最後の魔導師

蓮生

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第2章 旅立ち

別れの時②

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 マリウスとアーラを追いかけていたニゲルは、サフィラスの怪我の処置をしていた部屋から出て、2階に上がる階段の途中でその足を止めていた。
 先に、ヴェシカとラモに会って、明後日この家をサフィラスと出る事を伝えようと考えついたのだ。
 本当はきょうだいにまずは言うべきなんだろうけど、決心が中々かたまらない。だから、まずは周りの人に言ってしまえば、マリウス達に言うのも気が楽になるんじゃないか。そんな事をぼんやり思ったのだ。
 迷ったものの、やはりそうしようと決めると、再び階段を上がりまずは起きていそうなヴェシカの部屋に行った。

「おはよう、何?どうかした?」

 扉を開けてくれたヴェシカは、支度中だったのか、眠そうな出立ちで手にくしを持っていた。

「ごめん、少しだけ良いかな」

「うん、入る?」
「ありがとう」

ニゲルは女の子の部屋に2人きりでいる事にすこし気まずかったけれど、肝心かんじんな事をすぐに伝えた。

「え?サフィラスさんと!?けど、アーラとマリウスはどうするのよ?」

「ウエンさんにはここに置いてもらえるようにお願いして、良いって言ってもらったんだ」

「お父さん、それで良いって?」
 ヴェシカは驚いたのか、目を丸めている。
「うん。2人の事は心配しなくていいって。ヴェシカにもお礼を言いにきたんだ…その、少しの間だったけど、ありがとう…」
 ちょっと照れくさかったけれど、ニゲルはヴェシカに感謝を伝えたくて精一杯笑顔を浮かべた。
「これからも、どうかアーラ達をよろしく」
「…ニゲル…あんたはそれで、いいの?」
「…決めたんだ」

 それ以上何を言ったら良いかわからなくなり、何かを言いかけていたヴェシカを避ける様に、急いで部屋を後にした。
 次はラモに会って同じ事を伝えよう。
 胸のモヤモヤも、言葉にしてしまえば、霧が晴れるようにスッキリとしてくるものだ。

 そうしてラモとマーロンの2人部屋の前まで来た時、いきなりガチャリと木戸が開いた。
「ぅわっ」
 思わず驚きのあまり声が出てしまう。
 扉を叩こうとした手を宙に浮かせたまま、ニゲルは目の前に無表情で立つマーロンを見た。
「マーロンか、びっくりした…」

「おい。ニゲル、明後日発つのか」

 相変わらずにらむ様なするどい目つきだ。

「あ…うん…そうなんだ。今までありがとう」

「どこに行くんだ」
 そう言うと、ふいっと部屋の奥に行ってしまう。
これはつまり入ってこいという意味だろうか…。

 おそるおそる部屋に踏み込むと、まだ布団にくるまって眠っているラモのそばにマーロンが腰をかけた。
「ラモ!起きろよ!ニゲルが話があるんだとよ」
バンバンと小山になった布団を叩くと、モゾモゾと塊が動いて、やがて顔がピョコっと出てきた。
「んー…やめてよ…マーロン…」
「おきろよ、ったく」
「あ、いいよ、そんな。そのままでラモも聞いて」

 ニゲルは2人に向かって、改めて明後日の夜にここを出発する事を話した。心の準備が全く伴っていなかったが、別れの言葉はすらすらと口から出てきて自分でも驚く。

「お前、2人にはもう話したのかよ」
 マーロンは心配そうにそう言うと、備え付けの机のそばにある椅子に座ったニゲルを見て、何か考え始めた。
「あ、いや、まだなんだ…。どう言ったら良いかなって。それで先にここに来たんだ」

 もぞりと布団が動くと、ラモが突然起きあがった。
「絶対反対するに決まってるよぉ。ボクはどうしてニゲルだけ行くのかわからないんだけど、なんでぇ?」
「それは、ちょっと言えないんだけど…」
「う~ん…よくわかんないなぁ。サフィラスさんについて行かなくても、ここに居たら良いじゃん」
 ねむそうな目をゴシゴシこすって、目をパチパチしばたいている。
「おい、ラモのあほ!それが多分無理だから行くんだろ?」
「あ、そっかぁ。けど、2人はついて行くって言うんじゃない?離れた事ないんだし」
「…そうなんだよね。けど、連れて行けないんだ。あのさ、2人が付いてこないように協力してくれない?」
「はあ?なにするんだよ」
「てか、具体的にマーロンとボクは何をすればいいの?」
「僕を追いかけてきたら、全力で引き止めて欲しいんだ」
 マーロンはあきれたような顔で後ろに寝転んだ。
「…お前は、それでいーのかよ」

「仕方ないんだ…どうしても連れて行けない」
 ニゲルだって離れたくはない。けれど、あの2人と自分は一緒にはいられないのだ。離れなければ。

 ラモとマーロンは顔を見合わせてどうするとヒソヒソしばらく話していたが、やがてこちらを向いて頷いた。

「いいさ、協力してやる。けど、条件がある」
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