バトンタッチした話

加速・D・歩

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133 いらない強制力

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「あんた、ワィーレ・ケースね。コ・カメイメ様と付き合ってるとかいう」
「聞いてるんだけど?」
「そうです、なんか俺に用ですか?」

【空き教室】には数人の可愛い系の生徒と少し筋肉質な生徒計6人がいた。
 質問するのは可愛い系の生徒達で俺は彼らの事は知らない。けど、メイチャンの事が好きな人なんだろうと察せた。で、これが襲撃ってやつなのも分かった。

「用が無いなら戻ります」
「そういうわけにはいかねぇよ」

 ダンと、壁に詰められる俺。大柄の生徒はニヤリと笑う。
 その後ろでは可愛い系の子達がクスクス笑ってた。
 これはボコられるやつか、と[クッキー]が入った袋を見つからないように隠そうとしたら──

「なんだこれ」
「ぁ、か、返してっ!」
「なんだこのゴミ。」
「もしかして、[クッキー]? あははこんな不格好なものよく渡そうとしてるね?」
「ハートなんて作っちゃって、はい、これで貴方達はお・わ・り」
「ひどい……うう」

 袋を取り上げられて、背の高さ的に取り返せないまま袋は後ろに投げられて可愛い子達に中身を見られる。
 彼らは大笑いしながら、唯一残ってたハート型のを真っ二つにした。
 涙が出る……せっかく、マルも一緒に手伝って作ったのに。
 その上、袋ごと踏まれて本当に粉々にされてしまった。

 ショックでその場にへたり込む。と、目の前の男に首根っこを掴まれたと思ったらお腹に衝撃がきて、吐いた。
 殴られたんだと数秒後に分かった、けど、いくら「止めて」と言っても彼らはやめない。
 それどころか俺を床に落とすとその上に馬乗りにされた。

「助けなんか来ねぇよ」
「僕たちは“護られてる”んだ」
「だから君を徹底的に嬲る」

 怖くて、震える。目の前にいるのは何、本当に“人”なの?
 制服を破かれて彼らに見られたくない場所を見られる。

「いやだ、メイチャン助けて!!」
「だから助けなんか来ねぇんだよっ!」
「がは、……め、い、ちゃん……っ」

──あはは、ひどい面
──ねぇ、このガバ穴ヤバくない?
──[コレ]突っ込んでみようよ

 誰かが[箒]を持ってきて棒の部分を俺のナカに入れた。普段からメイチャンとしてるから激痛じゃなかった。けど、彼らは加減をしらない。力任せに出しピストン入れするから、ガッガッと腸内を傷付けるように動かした。

 痛い、痛い、痛い、……死ぬ、こんな所で……?
 誰も助けに来ないまま、彼らに嬲り殺される、そんな想像が出来た。
 せめて──今ある力を【窓の外】に向けて撃った。




──ケースケゴメンね。守れなかった……僕だけの力じゃ無理だった。でも【居る場所】は分かったから、彼が助けられる様に──巻き戻すから……








 腹を殴られて朦朧とする。彼を、メイチャンの名前を呼びながら耐える。

「ケースッッ!! お前ら──!!」

「コ・カメイメッどうして【ココ】が!」
「私達は悪くないわ、この男達がどうしてもって!」

 勢いよく【ドア】が開いて逆光と共に入ってきたのは俺の恋人──メイチャンだった。

 男達はメイチャンの登場で慌てふためく、それをホッとした心地で彼を見る俺。でも多人数に1人だと、どうなっちゃうの? と不安になるとメイチャンは俺に笑いかけそして、聖剣に手をかけた。

──えっ、

 メイチャン以外がそう思った。
 でもその瞬間、メイチャンは男達に斬りかかっていた。

「め、メイチャンっ?!」

 倒れていく男達に、え、殺しちゃったの、って青ざめる。だってそんな事をしたらメイチャンが捕まっちゃう!
 慌ててメイチャンの方へ行きたいのに足に力がはいらなくて前へ転んだ。

「大丈夫かっ!」
「メイチャンが捕まっちゃう、やだあ!」
「そんな事はねぇって、俺が斬ったのはコイツらな」

 彼らをみると血は出てない。けど、気絶はしてるみたいで動かなかった。
 彼は俺を抱きかかえて外へ行こうとするから「待って」と止める。

「ん? あいつらには用がねぇだろ」
「ち、違うの、あの[袋]拾って、捨てないといけないから」
「[コレ]か? ん……? これって[クッキー]か?」

【空き教室】の中にある踏みつけられてグシャグシャになった[紙袋]を拾ってもらう。中身は粉々になってもう食べ物ではないし、捨てないと……と思ってるとメイチャンは中身を見て、1つ掴むと口に入れた。

