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第3章
84.レシス兄は慣れている
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《……疫神様はこう言ってるが。ユフィー、それにセインも、どうする。俺は良いと思う。ラミルファも同じ意見みたいだしな。だが、お前たちが困ったり怖がるなら、断っても良い》
アマーリエは少し逡巡した後、念話返しを行った。
《――私は…………お受けして構いません》
思考を整理しながら、慎重に言葉を繋ぐ。
《先日は確かにあわやの思いをして、色々と驚かされましたが……今はきちんと神威を抑えて下さっているようですし、力でねじ伏せるのではなく言葉で伝えて下さっています。それに私は、ここで判断できるほど疫神様のことを知りません。それなら、フレイムとラミルファ様の勘を信じます》
フレイムとラミルファとて、ずっと眠っていた疫神に会ったのは今回が初めてのはずだ。それでも、神格を抑えていないアマーリエよりは、ずっと多くの物事を見通して判ずることができるだろう。兄弟として幾度も交流を重ねたというラミルファは特に。
《私も同意見です。今、他の聖威師たちにも聞いてみましたが、皆構わないと言っています》
フルードが口を挟んだ。フレイムが微かに首肯し、肉声を放つ。
「そうですか。……分かりました。では、お願いできますか」
「やったー! ありがと、我、頑張る!」
「――ただし」
そして、大きな目をピカピカさせてバンザイする疫神に念押しした。
「聖威師たちには聖威師たちの意思があります。それを無視し、自分が良かれと思うことを無理強いすることだけはしないで下さい。あなたが黒だと思っても、聖威師たちが白だと訴えるなら、きちんとその声に耳を傾けてやって下さい」
「……我、被虐趣味の件、本気で後悔中……」
途端にしょんぼりと肩を落とす疫神。
「雛たちのこと、知る必要ある。でないと、合わせられない。だから来た。我、雛たちといる。側で雛たち、見てる」
「「え!?」」
フルードとアマーリエはギョッと身を強張らせた。フロースの従者ごっこが未遂に終わり、後はフレイムとラミルファが遊んでいるだけだと安心していたら、次はコイツか。
「孤児院の行儀見習いが増えるなぁ。あ、もちろん可愛い可愛いクラーラちゃんも置いてくれるだろ」
「ちょ、葬邪神様もいらっしゃるんですか!?」
目を剥いたフレイムに、最古の邪神がはははと呑気に笑った。
「俺もたまにはゆっくり羽を伸ばしたいんだなぁ。地上で気分転換するのも良いだろ。ディスが突っ走らんかも見といてやる」
「……ふぅ~ん。気分転換、ですかぁ」
「……ゆっくり羽を伸ばしたい、ねぇ」
ラミルファとフレイムが、じぃぃっと葬邪神を見てジト目になっている。それを真正面から受け止め、禍神の長兄はさらに深く微笑む。
「うん、そうだとも!」
《ア、アリステル様!》
アマーリエは慌ててアリステルに念話した。
《どうした? 先ほどフルードから念話があり、疫神様が聖威師たちの守りに入ってくださると聞いたが》
仕事中なので繋がりにくいかと思ったが、問題なく出てくれたのでホッとする。
《は、はい。それであの、葬邪神様もお越しになっていまして。ロリッ子幼女になって側にいると仰せなのです!》
焦るあまり色々とすっ飛ばして話してしまったアマーリエだが、アリステルにはそれだけで通じた。
《そうか。父う……葬邪神様はそういう戯れをよくなさる。いちいち驚いていては身が保たない》
《そうなのですか!?》
《私はあの方のドッキリにはもう慣れた》
サラッと言うところを見ると、今まで何度も驚かされていたようだ。
「禍神様はあなた方に特別降臨の許可を下さったんですか?」
「ああ。ディスが聖威師の側にいながら地上で過ごせば、今の世界がどうなっているか実地で分かってもらいやすいだろうと仰せだ。俺もたまにはゆっくりして来いと。ついでに俺たちがひと遊びしたら、それはそれで面白いと笑っておられたぞ」
最後が許可を出した大きな理由かもしれない。禍神はれっきとした神だが、混乱と災禍を好む悪神たちの親玉でもあるのだから。先日、寝起きの疫神がウォーミングアップをしていた時も、何だかんだで面白がりながら視ていた可能性はある。
アマーリエとフルードに緊張が走ったのを察したか、葬邪神はすぐに口調を和らげた。
「安心しろ。ヴェーゼを始め、可愛い聖威師たちが必死で守る世界を蹂躙するつもりはない。……何事もなければな」
最後に不穏なフラグを追加するのはやめて欲しい。心からそう思うアマーリエだった。
「雛たちの主神、我に頼んで来た。地上行って良い、でも、あんまり力出して、雛たち怖がらせないでって。我、気を付ける。力、むぎゅー、抑えてる」
無邪気に破顔する疫神は、今はフレイムたちと同じくらいに神威を押さえ込んでくれているようだ。
「とまあ、そういうわけだから、これからしばらくはよろしく頼む!」
