24 / 71
材木問屋・世渡家三男坊の祝言
※元日のくるみは……。
しおりを挟むちゅっ、ちゅっ、ちゅくっ。
閨に淫靡な音がする。
「くるみ、あ、そんな、可愛いお口で、しゃぶっていい、もの、じゃ、あ、あ、ああっ」
狼狽した声を聞きながら足の股にうずくまり、心を込めて舌を動かす。
足の、いとしい夫のにおいがする。
握った根元は熱く張り詰めていた。
「く、口の中っ。熱っ……。くるみ、ああ、そんなとこ揉んじゃ、あ」
布団に座った足は、くるみにされるがまま。珍しく顔を真っ赤に染めて身を震わせている。
口にくわえ込んだ足のものが気持ちよさそうにぴくぴくするのを唇で感じ、くるみは嬉しくなった。
◇
正月は台所で火を使わずおせち料理を食べるから、元日の朝はゆっくりだ。
いつもよりのんびりしつつも、昼から足はおふくとともに挨拶回りに出るため、きりりと羽織袴の姿になった。
「入れ違いになるけど、髪結いさんを頼んでおいたよ。祝言の時に来てくれたひとだから安心だ」
足の脱いだ着物を畳んでいると、足は羽織の紐を結びながら、くるみへにっこり笑顔を見せる。
「祖母様と俺が出かけている間にね、身支度をして待っておいで。初詣に一緒に行こう」
初詣にはこれを着るといいよ、と言って、足は新しい着物を置いて出かけていった。
新しい着物というのは心が浮きたつものだ。お山を下りるまで、着物をまともに着替えたことのなかった座敷童ならなおさらに。
足がくれた着物は京友禅の総柄だった。千代紙のように小さな柄が繰り返されている。黒地に赤みがかった細竹が規則正しく並ぶ中、梅や菊の小花がたくさん咲いた、愛らしくも粋な柄である。
ふたりが出かけている間、おしずや髪結いのひとも加わって、ああでもない、こうでもないと帯や半衿を選ぶ時間はとても楽しいものだった。
「よく似合うねえ、くるみ。可愛いのに粋だ。こんなに素敵な御新造さんが俺のお嫁さんだなんて、夢のようだねえ」
おふくと新年の挨拶回りから帰り、羽織袴から縞の着物へ改めた足は、くるみの手を引きながらうっとりと言う。
鎮守様への参道は、初詣のひとでごったがえしていた。あまりのひとの多さに尻込みしたくるみを、鎮守様まで遠回りで連れて歩きながら、足は文句ひとつ言わない。
「こんなにきれいなくるみだもの、ひとごみの中で歩いて、着物が乱れちゃもったいないよ」
例によって褒めちぎられて、くるみは照れてうつむいた。そうすれば今度は髷がよく似合うと言われ、つないでいない方の手で赤くなった顔を覆う。
「振袖姿が拝めなくなったのは残念だけど、くるみの若妻姿もいいものだねえ。可愛い中にも、凜とした色気があって……。その着物もね、お前さんが着れば値千金どころじゃない、一万両の眺めだよ」
くるみは、お山のおかげで嫁入り支度はできたものの、普段着や気軽なよそ行きなどを全く持たずに嫁いだ。
ちょいとそこまでお豆腐を買いに行くのに、嫁入り支度の黒紋付きなど着ていけない。そのため、折に触れ足やおふくが、こうして着物を選んでくれる。
そのたびに足はこの調子でくるみを褒めちぎるのだ。心からの言葉だと幸せそうな顔が言っていて、嬉しいやらくすぐったいやらでどうしようもない。
「割鹿の子も、くるみがすると可愛いなあ。赤い縮緬が花の咲いたようじゃないか」
それは髪結いのひとの腕がよかったからだ。くるみに気を遣って結ってくれたので、今もあまり痛い思いをせずに済んでいる。
くるみの髷は、人妻となったため丸髷の割鹿の子だ。人妻の髪型といいながら可愛らしい。髪結いのひとの腕もあって、ふわっとした縮緬と簪や櫛が華やかだ。ただ、痛い思いをしないように結えば、どうしても保ちが悪くなってしまうそうだが。
髪がつれて痛いため、くるみは毎晩ほどいて眠っている。普通は一度髪結いに結ってもらったら、五日ほどは保たせるものらしい。女は自分で髪を結えてようやく一人前だというし、保たせるのは無理でも、せめて早くこの髷を結えるようになりたい。
「やっぱり鎮守様の回りは混んでいるね。大丈夫かい、くるみ」
境内に入ろうとするところで、くるみはひとにぶつかりかけた。危ういところを足に肩を抱かれ、引き寄せられる。
足の胸元に顔を押しつけ、そのかおりをかいで胸の奥がきゅんとする。
昨晩は年神様をはばかって、閨で触れ合うことはしなかった。今まで、それこそあのお山で足にはじめて抱かれてからこちら、毎晩のように可愛い、好きだとささやかれ、何度となく求められたのに。
たった一晩、何もなかっただけなのに、布越しの体のぬくみとかおりを感じただけで、なんだか溶けてしまいそうだ。
