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これが恋だとか愛だとかではないのだとして
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しおりを挟むそれは夢のような時間で、でもそれと同時に怖さもあって。
彼の両親と会う日が決まってから私は気が気でなかったのだ。
自分が受け入れて貰えるかどうかが心配だったのだ。
「大丈夫かな? ねえ、本当に大丈夫? 」
だから当日も何度も彼に尋ねた。
「大丈夫だって、その辺の話は一応したけど変な感じじゃなかったし。
寧ろ立派だって褒めていたぐらいだから」
彼のそんな言葉を私は信じていいのだろうか?
実際に会ってみたら逆の反応をされたりしないだろうか?
自分に自信なんて持てない私にはこれはなかなかに怖い事であった。
でももう腹を括るしかないのだ。
「来たよ~」
すでに彼の実家の前だったから。
彼がドアを開けて入ればそこにはお義父さんが居て、私達を迎え入れてくれた。
「よく来たね。ほら、入って入って」
私は促されるまま、家に上がる。
折角買ったお土産の袋はずっと握りしめたままである事すら忘れて、通された
部屋にはお母さんが待っていて、
「ようこそ……」
私は今起こっている事が現実なのか何なのかが分からなかった。
そこには確かにお母さんが居たのだから。
「どうして」
それはこっちの台詞である。
どうしてアンタがここに居るのだ?
あの日、子供を捨て置いて行った人がどうしてこんな所で私を迎えている?
忘れるはずもない、あの顔を、あの顔の黒子も全部を覚えている。
当然だろう、どれだけアンタの事を想っていたか。
アンタの不幸を願っていたか。
それが何だこれは、どういうつもりだ。
子供を捨てたような奴が家族なんて持っているのか?
この温かい家で、幸福そうな家族に囲まれて生きて来たのか今まで、
ふざけるな!
アンタにそんな権利は無いだろうが!
私が今までどんな思いで生きて来たのかを知っているのか!
今までの記憶が一気に溢れかえって来て、私の息は上がり、ドンっと手に持って
いた紙袋を落とした。
苦しくて苦しくて仕方が無い。
こんな場所では息が出来ない。
だから私は飛び出した。
こんな場所には居たくは無かったから。
「どうしたんだい急に」
追って来た彼に私は何を話せばいい?
「あの女に聞いて」
それが精一杯だった。
そこからどうやって帰ったのかなんて記憶はない。
ただ私が恋だの愛だのと思っていたものが、決してそんなものでは無かったと
いう事だけは理解出来た。
何もかもが滅茶苦茶になればいいのに
そんな事を期待している、この世界に私は。
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