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第3章 エイレン城への道
ニス湖畔、アルカット城⑤
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***
あまりにも自然に部屋に入ってきたから、ニゲルはサフィラスの姿を見るなり、安心したのと嬉しさで笑みが抑えられなかった。
しかし後に続いて入ってきた人物を見た次の瞬間、その表情はビシリと固まってしまったのであった。
「ニゲル」
そう呼ばれても、今の状況におどろいて声も出ない。
なぜなら、サフィラスの横には体格のいい、そして身なりのすごく良い男性が立っているからだ。
その人がじいっとこちらを見ている。
まさか。
まさかだけど、そのまさかかもしれない。
ニゲルはその人を見上げて、あぜんとしていた。
男性は、ウエンさんと同じくらいか、それより体格が良さそうな感じで、白髪混じりだけど、強そうな目つきに背も高く、まさしく普段からその上等な服を着なれている感じだ。
何よりすごく貫禄があった。
その人がいるだけでとにかく周りの空気がピンと張る感じだ。
じっさいニゲルもさっきまでだるいとフラフラしていた身体の背筋が、急にピンとのびた。こっちをまじまじと見ているけど、とても畏れ多くて、話しかけられる雰囲気ではない。
今までそんな普通じゃない人に会った事もないから、もうどうするべきかが、全く分からないのだ。
「目がさめたと聞いて来たんだ。心配したよ…体調はどうだい?」
サフィラスはそんなニゲルのことなどおかまいなしに、腰かけている寝台に近づくと頭をそっとなでてくれる。
「うん…勝手に馬車を出てごめんなさい…!」
ニゲルもサフィラスの無事を確認できて、ようやくホッとした。
しかし、となりのその人が気になり、やや目が泳いでしまう。
「…過ぎた事だ。しかしニゲルが倒れていたのを見つけた時は、気が気じゃなかったよ。もうあんな無茶はやめてくれ…」
「本当にごめんなさい…けど、御者の人が首をしめられてて…」
木の器を持つ手にぎゅっと力が入る。
言い訳は良く無いとは思いながらも、つい口から思っていたことが出てしまう。
「僕が助けないと死んじゃうと思って…」
「ニゲル…」
「ふむ。君はなかなか勇気がある」
急にサフィラスのとなりから低い声が出てきて、ビクッと体が反応する。
(うわぁ…!)
…話しかけられているんだ!
そう思うと、ついそちらを見てしまい、ばっちり目が合う。
「……。」
…なにか、とにかくなんでもいいから話さなければ!
「…あ…あの!手当てをしてくださり、ありがとうございます…」
「……。」
(あぁ…なんか違ったかも…)
自己紹介の方が先だろ!
そう思うものの、口から出た言葉が取り消せるわけではない。
「ニゲル。この方はアルカット城主のアラン様だ。アルカット城は湖のそばに建っている、とても美しく、それでいて堅牢な城だ。ここで働く騎士達も強く勇ましいんだよ。あとで城内を案内してくださるそうだ」
そう言われてもう一度アラン様の方を見ると、ニゲルを真っすぐに見てうなずいた。
「アラン・ダードだ。サフィラスとは旧知の仲でな。ここは安全な場所だと思っていい。訓練を必要としているなら、いつでもとどまっていいぞ。鍛えてやる」
アラン様はこちらに右手を差し出している。
ニゲルはその手をさわってよいものか一瞬考えたが、悩むのも失礼にあたるのではと思ってそっとにぎり返した。
大きな手のひらはたくさんの剣だこができていて、かたくて、そしてにぎり具合が強すぎてちょっと痛かった。
「はじめまして…僕はニゲルです。サフィラスの弟子になりました。けど、剣もなにも習っていないので、これからがんばります」
アラン様はニヤッと笑うと、ニゲルの肩を盛大に叩いた。
そのせいで身体が傾いで、うわっ!という声が上がってしまった。
「おお!なかなか鍛えがいがありそうだな!ニゲル、親父はヴェントか?そうだろう!サフィラス!」
サフィラスはふりむいたアラン様に苦笑いを浮かべた。
「そうか。まさか子がいたとはな…それにしても若い時のあいつにそっくりじゃないか!なつかしい」
アラン様はとまどうニゲルをよそに、嬉しそうにほおをゆるませると、まるで昔から知っていると言わんばかりに頭をぐしゃぐしゃとなでまわしてくる。
ぐわんぐわんと揺れる頭で、ニゲルはこれは一体どういうことなのだろうかと考える。
「ところでニゲル!いくつだ?」
「11歳です…あ、もうすこしで12歳になります」
「そうかそうか!12なら、体を鍛えねばな。もう遅いくらいだ。しっかりサフィラスから学ぶのだぞ」
「はい!」
ニゲルの声にサフィラスはすこし笑むと、隣に座る。
「ニゲル、今日は体調の事もあるから1日ここに滞在するが、明日、また出発する。大丈夫かい?」
サフィラスは心配そうに顔をのぞき込んできたけど、ニゲルは明るく笑った。
「大丈夫!心配しないで、先を急ごう」
「それと、あの短剣だが…」
申し訳なさそうなまゆが、困ったと言いたげにさがる。
そういえば、あの短剣はどこにいったのだろうか。
