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最高の笑顔
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しおりを挟む私は婚約者に呼ばれた通りの時間にその場に着いた。
「遅いぞ、まったくお前ときたら相変わらずのろまだな」
まあ分かっていた事ではある。
もう聞き飽きた言葉。
でも何度聞いても慣れはしなかった。
「そうかしら? 」
だから私はそう返事をする。
それが私なりの抵抗ではあった。
そのぐらいは許されるはずだ。
親が決めた婚約者。
身分の違い。
決して私が望んだものでは無かった。
それでも逆らう事などはあり得なくて、
私の存在意義はきっとその為だけであって、
これから先もそれを証明する為だけに生きて行くのだろうと思っていた。
それが特別な事ではない事は知っている。
よくある話。寧ろ喜ぶべき話。
きっと未来の誰かが笑顔になれるのだろう。
それは私が知らない誰か。
そんな何者かも分からない者の為に私の一生は捧げられる。
じゃあ私は誰の人生の先に立っているのだろうか?
そんな事考えたら、これからやって行く自信がなくなりかけていた私にも
どうやら救いってものが降って来た瞬間だった。
彼の隣に立つ見知らぬ女。
私を蔑む目線。彼に向けた媚びた笑み。
それが答えだった。
「お前との婚約は破棄する」
こんな私にも救いはあるのだと思えた。
去って行く二人を見送りながら私は自由を手に入れたはずだったのに、
目の前を車が通過した一瞬で全てがなくなった。
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