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ネメアの獅子討伐依頼
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ネメアの獅子って……ネメア平原にいるあのSランクの魔物のことよね!?
確かに、ネメア平原を安全に通れるようになれば新たな交易路ができるって、冒険者ギルドでもネメア平原の魔物討伐依頼は出してるわよ。
それこそ、私が冒険者になりたての頃からずっとある、完全無欠の塩漬け案件だけど……。
レイアの様子に、バルドもタオの言う“ネメアの獅子”が何を指すのかに思い至る。
そういえば、父が生前ネメア平原の交易路を開拓しようと大軍を差し向け、酷い目にあったと言っていたな。
たった一頭の魔物に、百を超える勇猛な兵が、なす術もなく殺されたと……。
ネメア平原には手を出すな。これは父が残した家訓なのだが……。
「タオ殿、ネメアの獅子というのは、ここから西に進んだ先にあるネメア平原に棲む、あの魔物のことでよろしいか?」
「うん、それのこと。その獅子の爪があれば、大抵の魔物素材の解体はできると思うよ」
そう簡単に言うが……。
「タオちゃん、ネメアの獅子なんて、それこそ伝説にも謳われるヒドラ級の魔物よ。
残念だけど、討伐なんて不可能よ。それとも、また、タオちゃんが行ってくれる?」
「う~ん、討伐は……ちょっと気が進まないね。素材採取だけでいいなら行ってもいいけど」
(伝説では、ネメアの獅子の毛皮はあらゆる刃物を通さないっていうし……。タオちゃんでも厳しいってことか……)
「でも、確かFランクって、魔物の討伐依頼とかダメじゃなかったかな?」
「あっ!」
タオに指摘されて、レイアもギルド規則を思い出す。
Fランク冒険者が魔物と戦っていいのは、相手から一方的な攻撃を受けた時だけ。
魔物討伐依頼を受けられないのは勿論、素材採取などを目的に、自分から危険な魔物に近づいて行くことも禁止されている。
そうしないと、魔物素材採取のために、わざと危険な魔物に近づく新人冒険者が出てしまうからだ。
ヒドラ討伐については、ヒドラがここラモスを狙っていた(と予想される)以上、タオを含むラモスに住む者全員がヒドラの攻撃対象であったと判断できるから……という言い訳で通してある。
かなりグレーではあるが、こちらが何もしなくても相手は攻めてくる、という状況だったからこそ、特例で認められた案件である。
「まぁ、別にボクが冒険者を辞めればいいだけの話だけどね」
「それはダメ!」
タオが何気なく発した言葉には、レイアが慌てて否定の言葉を入れる。
ヒドラ素材の解体も重要だが、タオちゃんに冒険者でいてもらうのも同じくらい重要なのだ。
「でも、それだと、ネメアの獅子の爪、取りにいけないよ?」
「う~~~はっ! そうだわ! ねぇ、タオちゃん、ちょっと荷物運びの依頼を受けてもらえないかしら?」
「ん?」
「ネメアの獅子討伐依頼は私が受けるわ。で、タオちゃんにはポーター役をお願いしたいの。
上級冒険者のサポートは新人冒険者の仕事だから、これならタオちゃんがネメアの獅子討伐に参加しても問題無いし、ギルドとして正式な依頼にすることもできるから、ちゃんと報酬も出せるわ……どうかしら?」
つまり、レイアお姉さんの荷物運びでついて行ったボクは、魔物に襲われて仕方なく戦うことになると……。
魔物に襲われれば間違いなく死ぬって事実を、新人冒険者にはしっかり教え込めばいいのに、それをしないで受注依頼の制限なんて面倒な規則を作るから、かえってややこしくなるんだよ。
物事の本質を無視して、対処療法的な規則でなんとかしようとするから、余計に世の中は複雑になっちゃう。
太上老君がよくそんなことを言ってたっけ……。
でも、まぁ、ちょうどいいかな。
「別にいいよ。つまり、ボクは荷物持ちでレイアお姉さんについて行く。で、ネメアの獅子との戦闘でお姉さんが危険になったら、パーティーを守るために仕方なくボクも戦いに参加する、でいいんだよね?」
「あっ、えっと……(建前としては)それで間違ってないんだけど……できれば、初めからタオちゃんが戦ってくれるとうれしいかなぁ……とか」
縋るような目でレイアが見つめるも、タオの対応は素っ気ない。
「それはダメだよ。副ギルド長が規則を破るのはよくないよ。
ほんとうに危なくなったら助けてあげるから、できるだけがんばってみてよ」
「う~~~」
「あと、この依頼なんだけど、“討伐”ではなく“採取”にしておいてね。必要なのは爪だけなんだから、魔物を完全に倒し切る必要はないよね?」
「あぁ……そうね」
いくらタオちゃんでも、さすがにネメアの獅子は切れないか……。
でも、倒し切るのは無理でも、罠を仕掛けるとかして爪だけ確保するなら……なんとかなる?
