神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第3章

70.今はただ眠る

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 葬邪神の言葉にフレイムが瞠目し、フロースが瞬きした。

『パパさんもそうだったらしいけど、骸邪神様に気に入られたら全力でサポートしてもらえるから、幸せコースが確定だ』
『ほぅ、邪神ご兄弟は本当に世話好きですな』

 泡の神に続いて言った狼神が、密かに葬邪神へ念話を送る。

《もしや、何か交換条件でも出されたのですか?》
《いや、何も出しておらんが?》
《それはもったいないことをしましたな。後継の引き受けを条件にすれば良かったではありませんか。あなた様も煉神様も、そろそろ眠りたいと仰せになっている。ご自身に代わって天の神々の世話を焼く者をお探しでしょう。骸邪神様と焔神様が後釜の筆頭候補だったはず。時期を見て一時的に親神の代わりをさせた後、まとめ役を引き継がせたいと仰せで……》
《黙れハルアフォード》

 葬邪神の気迫と口調が変わった。

《それを受けるか否かは、ラミ自身の自由意思のみで決めることだ。最愛の弟の心を無視し、交換条件をちらつかせて役目を押し付けるなど有り得ん》
《これは大変失礼いたしました》

 すぐに陳謝した狼神だが、全く怯んだ様子を見せない。飄々と笑っている。嘆息した葬邪神がさらに言の葉を発した。

《それにだ、そんな無理強いはディスが許さん。あのディスだぞ、弟を苦境に追いやるような真似を見過ごすはずがない》
《ふふ、道理ですな。疫神様は最強凶悪の暴れ神ですが、いと深き慈悲と情愛の神でもあられる。今回は前者の面を押し出しておられましたが……あの方は紛れもなくあなた様の半身だ》

 太古の神々は、疫神が持つ様々な顔を知っている。彼の神は単に破壊と滅亡の限りを尽くすだけの神ではない。

《しかし実際のところ、骸邪神様はあなた様の後継として適任どころか最適任だと思いますがなぁ。あなた方ご兄弟のご気性は実によく似ておられる》
《だとしても、どうするかの判断と決定はラミが行うことだ。何の条件も制約も付いていない状態でな。その自由と権利を奪わせはしない。例え俺自身にでもだ》
《そうでしょうな。あなたはそういうお方だ。だからこそ骸邪神様は、あなた様にアマーリエの守護を頼んだのでしょう。骸邪神様ご自身の守護枠は既にセインに充当している以上、残るのはあなた様しかおりませぬ》

 しみじみと納得の声を上げる狼神に、葬邪神は鋭くした眼差しをスゥと和らげて言葉を継いだ。

《まぁ、そろそろ眠るといっても、早くて数億年後の話だ。ずっと眠りっぱなしでいるつもりもないから、後任といっても一時的なものだしな。そもそも、ラミにも焔神様にもまだ何も話しておらん。どうするかはおいおい考えるとも》

 一方、最古の神々たちの内緒話を知る由もないラミルファは無言だ。どこか気が抜けた顔でボゥっと佇んでいる。

「あ゛あ゛ぁぁアマーリエぢゃん良がったー!」
「これで一安心だ。じゃあ帰ろっかぁ。父上がお祖父様のご送還対応をして下さってるから、合流しないと。……あ、アマーリエ。どういうことかの説明はフルードかアリステルがしてくれると思うから、聞いてみると良いよぉ」

 本気で泣いている日香と、伸びをしながら言うクレイス。天威師たちが、もう用は無いとばかりにフッとかき消えた。神々や聖威師たちが礼をして見送る。

『では私も天に戻ろうか。セイン、また来る』
『俺も一度還る。守護の約定を交わしたから、アマーリエは消耗している。今日一日はゆっくり休ませた方が良いぞ』
『私も一度戻るよ。滞留書を天界の箱に返さないと』

 狼神と葬邪神が言い置き、天に昇っていった。フロースもそれに続く。

 ぞろぞろと還っていく神々を送り出し、肩の力を抜いた直後、アマーリエは酷い眠気に襲われた。とても立っていられない。

『ユフィー、大丈夫か?』
「フレイム……少し……眠くなって来たわ……」
「今日は臨時休暇の扱いにします。しっかり休んで下さい。後の処理は私たちがしておきます」

 フルードが優しい口調で言ってくれる。

(いえ……悪神の守護とか神罰とか絶望とか、一体どういうことなのか聞きたいのですけれど)

 そう思うアマーリエだが、襲いくる疲労に耐え切れず目を閉じた。フレイムが抱き上げてくれる。

『運んでやるから寝てろ』
「……う、ん……」

 夢現ゆめうつつで頷きながら、いったん眠気と疲れに白旗を上げることにした。優しい声を子守唄に意識を飛ばしながら、誓う。

(……今度きちんと説明してもらうんだから……)
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