くるみは熱い息を吐く。
足が、このままぎゅうっと抱きしめてくれないだろうか。
「くるみ、大丈夫かい、ほんとに?」
心配した足が顔をのぞき込んでくる。
くるみは御水屋で手水を使い身を清めるまで、足のかおりにぽわぽわと酔ったままだった。
◇
くるみは足の脚の間にうずくまって、舌と手を動かす。昨夜に閨事がお休みだった足のものは、くるみにくわえられてさらに固さを増している。
「くるみ、くるみ、くち、お前さんの、小さなお口、気持ちいいよ……ッ」
気持ちいい、と言われて嬉しい。
今日は陽が落ちるのが待ち遠しかった。初詣、ひとごみから幾度となくかばわれる度に、くるみは足の体のぬくみとかおりに切なくなった。
ようやく一緒の布団に入っても、足は今日のくるみがどんなに可愛かったかについて話すばかり。触れてくる気配さえなく、くるみは焦れて焦れて、焦れたあげくにこんなことになってしまったのだ。
あのお山でくるみを女にして以来、ほとんど毎日のように足はくるみを抱いた。嬉しくて、幸せで、気持ちよくて、ああ、くるみを足なしにはいられなくしたのは、お山から下りようと決心させたのは足なのだ。
優しく手で触れられるだけでくちづけが、肩を抱かれれば足自身が欲しくなってしまうように、肌をなでられるだけで甘く啼いてしまうようにくるみを変えたのは足以外にいない。
だから、どんなにくるみがはしたないことをしても、呆れないでほしい、と思う。自分はとうに、自分に呆れかえってしまっているけれども―――。
「くっ、くるみ、くるみ。俺も、お前さんに触らせておくれ」
震える手で頭をなでられる。くるみが口元を足のものから離し首をかしげると、足はぱたん、と布団に倒れ込んだ。そのまま、こっちに手をひらひらしてみせる。
「こっちに可愛いお尻をよこしてごらん」
戸惑いながらもくるみは足の隣に、彼へ尻を向けて手をついた。
「俺の顔をまたいで続きをしておくれ。そうすりゃ、俺も、可愛いくるみにたくさん触れるよ」
え。
顔を。
またぐ?
思わず振り返ると、足はにこにこしながらこっちを見ている。けれどその額は汗ばみ目尻が赤らんで、情事の熱がありありと見て取れる。
「さあ、ほら、こっちだよ」
「あ……」
寝巻の上から尻を優しくなでられた。ぞくぞくして、勝手に尻が揺れてしまう。くるみは寝巻の裾をからげて体の前で抱きしめながら、おずおずと足の顔をまたいだ。
恥ずかしい。
顔から火が出そうだ。
そこがとても恥ずかしく秘密めいた場所だということは、他ならぬ足からたっぷりと教え込まれている。
足に触れられ繋がれば、どれほど気持ちよく幸せになれるのかも。
「ああ、くるみ、いい眺めだねえ……。俺のを舐めて濡れたのかい」
「あんっ」
恥ずかしさと、尻をなで回す手の感触に声が出る。
「さ、もっと腰を落として……そう。濡れて、ひくひく動いて……。あかぁいここが、触ってくれと言ってるみたいだよ」
尻を、内ももをなでられて、肝心の場所などどこにも触られていないのに、くるみの中から熱い蜜があふれ出ていく。
「ああ、あっ、んんっ」
割れ目を広げられ、舌でなぞられる。たまらずかくん、と足の体の上へ崩れ落ちれば、さっきまで触れていた足自身が視界に入る。
手で握り、くちづけする。足が快楽に息を詰めたのが聞こえた。
ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅっ、くちゅっ。
濡れた音がふたつ聞こえるのは、そう長い時間ではなかった。
「ん……う、あ、あん、あっ、ああッ!」
くるみの熱く濡れたそこを、足の舌がなぞり、舐め、こする。耐えられなくて、足のものから口を離して声をあげてしまう。
なんとか口にくわえてしまいたいのに、気持ちよくて声が止まらないのだ。せめてと必死になって手を動かし、何度も何度もくちづける。
「ああ、蜜まで甘い。くるみはどこもかしこも甘くて美味しいよ」
「ああ……っ、あう、うっ」
ゆっくりと長く太い男の指が入ってきて、くるみは気持ちよさにぶるっとふるえた。その拍子に指をしめつけてしまい快楽に啼く。
「締まるねえ。ふわふわでとろとろで、あまぁい蜜がたっぷりなのに、俺の指に絡みついて離さない……。くるみ、お前さんはほんとに可愛い。たまらないよ」
「……ああっ」
足のとろけた声の中に欲と熱を感じ、手にした彼ものの固さにこれから先の快楽を思い、くるみはさらに彼の指を締めつけて啼いた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる