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それが答えだった
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しおりを挟む運転手はミラー越しに俺の事を一瞥してから女を確認し、「あいよ」と返事を
してからアクセルを踏んだ。走り出した車の中で女は一切俺の方は見ずに窓の外
をずっと眺めている。でもだからって俺が何が出来る訳でもなく、俺も窓の外を
みる。
どんどん変わっていく街並み。
あの糞溜めのような場所とは違ってこっちは無駄に明るくて、煌びやかだった。
ここは俺のような人間が歩いていい場所ではないという事を俺は知っている。
なのに俺は歩かされる、そして誰もが俺の事を嫌悪しているのが分かる。
だというのに女は俺の前をスタスタと歩いて行く。
ここで俺が逃げ出すとか考えないのだろうか?
「逃げれるなら逃げてみなさい。ここから一人で帰れるのならね」
この女は分かっている。
ここで俺一人になったら良くて一生出れない豚箱送り、普通ならすぐに射殺で
ある。理由は気分を害したとか空気が汚れたとかそんな理由でいいのだ、俺を
殺す事は害虫を殺す事となんら変わりはない。
だからついて行くしかないのだ。
こんな俺でも死にたくはない、命は大事だった。
そして女は服屋に入る。
店員は女にのみ挨拶をして、出て来た大男がおれをつまみ出そうとした。
「ちょっと待って、その子を見れるぐらいにして頂戴」
女が店員にカードを渡せば大男は俺の事を下におろした。
*****
「うん、見れるようになったじゃない」
女は俺の事を見てそう言ったが、俺は生まれて初めてこんな格好をしてどうにも
動きにくく、髪もぴっちりと固められて気持ち悪かった。この女は俺でお人形遊
びでもしているつもりなのだろうか? 目的が未だに分からないまま俺は女と
一緒に店を出る。
街並みが変わっていた。
実際には何も変わってはいないが、誰も街も俺の事を受け入れてくれたという
だけでこんなにも見える景色が違うのかと俺は驚いた。そして俺は初めて人間
として認められた気分になった。
「行くわよ」
女がタクシーを止めている。
俺が乗り込めば運転手は笑顔で迎え入れてくれる。
女が行く先を告げ走り出した車の窓からみる世界はもう俺が知っている世界では
なくっていた。
着いた場所は大きなホテル、俺の為にドアを開けてくれる人間がいる。
「いらっしゃいませ」と言われるだけで俺の心は弾んだ。俺に遜る人間を見るの
はとても気持ちがいいものだ。
「随分楽しそうね? 」
部屋についた時、女にそう言われて俺は漸く気付く。
自分が浮かれていたという事実、俺の耳は今真っ赤になっている事だろう。
「まあ、子供ってそんなものよね」
女はそんな俺の事を大して気にする様子もなく話を続けた。
「貴方はこれから私の子供として、そうね二コルって名乗りなさい。
そしてこれからしてもらう仕事は必ず成功させなさい。そんなに気を張らなくて
も大丈夫よ。貴方ならなんて事のない仕事だから」
そして女は俺に一枚の写真を見せる。
「この女の鞄にこの紙を入れなさい、気づかれないようにね」
その時の女の顔に俺は何故か見入ってしまったのだ。
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