47 / 93
第2章 旅立ち
別れの時②
しおりを挟む
マリウスとアーラを追いかけていたニゲルは、サフィラスの怪我の処置をしていた部屋から出て、2階に上がる階段の途中でその足を止めていた。
先に、ヴェシカとラモに会って、明後日この家をサフィラスと出る事を伝えようと考えついたのだ。
本当はきょうだいにまずは言うべきなんだろうけど、決心が中々かたまらない。だから、まずは周りの人に言ってしまえば、マリウス達に言うのも気が楽になるんじゃないか。そんな事をぼんやり思ったのだ。
迷ったものの、やはりそうしようと決めると、再び階段を上がりまずは起きていそうなヴェシカの部屋に行った。
「おはよう、何?どうかした?」
扉を開けてくれたヴェシカは、支度中だったのか、眠そうな出立ちで手に櫛を持っていた。
「ごめん、少しだけ良いかな」
「うん、入る?」
「ありがとう」
ニゲルは女の子の部屋に2人きりでいる事にすこし気まずかったけれど、肝心な事をすぐに伝えた。
「え?サフィラスさんと!?けど、アーラとマリウスはどうするのよ?」
「ウエンさんにはここに置いてもらえるようにお願いして、良いって言ってもらったんだ」
「お父さん、それで良いって?」
ヴェシカは驚いたのか、目を丸めている。
「うん。2人の事は心配しなくていいって。ヴェシカにもお礼を言いにきたんだ…その、少しの間だったけど、ありがとう…」
ちょっと照れくさかったけれど、ニゲルはヴェシカに感謝を伝えたくて精一杯笑顔を浮かべた。
「これからも、どうかアーラ達をよろしく」
「…ニゲル…あんたはそれで、いいの?」
「…決めたんだ」
それ以上何を言ったら良いかわからなくなり、何かを言いかけていたヴェシカを避ける様に、急いで部屋を後にした。
次はラモに会って同じ事を伝えよう。
胸のモヤモヤも、言葉にしてしまえば、霧が晴れるようにスッキリとしてくるものだ。
そうしてラモとマーロンの2人部屋の前まで来た時、いきなりガチャリと木戸が開いた。
「ぅわっ」
思わず驚きのあまり声が出てしまう。
扉を叩こうとした手を宙に浮かせたまま、ニゲルは目の前に無表情で立つマーロンを見た。
「マーロンか、びっくりした…」
「おい。ニゲル、明後日発つのか」
相変わらずにらむ様なするどい目つきだ。
「あ…うん…そうなんだ。今までありがとう」
「どこに行くんだ」
そう言うと、ふいっと部屋の奥に行ってしまう。
これはつまり入ってこいという意味だろうか…。
おそるおそる部屋に踏み込むと、まだ布団にくるまって眠っているラモのそばにマーロンが腰をかけた。
「ラモ!起きろよ!ニゲルが話があるんだとよ」
バンバンと小山になった布団を叩くと、モゾモゾと塊が動いて、やがて顔がピョコっと出てきた。
「んー…やめてよ…マーロン…」
「おきろよ、ったく」
「あ、いいよ、そんな。そのままでラモも聞いて」
ニゲルは2人に向かって、改めて明後日の夜にここを出発する事を話した。心の準備が全く伴っていなかったが、別れの言葉はすらすらと口から出てきて自分でも驚く。
「お前、2人にはもう話したのかよ」
マーロンは心配そうにそう言うと、備え付けの机のそばにある椅子に座ったニゲルを見て、何か考え始めた。
「あ、いや、まだなんだ…。どう言ったら良いかなって。それで先にここに来たんだ」
もぞりと布団が動くと、ラモが突然起きあがった。
「絶対反対するに決まってるよぉ。ボクはどうしてニゲルだけ行くのかわからないんだけど、なんでぇ?」
「それは、ちょっと言えないんだけど…」
「う~ん…よくわかんないなぁ。サフィラスさんについて行かなくても、ここに居たら良いじゃん」
ねむそうな目をゴシゴシこすって、目をパチパチしばたいている。
「おい、ラモのあほ!それが多分無理だから行くんだろ?」
「あ、そっかぁ。けど、2人はついて行くって言うんじゃない?離れた事ないんだし」
「…そうなんだよね。けど、連れて行けないんだ。あのさ、2人が付いてこないように協力してくれない?」
「はあ?なにするんだよ」
「てか、具体的にマーロンとボクは何をすればいいの?」
「僕を追いかけてきたら、全力で引き止めて欲しいんだ」
マーロンはあきれたような顔で後ろに寝転んだ。
「…お前は、それでいーのかよ」
「仕方ないんだ…どうしても連れて行けない」
ニゲルだって離れたくはない。けれど、あの2人と自分は一緒にはいられないのだ。離れなければ。
ラモとマーロンは顔を見合わせてどうするとヒソヒソしばらく話していたが、やがてこちらを向いて頷いた。
「いいさ、協力してやる。けど、条件がある」
先に、ヴェシカとラモに会って、明後日この家をサフィラスと出る事を伝えようと考えついたのだ。
本当はきょうだいにまずは言うべきなんだろうけど、決心が中々かたまらない。だから、まずは周りの人に言ってしまえば、マリウス達に言うのも気が楽になるんじゃないか。そんな事をぼんやり思ったのだ。