「まさかあんなことになるとは思わなくてな…お前に無断でやったのは本当にすまないが、城内の鍛冶場でちょっと加工をさせてもらった」
「…加工?ていうか、あんな強力な武器とは知らなかったからびっくりしたよ!僕にはちょっとあつかえないよ!とつぜん燃えちゃって大変だったんだ…。サフィラスが使って」
「いや、それは無理だよ」
「なんで?」
「これは、ニゲルが持つべき物なんだ」
そういうと、サフィラスはあの短剣を背中側に差していたのか、マントに手を入れ、腰のあたりから抜いて出してきた。
「あれ?大きさが戻ってる」
最初にもらった時の大きさに元通りなおっていて、見た目も変わらない。
「やはりそうか」
「え?」
「いや、ニゲルが倒れていた辺りの燃えた範囲を見たが、短剣の威力ではないとおもっていてな。長くなったのだね?」
「…うん。サフィラスが持ってるその剣くらいの長さになったよ」
「そうか…持ち主により形が変わるのだな…」
「で、どこを加工したの?」
「ああ、それはここだ」
サフィラスは柄頭をコツコツと指で指した。
「制御の石を入れた」
みれば、確かに緑色の豆粒ほどの石がうめ込まれている。
「制御って、なんのこと?」
「この石はニゲルが剣をふるうときにその力を押さえるんだ」
「こんな小さな石が!?」
ニゲルはおどろいて目をひん剥いていた。
「そうだよ。これは砂金石と言う。小さくても私の力が込められているから、割れたりしないはず。ニゲルが力をうまくコントロールできるようになるまではこれをはめておこうと思ってね」
おそるおそる手に取ってみると、前と違って今回は熱さを感じない。前は持った瞬間に温かさを感じたが、今はむしろひんやりしているくらいだ。
「…本当だ…まえと違って冷たい…」
「…今の姿をニゲルは鏡で見ていないから分からないだろうけど、私にははっきりとニゲルの周りにアダマの対流が見える。それも、全身をおおうほどのすごい量だ。身体が熱いのはそのせいもある。しばらくはつらいだろうが、なれるしかない…調子が悪い時は迷わず言ってくれ。いいね?」
「うん…どうりで熱を発散したい気分になるわけだね」
「発散したい?とは?」
またしてもアラン様に話しかけられる。
「…うーん。なんて言うか…熱いもやもやを飛ばして消したくなる感じです…そうすると楽になりそう…」
そう言ったとたん、アラン様は顔を青くした。
「おいおい…ここでは止めてくれ!城が崩れる!」
************
いつも読んでくれている少年少女の皆さん。そして大人の皆さん。ありがとうございます。
前回に引き続き、無料画像を持ってきたり作ったりしました。
西洋の剣の説明が足りていないので、参考にどうぞ!
今回出てきた石は砂金石(アベンチュリン、またはさきんすいしょうとも呼ばれます)。ストレスを緩和させたり落ち着きを取り戻させたり、精神を安定させる効果があるパワーストーンのようです。
内部はきらきらとした、ラメをちりばめたような輝きがあるそうですね。(下の写真はちょっとラメが入ってなくてなんか違いますけど…ヒットするのがこれしかなかったのでごめんなさい)
あまりにも自然に部屋に入ってきたから、ニゲルはサフィラスの姿を見るなり、安心したのと嬉しさで笑みが抑えられなかった。
しかし後に続いて入ってきた人物を見た次の瞬間、その表情はビシリと固まってしまったのであった。
「ニゲル」
そう呼ばれても、今の状況におどろいて声も出ない。
なぜなら、サフィラスの横には体格のいい、そして身なりのすごく良い男性が立っているからだ。
その人がじいっとこちらを見ている。
まさか。
まさかだけど、そのまさかかもしれない。
ニゲルはその人を見上げて、あぜんとしていた。
男性は、ウエンさんと同じくらいか、それより体格が良さそうな感じで、白髪混じりだけど、強そうな目つきに背も高く、まさしく普段からその上等な服を着なれている感じだ。
何よりすごく貫禄があった。
その人がいるだけでとにかく周りの空気がピンと張る感じだ。
じっさいニゲルもさっきまでだるいとフラフラしていた身体の背筋が、急にピンとのびた。こっちをまじまじと見ているけど、とても畏れ多くて、話しかけられる雰囲気ではない。
今までそんな普通じゃない人に会った事もないから、もうどうするべきかが、全く分からないのだ。
「目がさめたと聞いて来たんだ。心配したよ…体調はどうだい?」
サフィラスはそんなニゲルのことなどおかまいなしに、腰かけている寝台に近づくと頭をそっとなでてくれる。
「うん…勝手に馬車を出てごめんなさい…!」
ニゲルもサフィラスの無事を確認できて、ようやくホッとした。
しかし、となりのその人が気になり、やや目が泳いでしまう。
「…過ぎた事だ。しかしニゲルが倒れていたのを見つけた時は、気が気じゃなかったよ。もうあんな無茶はやめてくれ…」
「本当にごめんなさい…けど、御者の人が首をしめられてて…」
木の器を持つ手にぎゅっと力が入る。
言い訳は良く無いとは思いながらも、つい口から思っていたことが出てしまう。
「僕が助けないと死んじゃうと思って…」
「ニゲル…」
「ふむ。君はなかなか勇気がある」
急にサフィラスのとなりから低い声が出てきて、ビクッと体が反応する。
(うわぁ…!)
