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年代物
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しおりを挟む「爺ちゃん、まだなの? 」
「もう少しだ、がんばれ」
そんな会話を俺は何度しただろうか?
爺ちゃんに連れられてここまで登ってきたものの、目的地へはまだ辿り着かない
でいる。そろそろ限界が近い俺とは違って爺ちゃんは平気な顔して登って行くの
はきっと敬老パス的なものがあるからなのだろう。
「最近の若いのはそんなにダメかね? 」
ブツブツとつぶやきながら進む爺ちゃんの後を俺は何も言わずに登るのは全部
俺の為だからである。俺が憧れているロビルリアに会わせてくれると爺ちゃんが
言い出したのは昨日の事だった。
*****
それはいつもと変わらない日常だった。
学校から帰って来た俺は居間で雑誌をペラペラとめくっていた。
「ん? 何だ、ベジャルワに興味があるのか? 」
たまたま通りかかった爺ちゃんが俺にそう聞いて来た時はちょっと驚いた。
普段はそんなに話をする事のない爺ちゃんから声を掛けて来る事が珍しいという
のもあったが、何よりもベジャルワを爺ちゃんが知っている事に驚いたのだ。
だってこんなマイナーなものを知っているとは思わなかったから。
「うん。爺ちゃん知ってるの、ベジャルワ? 」
「まあな。ちょっとだけだ。そんなには知らんよ、昔の知り合いが作っていたから
しっているだけだ。だから聞かれても何も答えられんよ」
俺の食いつきに爺ちゃんが驚いているのを察して、俺はそれ以上聞くのを止めた。
本当に少しだけなのだろうし、そんなに聞いてそれ程でも無かった時の事を考え
ればそんなに悲しい事はないのだ。まあ年代的に知っているって事なのだろう、
この伝説のロビルリアと同年代ぐらいだろうから。
「そっか。爺ちゃんはこの人と同じぐらいの歳だろ、もしかして知ってたりする?」
そうして見せた雑誌の一ページ。
別に知らなくてもよかった。それは会話の流れで、意味なんてなくて、ただ終わ
り方が分からなかっただけなのだ。
「ん? 嗚呼、ロビルリアか。歳を取ったな、まあ儂もだが」
だからその反応に俺は淡泊だった。
「知ってるんだ。同い年ぐらいだもんね」
「嗚呼、同い年だ。アイツも雑誌に載るくらいには有名になったんだな」
でもその言い方が気になった。
「もしかして知り合いなの? 」
「嗚呼、そうだが。ん? なんだ、会いたいのか? 」
「会えるの! 会いたい会いたい! 会えるんだったら会いたいよ! 」
「おおう。ちょっと待て、聞いてみるから」
そう言って居間を出て行った爺ちゃん。少し驚かせてしまっただろうか?
でも会えるのであれば会いたいと思うのは当然の事だろう。
だってあのロビルリアに会えるのだ、伝説の。そこで躊躇なんてする訳がない。
爺ちゃんが出て行って一時間、俺はもうクールダウンしていた。
流石にもう無理だろう、それは分かっている。だから爺ちゃんに大丈夫だと
伝えよう。俺の為に頑張ってくれているのだろうが、無理をさせるのも悪い。
有名人と知り合いっていうだけで十分だ。
「あ、爺ちゃん」
だから戻ってきた爺ちゃんにすぐに言おうとした。
「明日、会いに行くぞ」
突然決まった明日の予定に俺は碌な準備が出来なかった。
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