本当に危なくなればタオちゃんが助けてくれるだろうし……。
でも、相手はネメアの獅子で……一撃即死って可能性も!
「そういうことなら、私も参加させてくれないか?」
死地に向かう表情で俯いたままぶつぶつ呟いているレイア。
そんなレイアを見兼ねたように、アンドレが意を決した表情で語りかける。
「この問題はラモス領全体の問題でもある。ヒドラの素材が無駄になれば、ラモス領にとっても大きな損失だよ。
冒険者ギルドだけに任せるわけにはいかないからね」
そう言ってレイアに微笑みかけるアンドレは、なかなかに男前である。
「アンドレ様」
レイアも、まんざらでもない様子。
「なに、タオ殿のサポートもつくんだ。一軍を動かして事にあたれば、獅子を取り押さえることくらいはできるだろう」
笑ってそう言うアンドレだが……。
「ああ、軍を率いてはダメだよ。そんな大人数に目を配るなんて面倒だし、全員なんて守りきれないよ。
そもそも、ネメアの獅子相手に数なんて揃えたって、きっと邪魔になるだけだよ」
「そうですわね。タオ様がおっしゃる通り、参加するのならお兄様だけにするべきです」
まさかの女性二人からの言葉に、若干の焦りを見せるアンドレ。
「いや、だが、流石にネメアの獅子相手に3人だけというのは……」
「何を弱気な! いざとなればタオ様もご助力くださるのです。レイア様とお二人であればネメアの獅子も倒せるくらいのことはおっしゃってください!」
「そうだな! アンドレ、ここは男を見せる時だぞ」
カテリーナの意図を察してか、バルドまでが3人での討伐を進める。
アンドレもその意図を悟り、何やら覚悟を決めた表情になり……。
「レイア嬢、二人で協力して必ずネメアの獅子を倒しましょう!」
やる気を漲らせ始める。
(なんかよくわからないけど、タオちゃんが一緒なら多分大丈夫よね……)
そんな皆の様子を、タオはおもしろそうに眺めていた。
確かに、ネメア平原を安全に通れるようになれば新たな交易路ができるって、冒険者ギルドでもネメア平原の魔物討伐依頼は出してるわよ。
それこそ、私が冒険者になりたての頃からずっとある、完全無欠の塩漬け案件だけど……。
レイアの様子に、バルドもタオの言う“ネメアの獅子”が何を指すのかに思い至る。
そういえば、父が生前ネメア平原の交易路を開拓しようと大軍を差し向け、酷い目にあったと言っていたな。
たった一頭の魔物に、百を超える勇猛な兵が、なす術もなく殺されたと……。
ネメア平原には手を出すな。これは父が残した家訓なのだが……。
「タオ殿、ネメアの獅子というのは、ここから西に進んだ先にあるネメア平原に棲む、あの魔物のことでよろしいか?」
「うん、それのこと。その獅子の爪があれば、大抵の魔物素材の解体はできると思うよ」
そう簡単に言うが……。
「タオちゃん、ネメアの獅子なんて、それこそ伝説にも謳われるヒドラ級の魔物よ。
残念だけど、討伐なんて不可能よ。それとも、また、タオちゃんが行ってくれる?」
「う~ん、討伐は……ちょっと気が進まないね。素材採取だけでいいなら行ってもいいけど」
(伝説では、ネメアの獅子の毛皮はあらゆる刃物を通さないっていうし……。タオちゃんでも厳しいってことか……)
「でも、確かFランクって、魔物の討伐依頼とかダメじゃなかったかな?」
「あっ!」
タオに指摘されて、レイアもギルド規則を思い出す。
Fランク冒険者が魔物と戦っていいのは、相手から一方的な攻撃を受けた時だけ。
魔物討伐依頼を受けられないのは勿論、素材採取などを目的に、自分から危険な魔物に近づいて行くことも禁止されている。
そうしないと、魔物素材採取のために、わざと危険な魔物に近づく新人冒険者が出てしまうからだ。
ヒドラ討伐については、ヒドラがここラモスを狙っていた(と予想される)以上、タオを含むラモスに住む者全員がヒドラの攻撃対象であったと判断できるから……という言い訳で通してある。
かなりグレーではあるが、こちらが何もしなくても相手は攻めてくる、という状況だったからこそ、特例で認められた案件である。
「まぁ、別にボクが冒険者を辞めればいいだけの話だけどね」
