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最愛の人
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しおりを挟む「残酷だな」
翌日、彼女が見知らぬ男と一緒に歩いているのを見た。
とても楽しそうに談笑しているその姿を見て私は憐れみを覚えた。
いつだって彼女は私にいろんなものをくれるが、これはこれでなんとも言えない
気分である。そして私は昨日の彼女の言葉を思い出す。
「これ以上貴方と一緒には居られないの、だってこれ以上一緒にいたら貴方の
事を手にかけてしまう。それぐらい私は貴方の事が愛おしい。そう、今すぐ
にでも殺してしまいたいぐらいなの。このままではきっと我慢出来なくなって
しまうから……別れましょう」
そんな事を言われてしまったら当然別れるだろ?
だって彼女を犯罪者にする訳にはいかないのだから。
きっと彼女は私を殺した後自分の命も絶つのだろうし、
そんな事を彼女にさせる訳にはいかないのだ。
それは理想ではあるけれど現実的ではないから。
嗚呼、なんという事だろうか!
こうして距離をおく事によって私はより彼女の愛を感じる。
対比できる相手が居ると尚更だった。彼女の隣に居ても彼女から愛される事の
ないとあの男と離れていても愛されている私と一体どちらが幸せであるかなんて
明らかだろう?
それだけで私は胸が苦しい。
こんなにも愛が溢れ出している、なんて狂おしいのだろうか?
出来る事ならば彼女に触れたい。
あの指先に触れるだけでもいいとさえ思うけど、それが許されない。
彼女はなんて残酷なのだろう。
あの男にだけじゃなく、私にさえもこんな思いをさせるなんて……
やはり彼女は最愛の人だ。
あの温もりももう一度感じられる時がいつか来る日はあるのだろうか?
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