「めめめめメイチャンっ?!?! だ、ダメだよ、そんなもの口にしちゃ!」
「ぷっ、スゲー顔とりあえずマルゥメの所に行くからな」
「吐き出して、お願いだから吐き出して!」
「ケースが作ってくれたんだろ? もったいねぇじゃん」

[袋]を持ったまま俺を抱えたメイチャンはマルが居るっていう【場所】に向かった。




 それは【何処】だか分からないけど、【誰かの部屋】らしい。
 入るとマルの心配そうな顔で出迎えてくれた。

「ケース、ごめんね、ごめんね……」
「マルが泣くようなコトは起こってねぇよ、それにメイチャンが助けてくれたし」
「よ。にしても聴いてた話のレベルを超えてきたな、いらねぇ“強制力”だけどよ。」
「え、何……?」

 マルの後ろからワーチャンもやってきた。きょうせいりょく? なにそれ?
 よくわからないワードが聴こえて首を傾げる。
 その後はスンスン泣きながらも俺の怪我を治療するマルと、それを見る2人。さっきまでテック先生が居たらしいけど少し出てるらしい。

「マル、本当に泣きやめって、ワーチャンがおろおろしてんぞ」
「し、してねぇ! けど、話を聞いた内容を思えばお前の気持ちも分かる。」

 さっきから俺だけが蚊帳の外ってか、一応俺が襲撃された話をしてる筈、なのになんか話が噛み合わないっつーか。
 メイチャンが駆けに来てこれたのは、テック先生の予言のおかげらしい。
 それであの生徒たちには悪いモンスターのなんか怨念的なのがついてるからって事で聖剣で斬って祓った、らしい。
 すげー! ってキラキラした目で見てたら3人からため息をつかれた。

 マルのため息は俺が無事で安心した、って理由な?


「お。揃ってるね」
「テック先生!」
「おかえりなさい。どうでした?」
「彼が言うには【中等部】でもかの者の強制力が働くってさ。」
「……そうですか。」

 テック先生とマルが話し込む。
 俺はメイチャンに連れられて【部屋】を出た。

「なあ、俺ってそんなに頼りないかな」
「いきなりどうした」
「だって、いつもマルとは一緒だったんだ。なのに、【コッチ】に来てからしょうがないけど離れる事が多いし、そりゃ物理的に守るのはワーチャンが適任なのはわかるけどさぁ。」
「今回の件は俺も詳しく知ったけど、お前は狙われやすいらしい。」
「なんで? 俺じゃなくて狙うんだったらマルだろ、俺は平々凡々で」
「そういう事じゃない。けど、コレについては俺からは口止めそれてるから、でも、俺はお前を、絶対に助けるから。」
「うん……分かった。」

 
 いつもより早いけど【ベッド】に入って就寝、すやぁ。








 僕のやるべき事──意識が覚醒したのは圭介と出会う1週間前だった。
【領地内】にある【湖の中】から彼──灰田はいだ圭介けいすけはゆっくりと浮かんで現れた。
 彼を保護して名前もワィーレ・ケースにして家族同然に育ってきた。
 僕が知ってる圭介とは全然違う。真っ白な彼。でもこのまま成長してもこの【世界】に取って喰われるのを知ってる僕は彼に自分のマナを渡して、武器の使い方も教える。
 剣を持とうとして怪我した時は自己嫌悪に陥るけど、なんとか立て直して僕と同じ長年使ってきた弓を選んでくれてよかった。

 元の君が僕を見たら《模倣体》の1人だと思うよね。でも僕はワィーレ・マルゥメ。一度この体を捨てた本人なんだ。
・・・圭介のあの、凄い色々プレイとシテた時も『男達』に言われてから中から意識だけで見てたことがあるんだけど……あああ! 思い出しただけでおかしくなりそう、自分そんなんじゃないっ!!!!

・・・はあはあ、い、今はこんな事で悶えてる場合じゃない!