何だか、段々と降臨している神が増えていく。朗らかに締めくくる葬邪神を眺めながら、アマーリエは遠い目でイチゴのプチケーキを口に放り込む。瑞々しい甘さと僅かな酸味が混じり合い、少しだけ心を潤してくれた気がした。
アマーリエは少し逡巡した後、念話返しを行った。
《――私は…………お受けして構いません》
思考を整理しながら、慎重に言葉を繋ぐ。
《先日は確かにあわやの思いをして、色々と驚かされましたが……今はきちんと神威を抑えて下さっているようですし、力でねじ伏せるのではなく言葉で伝えて下さっています。それに私は、ここで判断できるほど疫神様のことを知りません。それなら、フレイムとラミルファ様の勘を信じます》
フレイムとラミルファとて、ずっと眠っていた疫神に会ったのは今回が初めてのはずだ。それでも、神格を抑えていないアマーリエよりは、ずっと多くの物事を見通して判ずることができるだろう。兄弟として幾度も交流を重ねたというラミルファは特に。
《私も同意見です。今、他の聖威師たちにも聞いてみましたが、皆構わないと言っています》
フルードが口を挟んだ。フレイムが微かに首肯し、肉声を放つ。
「そうですか。……分かりました。では、お願いできますか」
「やったー! ありがと、我、頑張る!」
「――ただし」
そして、大きな目をピカピカさせてバンザイする疫神に念押しした。
「聖威師たちには聖威師たちの意思があります。それを無視し、自分が良かれと思うことを無理強いすることだけはしないで下さい。あなたが黒だと思っても、聖威師たちが白だと訴えるなら、きちんとその声に耳を傾けてやって下さい」
「……我、被虐趣味の件、本気で後悔中……」
途端にしょんぼりと肩を落とす疫神。
「雛たちのこと、知る必要ある。でないと、合わせられない。だから来た。我、雛たちといる。側で雛たち、見てる」
「「え!?」」
フルードとアマーリエはギョッと身を強張らせた。フロースの従者ごっこが未遂に終わり、後はフレイムとラミルファが遊んでいるだけだと安心していたら、次はコイツか。
「孤児院の行儀見習いが増えるなぁ。あ、もちろん可愛い可愛いクラーラちゃんも置いてくれるだろ」
「ちょ、葬邪神様もいらっしゃるんですか!?」
目を剥いたフレイムに、最古の邪神がはははと呑気に笑った。
「俺もたまにはゆっくり羽を伸ばしたいんだなぁ。地上で気分転換するのも良いだろ。ディスが突っ走らんかも見といてやる」
「……ふぅ~ん。気分転換、ですかぁ」
「……ゆっくり羽を伸ばしたい、ねぇ」
ラミルファとフレイムが、じぃぃっと葬邪神を見てジト目になっている。それを真正面から受け止め、禍神の長兄はさらに深く微笑む。
「うん、そうだとも!」
《ア、アリステル様!》
アマーリエは慌ててアリステルに念話した。
《どうした? 先ほどフルードから念話があり、疫神様が聖威師たちの守りに入ってくださると聞いたが》
仕事中なので繋がりにくいかと思ったが、問題なく出てくれたのでホッとする。
《は、はい。それであの、葬邪神様もお越しになっていまして。ロリッ子幼女になって側にいると仰せなのです!》
焦るあまり色々とすっ飛ばして話してしまったアマーリエだが、アリステルにはそれだけで通じた。
《そうか。父う……葬邪神様はそういう戯れをよくなさる。いちいち驚いていては身が保たない》
《そうなのですか!?》
《私はあの方のドッキリにはもう慣れた》
サラッと言うところを見ると、今まで何度も驚かされていたようだ。
「禍神様はあなた方に特別降臨の許可を下さったんですか?」
「ああ。ディスが聖威師の側にいながら地上で過ごせば、今の世界がどうなっているか実地で分かってもらいやすいだろうと仰せだ。俺もたまにはゆっくりして来いと。ついでに俺たちがひと遊びしたら、それはそれで面白いと笑っておられたぞ」
最後が許可を出した大きな理由かもしれない。禍神はれっきとした神だが、混乱と災禍を好む悪神たちの親玉でもあるのだから。先日、寝起きの疫神がウォーミングアップをしていた時も、何だかんだで面白がりながら視ていた可能性はある。
アマーリエとフルードに緊張が走ったのを察したか、葬邪神はすぐに口調を和らげた。
「安心しろ。ヴェーゼを始め、可愛い聖威師たちが必死で守る世界を蹂躙するつもりはない。……何事もなければな」
最後に不穏なフラグを追加するのはやめて欲しい。心からそう思うアマーリエだった。
「雛たちの主神、我に頼んで来た。地上行って良い、でも、あんまり力出して、雛たち怖がらせないでって。我、気を付ける。力、むぎゅー、抑えてる」
無邪気に破顔する疫神は、今はフレイムたちと同じくらいに神威を押さえ込んでくれているようだ。
「とまあ、そういうわけだから、これからしばらくはよろしく頼む!」
何だか、段々と降臨している神が増えていく。朗らかに締めくくる葬邪神を眺めながら、アマーリエは遠い目でイチゴのプチケーキを口に放り込む。瑞々しい甘さと僅かな酸味が混じり合い、少しだけ心を潤してくれた気がした。
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