迷ったものの、やはりそうしようと決めると、再び階段を上がりまずは起きていそうなヴェシカの部屋に行った。
「おはよう、何?どうかした?」
扉を開けてくれたヴェシカは、支度中だったのか、眠そうな出立ちで手に櫛を持っていた。
「ごめん、少しだけ良いかな」
「うん、入る?」
「ありがとう」
ニゲルは女の子の部屋に2人きりでいる事にすこし気まずかったけれど、肝心な事をすぐに伝えた。
「え?サフィラスさんと!?けど、アーラとマリウスはどうするのよ?」
「ウエンさんにはここに置いてもらえるようにお願いして、良いって言ってもらったんだ」
「お父さん、それで良いって?」
ヴェシカは驚いたのか、目を丸めている。
「うん。2人の事は心配しなくていいって。ヴェシカにもお礼を言いにきたんだ…その、少しの間だったけど、ありがとう…」
ちょっと照れくさかったけれど、ニゲルはヴェシカに感謝を伝えたくて精一杯笑顔を浮かべた。
「これからも、どうかアーラ達をよろしく」
「…ニゲル…あんたはそれで、いいの?」
「…決めたんだ」
それ以上何を言ったら良いかわからなくなり、何かを言いかけていたヴェシカを避ける様に、急いで部屋を後にした。
次はラモに会って同じ事を伝えよう。
胸のモヤモヤも、言葉にしてしまえば、霧が晴れるようにスッキリとしてくるものだ。
そうしてラモとマーロンの2人部屋の前まで来た時、いきなりガチャリと木戸が開いた。
「ぅわっ」
思わず驚きのあまり声が出てしまう。
扉を叩こうとした手を宙に浮かせたまま、ニゲルは目の前に無表情で立つマーロンを見た。
「マーロンか、びっくりした…」
「おい。ニゲル、明後日発つのか」
相変わらずにらむ様なするどい目つきだ。
「あ…うん…そうなんだ。今までありがとう」
「どこに行くんだ」
そう言うと、ふいっと部屋の奥に行ってしまう。
これはつまり入ってこいという意味だろうか…。
おそるおそる部屋に踏み込むと、まだ布団にくるまって眠っているラモのそばにマーロンが腰をかけた。
「ラモ!起きろよ!ニゲルが話があるんだとよ」
バンバンと小山になった布団を叩くと、モゾモゾと塊が動いて、やがて顔がピョコっと出てきた。
「んー…やめてよ…マーロン…」
「おきろよ、ったく」
「あ、いいよ、そんな。そのままでラモも聞いて」
ニゲルは2人に向かって、改めて明後日の夜にここを出発する事を話した。心の準備が全く伴っていなかったが、別れの言葉はすらすらと口から出てきて自分でも驚く。
「お前、2人にはもう話したのかよ」
マーロンは心配そうにそう言うと、備え付けの机のそばにある椅子に座ったニゲルを見て、何か考え始めた。
「あ、いや、まだなんだ…。どう言ったら良いかなって。それで先にここに来たんだ」
もぞりと布団が動くと、ラモが突然起きあがった。
「絶対反対するに決まってるよぉ。ボクはどうしてニゲルだけ行くのかわからないんだけど、なんでぇ?」
「それは、ちょっと言えないんだけど…」
「う~ん…よくわかんないなぁ。サフィラスさんについて行かなくても、ここに居たら良いじゃん」
ねむそうな目をゴシゴシこすって、目をパチパチしばたいている。
「おい、ラモのあほ!それが多分無理だから行くんだろ?」
「あ、そっかぁ。けど、2人はついて行くって言うんじゃない?離れた事ないんだし」
「…そうなんだよね。けど、連れて行けないんだ。あのさ、2人が付いてこないように協力してくれない?」
「はあ?なにするんだよ」
「てか、具体的にマーロンとボクは何をすればいいの?」
「僕を追いかけてきたら、全力で引き止めて欲しいんだ」
マーロンはあきれたような顔で後ろに寝転んだ。
「…お前は、それでいーのかよ」
「仕方ないんだ…どうしても連れて行けない」
ニゲルだって離れたくはない。けれど、あの2人と自分は一緒にはいられないのだ。離れなければ。
ラモとマーロンは顔を見合わせてどうするとヒソヒソしばらく話していたが、やがてこちらを向いて頷いた。
「いいさ、協力してやる。けど、条件がある」
0
あなたにおすすめの小説
#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う
釈 余白(しやく)
児童書・童話
ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。
最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。
てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。
てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。
デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?
てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる