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菫川ヒイロ

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はじまりとおわり

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 終わりは突然にやってきた。
 
 
「君との婚約は破棄させてもらうよ、エリーゼ」


 私は婚約破棄をされてしまったのだ。
 もちろん私だって納得が出来る訳がないので理由を聞けば、運命の相手が
 現れたなんて言われてしまい、ますます理解不能の状態だ。
 
 
 だってそうでしょ?
 何、運命の人って? そんなよく分からない理由で私は婚約破棄されるとか
 信じられない!
 
 
 大体、その女が運命の相手だというのなら私は一体何だというの?
 彼にとって私の存在理由は。ただの婚約者という物でしかないとでも
 言うのだろうか?
 
 
 今まで過ごして来た時間は何の為だったのか?
 こんな事になるのなら……私の時間を返して欲しい!
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「何よそいつは! そんな奴とは別れてよかったのよ。エリーゼならきっとすぐに
 新しい相手が見つかるわ! 」
 
 
 そう言って私を励ましてくれるのは私の親友のミリアだ。
 結局私は婚約破棄をされてしまい、今こうして親友に愚痴を聞いてもらって
 いる最中だった。
 
 
 ミリアはいつだって私を励まし、応援してくれる、最高の親友だった。


「ありがとう、ミリア。私なんだか元気になって来たわ! 」


 ミリアにそう言われれば、本当にそうなるような気がいつもしてくる私は
 単純なのか? それともミリアが上手いのか? 
 私にはこの親友さえ居てくれれば大丈夫だと思った。


「よう、ミリア。こんな所で何してるんだ? 」


「何ってお茶よ。何か文句あるの? 」


 そう言って現れたのはミリアの幼馴染のノワールだった。
 
 
「お前がお茶をするお友達が居るとは知らなかったな。
 初めまして、俺はノワール。ミリアとは昔からの腐れ縁って奴でして」
 
 
「もう何よ! 早くどっか行きなさいよ! 」


 ミリアの対応がいつもとあまりにも違って私には新鮮だった。
 
 
「こいつこんな奴で、なかなか友達とか出来ないんですけど、仲良くしてやって
 下さい。えーと」
 
 
「あ、エリーゼです」


 ちょうど目が合い、彼は言う。


「エリーゼさん、とてもお綺麗ですね。痛っ、何するんだミリア」


 ミリアがノワールの足を蹴っていた。
 
 
「余計な事は言わなくていいから。さっさと行きなない。しっしっ」


 ミリアがそうやってノワールを追い払い、彼は行ってしまった。
 
 
「ごめんね、エリーゼ。変な奴だったでしょ? 」


「ええ、そうね。ミリア、ノワールさんには彼女が居るのかしら? 」


 その時、私には散々馬鹿にしていた運命というものを確かに感じでいた。
 ノワールさんと目が合ったその瞬間に私は分かってしまったのだ。
 彼が私の運命の相手だと。




 *****
 
 
 
 
「本気なのエリーゼ? あの、ノワールよ」


「ええ、本気も本気。これが運命ってやつなのね。
 私、こんな気持ちは初めてなの! 」
 
 
 私はミリアに何度も聞かれたが、こればかりはどうしようも出来なかった。
 
 
「分かったわ、私が段取りするから。何かあったらすぐに言ってね? 
 あいつガサツだから、変な事したら私がすぐにつれて帰るから! 」
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 こうして私はノワールさんとお付き合いする事となり、そして結婚した。
 やはり彼は私の運命の相手だったのだ!
 
 
 婚約破棄をされた時は、そんな事あるはずがないと思っていたけど……
 あれは正しかったのだ! こうして私がノワールと出会う為には必要なもの
 だった。
 
 
 親友に祝福されて私はノワールとの人生を始めるのだ。
 
 
 
 
 



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