家出仙女は西側世界で無双する

Ryoko

文字の大きさ
17 / 31

道中

しおりを挟む
 善は急げと、その日のうちに出発準備を整えた3人は、翌日にはネメア平原に向けて旅立って行った。

 話し合いの結果、領主家からはアンドレが、冒険者ギルドからはレイアが代表として出され、それにサポーターという名目でタオがついて行くことになった。

 たとえ名目だけとはいえ、タオは二人のサポーター。

 アンドレとレイアの野営道具などの荷物は、全てタオの巾着の中に収められている。

 他にも、カテリーナからもらった山のような量のお菓子も巾着の中だ。

 タオの巾着の中の時間は外の世界とは違うらしく、生菓子の鮮度が落ちることもないから安心だ。


 ……


「前方の林の中にオークがいます……数は3……来ます! 右の1体は私が片付けますから、アンドレ様は残り2体を!」


 そう言って、右の1体を残り2体から分断する動きで斬りかかるレイア。

 ここまでの道中、何度か魔物に遭遇しているが、やはり彼女は全体の中での立ち回りが上手い。


「了解した!」


 レイアに遅れて飛び出したアンドレは、目の前の1体を一刀のもとに斬り伏せ、返す刃ですかさずもう一体に一撃を加える。

 アンドレは膂力もあり、剣術の基礎がしっかりできている。

 少々動きが型にはまり過ぎているところはあるが、動きは悪くない。

 そんなことを考えつつ、二人が戦う様子をタオが眺めていると、無事3体のオークを倒し終えた二人がこちらに戻ってくる。


「二人とも、お疲れ様。だいぶ連携も上手くなったし、なかなかいい感じだったよ」


 そんなタオの褒め言葉に、2人は満更でもない様子。


「でも、やっぱりアンドレさんは想定外の動きに弱いね。普段から人を相手にすることが多いせいだと思うけど、動きの端々に人の常識で判断しちゃうところが見られる。
 ふつうでは考えられない動きをされると、動作がぎこちなくなっちゃう時があるね」

「おっしゃる通りです。先程も、オークが頭から突っ込んできた時には、咄嗟にどう対処して良いのかわからなくなりました……」


 タオに自分の問題点を指摘され、改めて先ほどの戦闘を振り返ってみるアンドレ。

 四つ足の魔物ならともかく、二足歩行で手に武器を持つ人型の魔物オークが、いきなり頭から突進してくるとは思っていなかった。

 その思い込みがいけないのだと反省する。


「レイアお姉さんの問題は、やっぱり突破力の無さかな?
 動きは速いし状況判断もいいから、相手が一人だったらいいんだけどね。複数になって相手に囲まれちゃったりすると、手も足も出なくなっちゃう。
 さっき、自分の相手を一体に絞ったのも、そういうことだよね?」

「そう、ね……。
 本来なら、アンドレ様の護衛でもある私の方が、多くの魔物を引き受けなければいけないんだけど。
 でも、私には2体のオークを同時に相手するのは厳しいから……」


 ちらっとアンドレの方を見て、申し訳なさそうにするレイア。

 それでも、まずは確実に素早く目の前の敵を片付けて、必要ならその後すぐにアンドレ様のフォローに回るのが最適解で……。


「うん、その判断自体は間違ってないと思うよ。今の自分にできる最善の策を選択するのは良いことだからね」


 そうは言っても、今の自分に護衛対象アンドレをきっちり守り切る実力がないのも事実。

 元々、現役冒険者時代には斥候役だったのだし、仕方がないのは分かっているが……。

 それでも、悔しいことには違いないのだ。


 この旅を始めてから何度目かの魔物、野党との遭遇を経て、タオの立ち位置はサポーターから師匠へと変わりつつある。

 今回のように、二人の戦闘に対してアドバイスをするのも、今回が初めてではない。

 実際、タオのアドバイスは的確で、二人ともこの短期間で、かなり実力が上がったのではと感じている。


(でも、まだまだ全然足りないんだよねぇ)


 西の空を見ながら、そんなことをつぶやくタオ。


(うん、明日くらいにはそっちに着くかな)


(いや、その前にちょっとだけ修行させるつもりだから大丈夫)


(うん、楽しみだね)


「タオちゃん?」

「あっ、ごめん。どうしたの?」

「えぇと、この辺りには村とかもないから、今日はこの辺で野営しようと思うんだけど、野営とか大丈夫?」


 ここまでの道中、たとえ小さな町や村でも宿を確保することはできていたから、野営というのは今回が初めてになる。

 ここから先は村や町もないから、ネメア平原までのあと数日間は野営が続くことになるだろう。

 冒険者であるレイアは勿論、領軍を率いての遠征経験のあるアンドレも野営には慣れている。

 野営道具も持ってきているから問題は無いが、いいとこのお嬢さんにも見えるタオが心配だ。

 アンドレに至っては、仮にも女神様と聞いているタオに野宿などさせて本当にいいのかと、レイアとは違う意味で心配になる。

 そんな二人に対して、


「うん、ちょうどいい機会だし、この辺りで本格的に修行でもしてみようか」


 にっこり笑うと、タオはそんなことを言い出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切り者達に復讐を…S級ハンターによる最恐育成計画

みっちゃん
ファンタジー
100年前、異世界の扉が開き、ハンターと呼ばれる者達が魔物達と戦う近未来日本 そんな世界で暮らすS級ハンターの 真田優斗(さなだゆうと)は異世界の地にて、仲間に裏切られ、見捨てられた 少女の名はE級ハンターの"ハルナ•ネネ"を拾う。 昔の自分と重なった真田優斗はハルナ•ネネを拾って彼女に問いかける。 「俺達のギルドに入りませんか?」 この物語は最弱のE級が最強のS級になり、裏切った者達に復讐物語である。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...