 と、とにかく、またこうやって僕として圭介と過ごせることが出来て嬉しい。だから、僕はかの者と戦うことにした。
 といっても僕の戦力なんてなれないのは分かってるかの者の思う様にはさせない、という意味だ。

 けど、いらない強制力のせいで圭介は……


『マルゥメお前はマルゥメか?』
『トーチヴォンさん。はい、僕はワィーレ・マルゥメです』
『何故戻ってきた。』
『分かりません、でも今は心から圭介を救いたい。こんな酷い目に遭うような子じゃない』
『・・・そうだな。俺もヤツに良いように掻き乱されるのは好まない。が、俺はアイツの能力を引き継いだ。』
『分かってます、今の圭介には僕の《聖属性》のマナが少しだけですから』

 ワグーッツンのお兄様、トーチヴォンさんに会った時に本物のマルゥメなのかと問われる。
 何故戻ってきたのかと言われればあの『男達』のせいなんだけどそれでも今は──僕達のやるべき事を話す。

 圭介が僕に成り代わった時からずーっと積み重なってきた事象、たんたんとかの者によってそこへ向かうようにされていた。と。
 前回の、この【世界】を創造したセリァナラ女神は[マネヌーン]を大量に使い圭介を孕ませ子供を産ませた。
[マネヌーン]は普通の人間が触るだけでも大怪我をするモノでそれを強制的に彼へ使い廃人にさせてしまった。
 自分の産んだ子を認識出来ないままただ飼い殺しにされた。

 トーチヴォンさんは圭介の《能力》を取り何も持たないままにして、記憶も《改ざん》したりとかの者の影響を受けづらくした、らしいけど腐っても神様は僕達からしたらいらない強制力を使って邪魔をしてくる。

『ヤツは俺達を登場させた【世界】でやりたい放題だった。お前ら2人はそれは見事に悲惨だった』
『それを見ることは……』
『《アーカイブ》には残らなかった。ただこの【世界】でも似たような事をしようとは企んでるだろうよ。で、来たる災厄は【高等部】、2年ぐらいになったら現れる筈だ。【隕石】でな』

【初等部】から入れる【BL学園】には行かず、圭介のこの【世界】で何があっても大丈夫なように特訓して【中等部】から入ることに。トーチヴォンさんからは定期的に伝言されながら過ごすことになった。

 彼も『万能ではない』と話してたけど僕からすれば彼ができることが多くて羨ましい。
 ワグーッツンと、一緒に過ごせるのも嬉しかった。過去に彼は覚えてなくとも、僕はずっと、


『マルはワーチャンから告白待ちなんだよねー!』って友人が居るなかで圭介が発言する。
 た、確かにそうだけどっ! 恥ずかしくて顔が見られなくて2人して黙る。その間に友人達は居なくなってて……

『マルゥメ、俺はお前の事を愛している』
『うん』
『俺と……ずっと一緒にいて欲しい。』
『うんっ!』

・・・思い出しただけでも頬が熱くなる、でも、きっと圭介が居なかったら僕達は付き合ってないかもしれないね。
 その後は友人達から祝福されて、彼ワグーッツンに僕達のことを話す。

 彼はいきなりの話で困惑していた。
 そうだよね。僕も最初は話す気なんて無かった。
 けど、かの者の企みを考えれば──トーチヴォンさんが言ってたけど、その稀人が狙うのはワグーッツンで、そうなると僕はその稀人から……ううん、絶対に阻止する。
 思い通りにはさせない──っ!

 彼にトーチヴォンさんの話をすると眉間にシワが寄る。これも分かってたけど、彼には我慢してもらうしかない。
 
『ある程度の内容は把握した。』
『・・・しかし、まさかそんな事に巻き込まれるなんてな』
『うん。僕もまだ気持ちが追いついてないよ。でもやらないといけないんだ。』
『マルゥメに問う。お前にとってケースは』
『僕の大事な人だよ。僕には持ってないものを持ってるし行動力も。だけどもっと平和に暮らしてほしいんだ。』
『分かった。だが、一人で突っ走るのは禁止だからな』
『うんっ』

 その後は、圭介を慕うテックさんをトーチヴォンさんが紹介する。
 彼の事は知ってる。でも何で?

『あー、ま、この人トーチヴォンが表に出てこれない時にオレが予言って形で伝言するんでー。』

 それからは僕、ワグーッツン、トーチヴォンさん、テックさんの4人で情報の共有をしながら過ごしていた。
 圭介に恋人が出来て、僕はとっても嬉しかった。
 性知識がない彼から色々と聞かれた時は困ったけど、だっていきなりワグーッツンとし、シテるのかなんて聞かれるから!

