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ハッピーバースデイ
2
しおりを挟む身だしなみを整えて、家を出た。
もちろん時間に余裕はあるし、食パンなんかを齧りながらしゃべったりはしない。
曲がり角は十分に注意をはらって通るから見も知らぬ男子とぶつかったりなんて
事もない。そうやって私は今日も無事に学園へ到着した。
ガラガラガラ
教室のドアを開ければ誰も居ないのでは? と思うくらいの静寂の中で少女が
一人佇んでいた。窓から外を眺めているその姿はまるで幽霊の様。
きっと枯れ尾花ってこういう感じなんじゃないのかなって思ったので声を掛けた
のだ、本当に幽霊になられても困るし。
「おはよう! 今日も早いね」
「おはよう杉原さん。そしてようこそ、私達の世界へ」
そう言って私を迎えてくれた長野さんは婚約破棄連盟の会長だった。
連盟に参加する為にはもちろん婚約破棄をされなければならいのだが、
どうやらもう私が婚約破棄をされた事はとっくに知れ渡っているらしい。
婚約破棄連盟って恐ろしい。
そして私の机の上には既に連盟に参加する為の誓約書が一枚。
「長野さん。私はこういうのはいいかな? 」
「どうして? 」
私が言い終わるより早く顔を近づけて来た長野さんに私は息を止めた。
「貴女は名誉ある婚約破棄連盟に参加する事が出来るのよ?
それを断るというの? 会員になればいろんな特典も受けられるわよ?
食堂のプリンがタダにもなるのよ? 貴女、プリン好きでしょ? 」
確かにプリンは好きだった。
食堂のプリンが美味しい事も知っているし、争奪戦になる事もしっている。
まあその原因が連盟の人達の所為だという事も知っている。
そして限界だった。
はぁ~~~~
息を止めるのはそんなに得意ではない。
それも準備も無しに止めたら限界なんてすぐにやって来る。
そして吐き出された私の息は彼女の顔にダイレクトにかかる。
もちろん夜中に食べたニンニク醤油ラーメンの香りがである。
その時私は初めて目を見開いた彼女の顔を見た。
いつも伏し目がちな彼女が意外と目が大きい事を私はその時初めて知り、
そして彼女が訛っているという事を知った。
「なして!!! 」
*****
私は彼女が訛っている事を黙っている代わりに、婚約破棄連盟に入らずに済んだ。
それはまあよかったと言っていいだろう。でも周りの人からは当然のように
疑問が沸く。どうやってそんな事が出来たのだろう? でもその理由を教える
事は出来ないのだ。
「ええと、今日は14日だから……杉原。答えてみろ」
出席番号が今日の日にちと同じというだけで私へ答えを求める数学教師に
納得出来ない私はつい声が出てしまった。
「なして! 」
決してワザとではない。
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