恋愛倉庫

ハッピーバースデイ

１

「そう言う事だから、じゃあな」


　そう一方的に言われて切れた電話。
　私はツーツーと音が鳴る受話器を置き、時計を見たら12時前だった。
　どうしても今日中に終わらせたかったという事なのだろうか？
　なんて考えてみたが、もう終わった事に今更カロリーを使うなんて馬鹿げている
　ので考えるのを止めたのは、私も今日中に終わらせる事にしただけだった。


　そして時計の針がカッチと動いた。
　今日から私にはもう婚約者が居ない、ただの可憐で素敵なグットガールとなった
　訳だが、そこまで何かが変わったという気もしない。まあ、それはそうだろう。
　私自身に何かしらの変化が無いのだから。鏡を見たって猫耳が生えている訳でも
　ないし、胸が急激に大きくなんてなっていない。ムダ毛のないつるつるの肌に
　なった訳でもないのだから、そんなものである。
　
　
「よし、何かを食べよう」


　こんな時間に？　なんて思うかもしれないけれどこんな時間だから何だというの
　だろうか？　私は食べたい時に食べる、それが人間というものだろう。食べたい
　時に食べ物がある、それが文明というものだろう。人はこうして進化をして来た
　のだと思うと先人達への感謝の念に堪えない、サンキューです。
　
　
　何という事でしょう！　お湯をカップに注いで待つだけで食べ物が出来るなんて
　あり得ると思いますか？　あるんですよ現代では。驚いたでしょ？　為になった
　でしょ？　こんな香しい匂いがしたらお腹もぐ～うっと鳴るってもんですよ！
　
　
「いただきます」


　私は咀嚼しながら鏡を見た。ゴクリと飲み込む。そしてまた咀嚼をしている自分
　の姿を眺めなら思った事は、私はロバみたいに食べ物を噛んでいるって事。
　しっかりと細かく食べ物を噛み砕いているなんて私って偉いかもしれない。
　そう思ってしまえばより一層ロバのようにしてしまう私はきっと天才さんだった。
　



　＊＊＊＊＊
　
　
　
　
　目が覚めると最悪だった。
　気持ち悪かった。
　一体何処の馬鹿が夜中にカップラーメンなどを食べたのだろうか？
　そんな奴は今すぐに校舎裏に呼び出して告白しないといけない。
　『お転婆が過ぎるぞ！　』って可愛く言ってあげよう。
　きっと目の前で胃の中の物を全て見せてくれるから。
　
　
　ガラガラガラガラ、ぺッ
　
　
　吐き出した水にはネギが混ざっていた、
　混入事件である。