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菫川ヒイロ

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忘れられない夏が来る

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 冷たい風が私の頬を撫でる。
 私は意外とこの感覚が嫌いではなかった。
 パキッっとしたこの感じが心地よく感じるのだ。
 
 
 吐く息が白くなるのも好きだ。
 身体の中の温度が目に見えるのだと思うと生きていると実感出来る。
 私は今日も健康に通学路を走っていた。
 
 
 別に遅刻しそうだからとかそういう訳じゃない。
 少し、ほんの少しだけ走ってみたら止まれなくなってしまっただけだ。
 私の身体が前に進みたがっていたのだ。
 
 
 ズンズン、グングン進んで行く身体に必死に酸素を届けようと心臓が跳ねる。
 こんなにも苦しいのに私は笑っていた。
 ただただ楽しくて仕方が無いのに、身体は悲鳴を上げ始めていた。
 
 
 もう何人、追い越しただろうか?
 その中に先輩も居たような気がした。
 そして不意に終わりを迎える。
 
 
「朝から何しているのよアンタは、運動部にでも入るの? 」


 先輩のそんな声にも反応出来ないくらいに息が上がっていた。
 心臓が口から出て来そうなくらいだった。
 
 
「ちょっと顔色が悪いわよ、保健室に行きましょう」


 そうして先輩に肩を貸してもらって私は初の保健室登校を果たした。
 
 
「すいません、先生。この子顔色が悪くて」


「大変、取り敢えずそこに寝かせて」


 そんな会話を聞きながら私の意識はプツリと切れる。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 目が覚めたら知らない天井だった。
 そして思い出す、ここが保健室だという事に、自分がどうしてここへ運ばれて
 ベットに眠っているのかを。だから一度布団を頭にかぶった。
 恥ずかしすぎるだろ!
 
 
 私は一体、何をしているのだろうか! 馬鹿なんじゃないのか? 
 どういうつもりであんな事をしたんだ、子供じゃあるまいし!
 先輩にまで迷惑をかけたではないか、最悪だ!
 
 
 どんどん色んな言葉が浮かんで来て、もうここから出たくないと現実逃避を
 してみた所でそんな事が無理なのは分かり切っていた。
 このままここに居ても仕方がない。
 
 
 しれっとベットから出てみれば、初対面の保健の先生に声を掛けられる。
 
 
「ちょっと貴女、大丈夫なの? 」


「はい、大丈夫です」


 何も無かったように返事をして、何も無かったように荷物を持って部屋を出よう
 とする私に先生は最後通牒をつきつける。
 
 
「もう少し待っていなさい、親御さんがもうすぐ来るから」


 まさかである。
 こんな事で親にまで連絡が行くなんて……
 冬は残酷だった。
 
 
 






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