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恋する獣
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しおりを挟む「来てくれたのねシルキスア。嬉しいわ! 」
お見舞いにやって来た私を伯母は歓迎してくれた。
本当に病人なのかと思うくらいに伯母の姿は元気そうである。
「これ、お見舞い。ああ、母からです」
私は母に持たされたお見舞いを渡す。
母は叔母の事を私と違って苦手としており、こうしていつも私を使うのだ。
別に私は叔母と会える事を楽しみにしていたのでいいのだが、母がどうして
伯母を苦手としているのかは知らない。
「そう、悪いわね。お礼言っといて頂戴ね」
伯母はなんとも思っていないようであるから、結局は母の方の問題なのだろう。
「なんか元気そうで安心した。倒れたって聞いた時私すっごく心配したんだよ? 」
「本当に? 」
そんな返事は叔母らしいが、それでも本当に心配したのだ。
「まあ、若い時のツケよね。好き勝手にやって来たからね私。結構危なかったって
言われたけど実際こんなに元気なんだからすぐにでも退院したいぐらいよ」
伯母はを手を動かして見せる。確かにそれだけ動けるのならそんなに心配は
いらないかもしれない。
「それに退屈なのよね、あれもするなこれもするなって禁止ばかりされて嫌気が
差していたのよ。だから良かったわシルキスアが来てくれて、何か楽しい事は
あった? 」
伯母は好奇な眼差しで私を見るけど、生憎私にはそんな楽しい事が降って来る
ような人生を歩んではいない。出来るのはそう、たいして面白くもない私の
身の上相談くらいなものだった。
*****
私が伯母のお見舞いに行っている間に殿下御一行は遊園地へと赴いていた。
だから今日はその話ばかりである。あれが楽しかっただのなんのと、そこに私が
入る隙間なんて存在はせず蚊帳の外であった。
それは予想通りの展開で、明らかに私への当てつけで笑ってしまいそうになるが
なんとか我慢した。楽しかったのはきっと本当の事なのだろうし、いい思い出に
なった事だろう。伯母も言っていた、思い出作りに一体何の意味があるのかと。
「殿下! 」
「ん? 何だいシルキス……」
私は殿下を振り向かせてそのままキスをした。
「ちょっ、何をしてるのよ! 」
余裕が無くなるとそんな言い方になるのだと思いながらも私は止めなかった。
簡単な事だった、私は邪魔なものを捨てただけだった。
『理性なんて捨ててしまえばいいわ、そうすれば男なんて簡単に落ちるから』
伯母はそう私に教えてくれたのだ。
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