「それはダメ!」
タオが何気なく発した言葉には、レイアが慌てて否定の言葉を入れる。
ヒドラ素材の解体も重要だが、タオちゃんに冒険者でいてもらうのも同じくらい重要なのだ。
「でも、それだと、ネメアの獅子の爪、取りにいけないよ?」
「う~~~はっ! そうだわ! ねぇ、タオちゃん、ちょっと荷物運びの依頼を受けてもらえないかしら?」
「ん?」
「ネメアの獅子討伐依頼は私が受けるわ。で、タオちゃんにはポーター役をお願いしたいの。
上級冒険者のサポートは新人冒険者の仕事だから、これならタオちゃんがネメアの獅子討伐に参加しても問題無いし、ギルドとして正式な依頼にすることもできるから、ちゃんと報酬も出せるわ……どうかしら?」
つまり、レイアお姉さんの荷物運びでついて行ったボクは、魔物に襲われて仕方なく戦うことになると……。
魔物に襲われれば間違いなく死ぬって事実を、新人冒険者にはしっかり教え込めばいいのに、それをしないで受注依頼の制限なんて面倒な規則を作るから、かえってややこしくなるんだよ。
物事の本質を無視して、対処療法的な規則でなんとかしようとするから、余計に世の中は複雑になっちゃう。
太上老君がよくそんなことを言ってたっけ……。
でも、まぁ、ちょうどいいかな。
「別にいいよ。つまり、ボクは荷物持ちでレイアお姉さんについて行く。で、ネメアの獅子との戦闘でお姉さんが危険になったら、パーティーを守るために仕方なくボクも戦いに参加する、でいいんだよね?」
「あっ、えっと……(建前としては)それで間違ってないんだけど……できれば、初めからタオちゃんが戦ってくれるとうれしいかなぁ……とか」
縋るような目でレイアが見つめるも、タオの対応は素っ気ない。
「それはダメだよ。副ギルド長が規則を破るのはよくないよ。
ほんとうに危なくなったら助けてあげるから、できるだけがんばってみてよ」
「う~~~」
「あと、この依頼なんだけど、“討伐”ではなく“採取”にしておいてね。必要なのは爪だけなんだから、魔物を完全に倒し切る必要はないよね?」
「あぁ……そうね」
いくらタオちゃんでも、さすがにネメアの獅子は切れないか……。
でも、倒し切るのは無理でも、罠を仕掛けるとかして爪だけ確保するなら……なんとかなる?
本当に危なくなればタオちゃんが助けてくれるだろうし……。
でも、相手はネメアの獅子で……一撃即死って可能性も!
「そういうことなら、私も参加させてくれないか?」
死地に向かう表情で俯いたままぶつぶつ呟いているレイア。
そんなレイアを見兼ねたように、アンドレが意を決した表情で語りかける。
「この問題はラモス領全体の問題でもある。ヒドラの素材が無駄になれば、ラモス領にとっても大きな損失だよ。
冒険者ギルドだけに任せるわけにはいかないからね」
そう言ってレイアに微笑みかけるアンドレは、なかなかに男前である。
「アンドレ様」
レイアも、まんざらでもない様子。
「なに、タオ殿のサポートもつくんだ。一軍を動かして事にあたれば、獅子を取り押さえることくらいはできるだろう」
笑ってそう言うアンドレだが……。
「ああ、軍を率いてはダメだよ。そんな大人数に目を配るなんて面倒だし、全員なんて守りきれないよ。
そもそも、ネメアの獅子相手に数なんて揃えたって、きっと邪魔になるだけだよ」
「そうですわね。タオ様がおっしゃる通り、参加するのならお兄様だけにするべきです」
まさかの女性二人からの言葉に、若干の焦りを見せるアンドレ。
「いや、だが、流石にネメアの獅子相手に3人だけというのは……」
「何を弱気な! いざとなればタオ様もご助力くださるのです。レイア様とお二人であればネメアの獅子も倒せるくらいのことはおっしゃってください!」
「そうだな! アンドレ、ここは男を見せる時だぞ」
カテリーナの意図を察してか、バルドまでが3人での討伐を進める。
アンドレもその意図を悟り、何やら覚悟を決めた表情になり……。
「レイア嬢、二人で協力して必ずネメアの獅子を倒しましょう!」
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