【小説家✖️アイドル】 天才小説家は俺の前だと語彙力をなくす

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 透の膝に座って、向かい合わせになる。今までしたことがなかったので恥ずかしくもあるが仕方ない。自分から行動しなければこの男には伝わらないのだから。


 「ゆ、ゆ、ゆきくん?!」


 驚きすぎて俺の名前を言えない透。恋人が膝の上に座ったぐらいでそんなに動揺するなと言いたい。


 
 「嫌か?」



 「い、嫌じゃないです。けど」



 「けど」



 「ゆ、ゆきくんが僕の膝にいるなんてもう幸せすぎて」



 耳まで赤く染めて恍惚とした表情で言う。俺は呆れて何も言えなかった。
 恋人だからキスもする。もちろん、それ以上のことも。付き合って同棲までしても今だに透は俺に慣れない。抱きしめる行為もぎこちない。まるでファンのように俺と接する。
 俺はちゃんと透の恋人なのかと不安になる時がある。まさに今、不安だ。



 「ゆきくん?」


 黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、透が膝に乗る俺を見上げた。



 「抱きしめろよ」




 「え?」




 「透は俺のファンじゃなくて恋人だろ。だったら今すぐ抱きしめてよ」




 自分で言っていて恥ずかしい。



 「抱きしめていいんですか?」



 「いちいち、許可なんかいらないから。俺がして欲しいんだよ」



 ゆっくりと透の手が俺の背中に回る。その手つきが弱々しくて、じれたかった。俺は自分から透の首に手を回してギュッと抱きしめた。



 「好きです。ゆきくん。好きです」



 「ん。俺も」



 透も強く抱きしめ返してくれた。温かい。透の温もりに触れて、初めてずっとこうしたかったんだと気づいた。



 「あんたは俺の恋人なんだからもっと触ってよ。遠慮なんかいらないから」



 「でも、ゆきくんのこと好きで大好きで大切にしたいから……」



 「好きならすぐに抱きしめろよ。キスしろよ。俺がして欲しいんだ」



 透の耳元で俺は言う。顔を見られなくてよかった。自分でも今は情けない顔をしているのが分かる。



 「ゆきくん」



 声の振動が直接伝わってくる。



 「僕は日々色んな言葉を紡いでいます。ありがたいことに僕の言葉を好きだと言ってくれる人もいます。でもゆきくんを前にするとこれまで積み上げてきた言葉が出てこないんです。ただ好きで大好きで言葉にならないんです。僕はゆきくんに会って初めてこんな感情を知りました」



 透の言葉が静かに俺の胸に落ちる。柔らかく染みていく。


 「好きだから大切にしたいのに時々感情が溢れて、君を傷つけてしまいそうになるんです。それが僕は一番怖い」



 透の声が震えている。


 「そんなの俺は怖くない。俺は透のことちゃんと知ってる。透はそんなことしないって。透のこと俺も好きで信頼してる。だから大丈夫」

  
 そう、大丈夫だ。俺の透は同じ気持ちだ。何回でも言葉を紡いでいけばきっと何度でも繋がれる。お互い諦めずに伝え合えば大丈夫だ。



 「もっと単純に考えればいいんだよ。今、透は何をしたい?」



 「僕は、今、ゆきくんとキスがしたいです」



 「俺も」



 顔をゆっくり近づけた。そっと唇が触れ合う。
 お互い顔を見合わせて笑う。



 「ずっと君とこうしたかった」


 俺は透の首に腕を回し、もっと深く口づけた。熱い舌同士が音を立てる。お互い夢中で求め合った。
 

 
 「好き、好き、透」


 普段言えなかった、好きを透に伝えた。
 透は幸せそうにはにかみながら僕もとつぶやいたが、それはキスに紛れて溶けた。



 
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