恋愛倉庫

菫川ヒイロ

文字の大きさ
179 / 425
四丁目の交差点の角のタバコ屋の二階に住んで居るレイチェル

しおりを挟む




 私はきっと世界で一番キレイなのだろう。
 私はきっと世界で一番カワイイのだろう。
 私はきっと世界で一番素敵なのだろう。
 
 
 街を歩けば誰だって振り向いてしまうような、
 どんな男も声を掛けずにはいられなくなるようなそんな女の子。


 このブロンドの髪も、透き通るような肌も、柔らかそうな唇も
 全てが魅力的なそんな女の子
 
 
 きっとそうなのだろう。
 この男がそう言うのだから間違いがない。
 
 
「何処がだよ! ただのドブスだろうが! 」


 私がいい気分で日曜の午後を過ごしていたのに、そんな声が空から降って来た。
 だから私は見上げたのだ、その声がする方を見上げたらそこには窓から顔を出し
 てこっちを見ている女が居た。
 
 
「うるさいぞレイチェル! 邪魔をするんじゃあない! 」


 男はその女に対してそう怒鳴りつける。
 
 
「ああん? そっちの方がうるさいのよ! こんな日曜の午後にこんな通りで
 ナンパなんてしてんじゃないわよ、気持ち悪い! 」
 
 
「気持ち悪くなんてないわ! 俺が何処で何をしようと俺の勝手だろうが! 
 そもそもここでナンパをしちゃいけないなんて聞いた事がないぞ! 」
 
 
 一体何の言い争いなのだろうか?
 私にはどうでもいい事なのだが、まだこれを聞いていないといけないのか?
 
 
「アンタのセンスの話よ! そんなドブスを必死になって口説こうとしているのが
 最高に気持ち悪いって言ってんのよ。どんだけ必死なのよ、何でもいいの?
 そういう事なら好きにすればいいんじゃない? ただ信号を渡ってからにしてよ
 ね、反吐が出るから」
 
 
 というかさっきからこの女、私の悪口もちょいちょい挟んできてるのよね。
 これは私にも喧嘩を売ってるって事よね? あり得なくない? どうして私が
 見ず知らずの女にこんなにも罵倒されないといけない事があるの? 気分が悪い
 にも程がある。
 
 
「ちょっとアンタどういうつもり? 私に喧嘩売ってるの? 人のことを滅茶苦茶
 に言ってるくるけどさ、何なのよ! 」
 
 
「はあ? 真実を言っているだけでしょうが! アンタ自分がどんな顔をしてるの
 か知ってるの? 鏡見た事ある? そもそもそんな男に嘘つかれて、何をそんな
 に嬉しそうにしてるのよ、馬鹿なんじゃないの? そんなのに引っかかるから
 ドブスなのよ! 」
 
 
「なっ、何を言ってるのよ。別に喜んでなんかいないし、そもそも引っかかっても
 いないから。私がこんなのに引っかかる訳がないでしょうが! 」
 
 
「本当に? 」


「本当よ! 自分がちょっとカワイイからって勘違いしてんじゃないわよ! 
 アンタのその口の悪さが分かればどんな男だって幻滅するんだからね! 」
 
 
 私にはそれが精一杯だった。
 だからさっさとその場から立ち去る。
 
 
「ちょっと待ってよ! まだ話は……」


 男がまだ声を掛けて来たが、もう相手にするつもりはなかった。
 こんな状態でなんて無理に決まっている。
 
 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...