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芽衣ちゃんは夢を見る
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しおりを挟む人が恋をする瞬間はどんな時だろうか? 親切にしてもらった時?
確かに他人から良くして貰えば好感を抱く事もあるだろうが、それだけで
好きになるにはまだ足りないのでないかと思うのだ。
それじゃあきっと、いい人止まりで終わってしまう事の方が多い事だろう。
それぐらい当然だと思う人も居るかもしれないし、更には都合のいい者として
認識してしまうような人も居るだろう。
どんなに良くして貰ったって結局は心が動かなければただの他人でしかない。
だから漆原恋は心を動かす事にしたのだ。
それはちょっとした事で、背中を少し押してあげるような事で、
そう認識さえしてしまえば後は勝手に転がって行くもの。
ねえ、そうでしょ?
*****
その日はいつものように学校に登校した。
何か変わった事があった訳ではないし、誰か変わった人が出現したりはして
いない。そんないつもと変わらない毎日が別に嫌な訳じゃないけれど、何かしら
起こって欲しいと淡い期待をしてしまうのは思春期だからだろうか?
別に凄い事が起こって欲しいとは思ってはいない、小さな事でいいのだ。
ちょっとしたスパイスが欲しい。少しばかり舌を痺れさせるような、そんな刺激
が欲しいと思っていた。
それはきっと無いものねだりというやつなのだろうけど、自分が特別であると
思いたいし、まだそうである可能性を捨てきれないでいる私がどうやら自分が
主人公ではない事を認めないといけない春だった。
「おはよう」
私が教室に入れば当然のように挨拶されるが、私はいつも少しだけ驚いてしまう
のは挨拶をしてくる彼女がこの教室のカースト上位者だからだろう。私はお察し
の通りの底辺の者であるが故、粗相が無いようにしないといけない立場であり、
何かしらの失敗などが許される事などない。
「おはよう、漆原さん」
だから彼女にしっかりと挨拶をしてから自分の席に向かう。席に着くまでが私の
ターンなのだ、だから迅速に席に座って漸く私は息を吸う事が出来るのだ。
すぅ~と肺に酸素を取り込んで頭を覚醒させ、周りの視線が私に集まっていないか
を確認する。大丈夫そうだ、何もやらかしていない。
そして今日もまた特別でない私の特別でない一日が始まる。
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