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さよなら
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しおりを挟むパパ~ン
「凄いなビリーは、全部ホームランじゃないか! 」
「嗚呼、こんなのは当り前よ。おっちゃんアイスをくれい! 」
そして俺はホームラン賞のアイスを貰うのはいつもの事である。
「あれ? 特賞が貰えるんじゃないの。全球ホームランだったんだから」
「無理無理、あれは11本打たないと」
「11本? でも10球しかボール出ないよね」
そうだ。ここのバッティングセンターは1回10球だが実際に11回のホームランを
打った記録保持者が存在している。だからその時に出した特賞が今でも存在して
いるがその後誰も特賞を取った者はいない。そもそもその特賞が何なのか知って
いる者は俺のばあちゃんしか居ない。
「やっと見つけた! ビリー、助っ人頼む! 」
「あ? 面倒臭ぇよ」
「頼むよビリー。負けそうなんだよ。お前が来てくれれば勝てるんだ、絶対に。
それに今日はミチャ子ちゃんも来てるしよ。いい所を見せられるチャンスだぜ?」
それを聞いて行かない訳にはいかなくなった俺はすぐに助っ人としてバッター
ボックスに立ったんだ。
「よう、ビリー。俺の新しい球をお前に見せてやる。ビビるんじゃねえぞ? 」
「御託はいいからさっさと投げて来いよ、みつお」
そして俺はミチャ子の方を見ると両手を握って願っている彼女の姿がそこには
あった。だから俺は打たなければならない。何があってもホームランを彼女の為
にホームランを、みつおのクソボールをしっかりと捉え振り抜いた。
パッ―――ン!!!!!
完璧な角度で打ち上がったボールは遥か彼方。
俺は彼女に指を差しながらダイヤモンドを回る。
マウンドで膝から崩れ落ちるみつおは滑稽であった。
あんなクソボールで俺を打ち取るつもりだったとは笑わせる。
ヤッター! 流石だぜビリー! やってくれると思ってたぜ!
みんながホームで俺を出迎えてくれる。
歓声の中を俺はかき分けてミチャ子の元へ行く。
高鳴る鼓動、今ならきっと……
「見たかミチャ子? 」
「ええ、見たわ。本当に最悪だった。アンタさえ来なければみつお君が勝っていた
のに、アンタの所為で台無しよ。今日は調子よかったのに、アンタがまた前みた
いにホームランなんて打つから、みつお君がかわいそう。どれだけみつお君が
練習したのかアンタ知ってるの? それをあんな簡単に打つとかあり得ない。
アンタなんて大っ嫌いよ! 」
嗚呼、ばあちゃん。
ホームランなんか打てたって恋は出来ないぞ。
そんな事を実感した、さよならホームランだった。
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