
　
　
「ちょっと待ってね、そういうのは居たかな。最近結構紹介したからなあ、残って
　居るか分からないわよ」
　
　
　そう言いながら彼女が端末を操作するその様はもう業者である。