終:下は大火事、上は洪水の話

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島の話2

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 こんな場所だから? と言う事で夕飯付きで銀貨10枚だった。この宿も他の相場よりもバカ高い。

「独り身の男飯だ、簡単なものしか作れん。」

 と言って出されたものは、ジャガイモのスープと見たことがない色の魚の刺し身と焼き魚だった。

「こんな色の初めて見ました。この魚の名前はなんて言うんですか?」
「知らん。」
「ええ、」
「ここらで取れる魚には名前がないんじゃ。……いや、昔はあったかも知れないが、浮き沈みする島で、今こうやって住んでる者達もここが昔どういう歴史があるのかは全く知らんのじゃ。ワシも30代で移り住んだからのう。前は西の方に住んどった。」
「もし、知ってるとしたら守り手って人達ぐらいしか知らないって事か。」
「うむ。よく、その名前を知っておったのぉ。」

 宿屋の主人と小さなテーブルを囲み飯を食べながら話す。
 旅人のこういう話というか質問に慣れてるのか饒舌に聞かせてくれる。
 じゃがいもはどんな土地でも育つポピュラーな野菜だ。
 浮き沈みする島では魚以外でよく食べられるそうだ。他の野菜もあるが、船で運ぶ手間と、収穫するまでの工程に差があってよほど家庭菜園が趣味じゃないと食べないらしい。
 水は雨や湖の水をろ過して生活水として使ってるそうだ。
 飲水以外は生活魔法で体をキレイにしたり出来るから困ってないとか。
 
 船の時も宿も他の場所での相場よりバカ高い理由は、もし、島が沈んだ時に近くの町や村で生活する為の資金だとか。
 島では商売っていうのはほぼ無くて殆どの住人は他ではなかなか取れない魚が多く生息するここで漁をしたりと自給自足生活を送ってる。

 明日、少し島をぶらついてみようかと思う。
 この島は大きな三角形の山の様な見た目で主人に聞くと頂上は少し平たいらしい。
 この湖に現れる島の中で一番デカいとか。だからこの島が浮くと皆住み始める。

「いや、他の島が脆いだけだ。」

 時期や、年月によって浮き沈む島は色々あるらしい。が、主人が見てきた話では、いわゆる“女神の手”と呼ばれる島は人が3人上陸するだけで沈みあの時は危険だったと険しい表情でそう言った。

 他にも“女神の腕”というあの崖から続く細長い島が浮くときは冒険者や冒険家が降り立つらしいが、上に行くほど雲の中に入るため数センチレベルで先が見えず、転落事故などがおきて死者が出やすいと。
 
「夜、窓辺からあの付近をぼーっと見とると、ゆらゆらするモノが見えるんじゃ。」
「怖いこと言わないでくださいよ、」
「いや、あれは紛れもなくゴーストじゃった。」
「ここ、教会あるんですか?」
「ふおっふぉ。教会は大昔あったが今は廃墟じゃ。じゃが、この島にはあの“守り手”達がはった結界があっての。大丈夫なんじゃ。まぁ、そのゴースト達をおちょくったりしなければ、の話じゃがの。」

 夜、眠れるだろうか。
 飯を食べて備え付けのシャワーを浴びる。
 生活魔法でキレイにするのも節約ではあるけど、なんとなく気分的にサッパリしたかった。
 生活魔法は、明かりを付ける、火を付ける、体を清潔にするとかまぁ、名前通りの魔法。誰しもが魔力がある世界では生まれつき得意な属性や魔法以外にこの生活魔法は生きていくうえでの基本とされている。
 職業が前衛でも生活魔法だけは使える、と言うものは多い。
 
 そういえば、大昔の話で本当かどうか知らないが魔力を一切持たないものが居たとかで、生活不便だったろうな。まぁ、使い捨てにはなるけどそういうアイテムが売られてるし……いや、大昔の事だから今みたいに当たり前のように売られてたりしないのか。

 そろそろ寝ようとベッドに入る。なんだかんだ、疲れてたのか目を閉じればすぐに夢の中へ落ちた。


 窓からの朝の日差しと、小鳥のさえずりで目が覚める。こんなにもスッキリとした目覚めは久しぶりな気がする。
 下へ降りると主人はまだ寝てるらしく、カウンターに居なかった。まぁ、今泊まってるのは自分ぐらいだしいいか。

 宿の外へ出ると夜よりも少し見晴らしが良く、普通家々が所々に建ってるのが見えた。
 
「おはようさん。見ない顔だね、旅人かい?」
「ええ、昨日ここへ。少し高い……あの辺りまで行ってみたいんですけど、時間かかりますかね?」
「ふー……む。まぁ、その格好なら斜めに登って行けばたどり着くだろうさ。慣れてるやつは10分程だが、あんたは20分か長くても30分ぐらいだろう。怪我には気をつけるんだぞ!」
「はい! ありがとうございます!」

 島の人に話しかけてもらい少しだけ島をうろうろしつつ、斜めに登り始める。斜めじゃないと急勾配とそういう登山アイテムが必要になるとか。行けるところまで……
 途中、昨日主人が言っていた教会があった。建物はたもってるけど、やっぱり廃墟らしくボロボロだ。
 入口の穴から中を覗くとステンドグラスに陽の光があたり綺麗に差し込んでいる。

 女神像が見えて、その像の祈りの指の形が違和感を覚えた。
 この世界の宗教は聖塔教というのがポピュラーな宗教で、祈りのポーズも両手の人差し指と薬指折り、中指と小指を上げてお祈りするんだけど、それの逆みたいな……

「おや。珍しい、旅人かい?」

 後ろから声をかけられビクリとする。振り返ると金の縁取りをした白いフードを被った人物が居た。
 顔はフードを深く被ってる為見えづらいが声的には若そうではあった。

「あ、はい、そうです。貴方はここの管理者さんですか? すみません、あの辺りに行こうとしたら教会が見えたもので……」
「いえ、大丈夫ですよ。そうですね、“管理者”といえば管理者ですよ。それで、どうかしましたか?」

 声だけでは男性なのか、女性なのか分からず。それよりもあの女神像の指の形が気になり質問をするとあれは“アイジツキョウ”という宗教のポーズと言うことを教えてくれた。

「アイジツキョウ、ですか。聞いたことがありません。」
「そうでしょうね。愛日教はとある場所(世界)にあるモノですから。祈る指の形は同じ。ただそれが上を向いてるか下を向いてるかの違いでしかありません。」

「大昔はあったのですよ」とそう言った。確かに、ここは浮き沈みの島で長い歴史があるけど、ほとんどの住人はその歴史を知らない。
 この目の前の人物は何者なんだ。考古学者なのだろうか。不思議な空気を纏った人物。


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(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠)そろそろ朝なので寝よう
自分の異世界世界の設定では異世界の見た目や味なんかの植物や生き物ではあるけど、その世界の人達は「リンゴのような見た目で味はブドウのようだ」とかは言わない。言うのは別の世界からきたやつ
表記もその世界の言葉ではあるが、読むのが大変なので、ジャガイモとか魚表記になる。
前回の宿屋の看板、基本お店は看板メインで文字はそんなに書いてない。王都ならあるかもしれないが、文字書きが低かったりする世界観なので、看板でわかりやすくなってます。
ギルドの職員とかは文字がかける人を雇ってます。
文字を書いて記入するタイプと、専用のアイテムで読み取り式、色々と。
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