恋愛倉庫

花開く時

3

　『恋をするのは人生において一度だけ』
　それが浮遊都市アルドラバルノの住人の掟である。
　だからここの住人はそうそう恋なんてする事がないし、それは命懸けなのだ。
　恋は必ず実るものではないから。
　
　
　浮遊都市アルドラバルノは４つの階層に分けられている。
　それは身分の差であり、より高い位置に住む事を誰もが望んだ。
　でもそれはそうそう叶う事ではないのだ、特に第１層に住まう者に変動はない。
　そして俺もその最上位の階層に住んで居たのだ。
　
　
　変わる事のない未来が待っているはずだった。
　だというのに俺の未来は、決まっていたはずの未来は変わってしまった。
　
　
「ごめんなさい、貴方とは結婚出来ません」


　最初は聞き間違いかと思ったし、そもそも何を言っているのかが理解出来ずに
　いる俺の前に現れた男は一度も見た事がない男だった。
　
　
「悪いな兄ちゃん。そう言う事だから」


　何がどうなってこうなった？
　何も理解する事も出来ないまま俺は落とされたのだ、最下層へと。
　そこは失格者が送られる場所、そんな場所へ最上位で生活していた俺が落とされ
　るなんて事があっていいのか？
　
　
　聞いた話によれば、その男は下界から来たのだという。
　そんな男が来たのなら当然処分されるはずだったのに、それが出来なかった
　のはその男を匿っていた女が三賢人の家系だったというだけだった。
　最上位の階層であっても格差はあるのだ。
　
　
　そして俺が割を食う事になった。
　ただそのかわりと言っては何だが、リーダーに選ばれる事になった。
　
　
「はっ、夢か」

　
　その日の事を俺は今でも夢に見る。
　そしてそんな夢を見た日はいつだって碌な事がないのだ。