恋愛倉庫

菫川ヒイロ

文字の大きさ
238 / 425
それが答えだった

しおりを挟む




 こんな場所には似つかわしくない女が通りを歩いていた。
 身形がちゃんとしているだけでここでは目立ってしまう、そんな荒れ果てた
 場所へ女は一体何をしに来たのだろうか? 目的は何だろうか? 
 なんて事を考えたりはしない、いいカモが来たと思うだけだ。
 
 
 そして俺はいつもの様にするだけだった。
 
 
 ただ近づいてバックを奪う、そするのが俺のここでの仕事である。
 いつも通り何食わぬ顔をして後ろから近付いた俺に何もミスはなかったはずだ、
 でも俺の伸ばした手は空を切り代わりに女が俺の腕を掴んでいた。
 
 
「痛い痛い痛い。何するんだ! 」


「何ってそれはこっちの台詞よ? で、次は誰が出て来るの? 」

 
 女は俺の腕を捻り上げながら言った。


「誰も出て来ねえよ! 俺だけだ、俺一人でやってるんだ! 」


「そう、なかなかいい心がけね」


 俺は周りに聞こえるような大きな声でそう返事をする。
 この女がヤバい奴だという事が分かった時点でもう誰も居なくなっているだろう。
 
 
「どうかしましたか? 」


 そして最高のタイミングで警察がパトカーに乗って現れた。
 仕方ない、この後は警察に突き出されるのだろうが、ここの警察がただの警察
 ではない事をここに住む誰もが知っていた。今回の出費は痛いが背に腹はかえら
 れない。俺が居ないと仕事が成り立たない訳だし、みんなも許してくれるだろう。
 
 
 もうこれで何度目だろうか警察署へ来るのは。
 いつもと変わらない手続き、そして俺は彼らにお金を渡して無事終了するはず
 だったのに、今回は違った。
 
 
「おい、足りないぞ! 」


「いつもと同じ額だろ」


「ああん? 値上げしたんだよ。別にこっちはどっちでもいいんだぜ? 」


 そう言わてしまってはもう出すしかない。
 この金が一体何処へ消えて行くのかなんて俺はよく知らないが、ここでごねたっ
 て何も良い事がないのは知っているのだ。
 
 
 まったく今日はツイていないと思いながら警察署を出ればそこにはあの女が居り
 俺の顔を見ると手を上げた。
 
 
「よ! 」


 俺にはこの女の目的が全く分からなかったから、取り敢えず無視する事にした。
 よく分からないものには関わらいというのがここで生きて行くのに必要なスキル
 だった。
 
 
「何? 怒ってるの? でもそれは自分の腕の無さを嘆くべきなんじゃないの?
 あんな事ですら上手く出来ない自分をさ」
 
 
 だったら何だというのだろうか? 俺はこれ以上この女と関わり合いになりたく
 無かった。こいつの所為でいつもよりも多く金を払う事になってしまったのだ。
 そんな疫病神とは関わらないに限る。
 
 
「ねえ、仕事しない? 何も難しい事はないの、ちょっとばかし私の言う通りに
 してくれればそれだけで警官に渡した額ぐらいは簡単に取り戻せるよ? 」
 
 
 俺は立ち止まり考える。
 ここまでの一連がすべてこの女が仕組んだんだとして、そんな女の言う通りに
 するだけの仕事がそんなに簡単なものだとも思えない。思えないが俺が断れない
 事をこの女は分かっているのだ。
 
 
 結局俺はこの女の話に乗る事にした。
 どんな事をやらされるのか? 不安よりも好奇心が勝ったというのもあるが、
 何よりも俺の懐事情がそうする事を選ばせた。


 女は俺をそのまま大通りまで引っ張って行くとタクシーを止め、そのまま中に
 俺を押し込むと行き先を告げた。
 
 
「ミランコネス通りまで行って」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...