 こほん。それからは何も無い日々を過ごせてた。
 テックさんも先生として【学園】に来て、彼から【授業】がある数日前に『彼が襲われる可能性がある』と言われた。

『襲われないように僕が付いてます』
『いや、強制力を侮るな』
『じゃ、どうしたら……』

 4人で集まる。集まる場所はだいたいテック先生の【部屋】でこうやって集まってても不思議がられない様に《結界》をかけてるらしい。

『可能性とすれば……1回骨を断つ』
『そんなっ、それじゃあ圭介は!』
『が、それは一番最悪のパターンだ。他に──』

 色々とパターンを考えてその可能性の日が刻々と近づいてきた。
 もっと、2人じゃなくて友人も連れてればよかった。
 その日はお互いの恋人に向けてお菓子作りをする、と【調理室】を借りていた。
【校舎内】には休みの日ではあったけど【大会】に向けて訓練をする生徒達が居た。
[ケーキ]と[クッキー]を作った僕たちは一緒に帰ってた途中、圭介はふと【調理室】がある方向へ走っていってしまう。
 僕は察して人が居る道を通りながら【テック先生】の元へ走る。
 彼に会って事の内容を説明する。
 無事でいて……と祈った。けど、この世界の神は──


 圭介が見つからない。
 トーチヴォンさんもテックさんも彼の気配を探ってるのに一向に出てこない。

『っ、強制力がこれ程とはな、……圭介』
『あ! ケース様のマナが!』
『『それはどこ』だ!』

 僕は走った。途中ワグーッツンと会って走りながら説明する。
 そこはなんてこと無い【空き教室】だった。なんで【ココ】が見つからなかったのか。
 ワグーッツンが【扉】を開けるとそこには──無残に倒れてる圭介がいた。

『圭介、ごめん、ごめんね。』
『襲った奴らは消えてるか』
『巻き戻すから、今度こそは──』

 白と赤が混ざった液体に沈む冷たくなった身体を抱きしめる。
 トーチヴォンさんから最悪の場合は巻き戻す事になってる。【場所】は分かった。けど、──

『おい、お前らって、なんだよ、これ、ケース……? お、おいっ!【ココ】で何があった』
『カメイメくん、助けて……』
『お前ら……』

 カメイメくんが通りかかって僕らを、そして圭介を見てしまった。彼の感情が痛いほど分かる。上着をかけた圭介を抱きかかえながら僕達は【先生の部屋】に向かった。

『コ・カメイメか』
『あんたは──ワグーッツンの兄か』
『ああ。トーチヴォンだ。』

 簡潔なことの内容と、今から圭介がやられる前に戻る事、そして。

『襲ったのはかの者の手引きした、正確にはかの者の側近だが、まぁこっちでは魔物と言う事にしとこう。それが数人の、お前を慕う生徒達に乗っ取り行動をした。』
『俺を……くそ、それでその魔物は』
『お前の剣は確か聖剣だったな』
『ああ、先祖に勇者がいたからな』
『魔物だけを斬る。出来るだろ』
『簡単な事だ。だけど、俺は──』
『気持ちはわかる。が、それはコッチで処理する。』
『・・・分かった。俺はケースを助けるだけに全力を尽くす』

 かの者の側近……それが今回の悪者。
 襲った生徒達を許せないのは僕だってそうだ。
 巻き戻して圭介の元へカメイメくんを行かせた。僕も行こうとしたら止められた。
『【ココ】で待って圭介を治療しろ』と。
 早く戻ってきて、と今か今かと待つ。祈る。神ではない。

 戻ってきた2人、僕は圭介に抱きつく。といっても怪我してるから優しく。

『ケース、ごめんね、ごめんね……』
『マルが泣くようなコトは起こってねぇよ、それにメイチャンが助けてくれたし』

 泣くようなコトは起こって無い。それが彼の認識。分かってる、分かってるけど。
 それから、すぐに《治療》をする。殴られたお腹は凄い痣が出来ていて痛々しい。今の彼には《快楽変換》が無いから痛さには強くない。
 早く綺麗に治さないと。

 その後はカメイメくんに付き添われながら圭介は【自分の部屋】へ帰っていく。
 僕達はテックさんを加えて今後の事について話し始めた。
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