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菫川ヒイロ

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最愛の人

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 私にとって彼の話はまったくもって理解不能なのである。
 完全に外見に騙されてしまった。家柄に騙されてしまった。
 多少の事ならば受け流す事ぐらい出来るはずの私でも彼にはお手上げである。
 ミドルド、彼の話は理解が出来ない。
 
 
 そもそも例え話を例え話でするとかされたら何が言いたいのかがまったく分から
 ないじゃない。それはもはや別の関係の無い話なのだから、結局話が通じない
 のだ。だから私は彼の話を理解する為に一体どれだけの側仕えを使った事か。
 学校の授業よりも難解である会話をする日々が私にとってどれだけ辛かった事か。
 
 
 でもそんな事すら彼には理解出来ないのだ。
 
 
 どうすれば彼と別れる事が出来るのか、それが私にとって最も重要な命題で
 あった事は間違いない。流石に私の方からそんな話をするなんて事は出来ない。
 何せ私の方から言い寄ったのだ、それなのに私の方から別れ話なんてしたら
 私の評価が落ちてしまうではないか。それだけは避けなくてはいけない。
 
 
 そもそも何って言えば通じる?
 そんな大問題が浮かんで私は深い溜息が出た。
 
 
「どうしたんだい? 溜息なんてついて幸せが逃げてしまうよ」


 そんな時に出会ってしまった彼は私にとって運命の人だった。
 ミドルドとの会話に神経をすり減らしていた私にとって彼との何でもないよう
 な会話がどれほど心躍るものであったか。こんなにも意思疎通が取れるという
 事が嬉しいなんて私は知らなかった。
 
 
 ちゃんと返事が返って来るという事がこんなにも素晴らしいなんて私は知らな
 かった。そうそうこの感じ、もう忘れていたのだこのリズムを。そんな出会いを
 してしまっては余計に早くミドルドと別れたいという気持ちが強くなる。
 でもどうしたってそんな事は不可能に感じていた。
 
 
 『もう殺してしまうぐらいしかないかもしれないわ』
 
 
 そんな言葉が不意に頭に浮かんだ。
 私としたことがなんて事を考えているのだろうかと思った、初めは。
 こんな事、真っ当な人間が考えるような事ではないと思い直して、
 それが真っ当な人相手の考えであるという事に気が付いたのだ。
 
 
 ミドルドは真っ当な人か?
 
 
 そんな問題なら簡単に答えが出せる。
 だから私は決めたのだ、このままだと私の人生がとんでもない事になる。
 それならば多少の犠牲は仕方が無い。動くならば今だと思った。
 
 
 そして私はミドルドに別れ話をする事を決めたのだ。
 
 
 




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