…話しかけられているんだ!
そう思うと、ついそちらを見てしまい、ばっちり目が合う。
「……。」
…なにか、とにかくなんでもいいから話さなければ!
「…あ…あの!手当てをしてくださり、ありがとうございます…」
「……。」
(あぁ…なんか違ったかも…)
自己紹介の方が先だろ!
そう思うものの、口から出た言葉が取り消せるわけではない。
「ニゲル。この方はアルカット城主のアラン様だ。アルカット城は湖のそばに建っている、とても美しく、それでいて堅牢な城だ。ここで働く騎士達も強く勇ましいんだよ。あとで城内を案内してくださるそうだ」
そう言われてもう一度アラン様の方を見ると、ニゲルを真っすぐに見てうなずいた。
「アラン・ダードだ。サフィラスとは旧知の仲でな。ここは安全な場所だと思っていい。訓練を必要としているなら、いつでもとどまっていいぞ。鍛えてやる」
アラン様はこちらに右手を差し出している。
ニゲルはその手をさわってよいものか一瞬考えたが、悩むのも失礼にあたるのではと思ってそっとにぎり返した。
大きな手のひらはたくさんの剣だこができていて、かたくて、そしてにぎり具合が強すぎてちょっと痛かった。
「はじめまして…僕はニゲルです。サフィラスの弟子になりました。けど、剣もなにも習っていないので、これからがんばります」
アラン様はニヤッと笑うと、ニゲルの肩を盛大に叩いた。
そのせいで身体が傾いで、うわっ!という声が上がってしまった。
「おお!なかなか鍛えがいがありそうだな!ニゲル、親父はヴェントか?そうだろう!サフィラス!」
サフィラスはふりむいたアラン様に苦笑いを浮かべた。
「そうか。まさか子がいたとはな…それにしても若い時のあいつにそっくりじゃないか!なつかしい」
アラン様はとまどうニゲルをよそに、嬉しそうにほおをゆるませると、まるで昔から知っていると言わんばかりに頭をぐしゃぐしゃとなでまわしてくる。
ぐわんぐわんと揺れる頭で、ニゲルはこれは一体どういうことなのだろうかと考える。
「ところでニゲル!いくつだ?」
「11歳です…あ、もうすこしで12歳になります」
「そうかそうか!12なら、体を鍛えねばな。もう遅いくらいだ。しっかりサフィラスから学ぶのだぞ」
「はい!」
ニゲルの声にサフィラスはすこし笑むと、隣に座る。
「ニゲル、今日は体調の事もあるから1日ここに滞在するが、明日、また出発する。大丈夫かい?」
サフィラスは心配そうに顔をのぞき込んできたけど、ニゲルは明るく笑った。
「大丈夫!心配しないで、先を急ごう」
「それと、あの短剣だが…」
申し訳なさそうなまゆが、困ったと言いたげにさがる。
そういえば、あの短剣はどこにいったのだろうか。
「まさかあんなことになるとは思わなくてな…お前に無断でやったのは本当にすまないが、城内の鍛冶場でちょっと加工をさせてもらった」
「…加工?ていうか、あんな強力な武器とは知らなかったからびっくりしたよ!僕にはちょっとあつかえないよ!とつぜん燃えちゃって大変だったんだ…。サフィラスが使って」
「いや、それは無理だよ」
「なんで?」
「これは、ニゲルが持つべき物なんだ」
そういうと、サフィラスはあの短剣を背中側に差していたのか、マントに手を入れ、腰のあたりから抜いて出してきた。
「あれ?大きさが戻ってる」
最初にもらった時の大きさに元通りなおっていて、見た目も変わらない。
「やはりそうか」
「え?」
「いや、ニゲルが倒れていた辺りの燃えた範囲を見たが、短剣の威力ではないとおもっていてな。長くなったのだね?」
「…うん。サフィラスが持ってるその剣くらいの長さになったよ」
「そうか…持ち主により形が変わるのだな…」
「で、どこを加工したの?」
「ああ、それはここだ」
サフィラスは柄頭をコツコツと指で指した。
「制御の石を入れた」
みれば、確かに緑色の豆粒ほどの石がうめ込まれている。
「制御って、なんのこと?」
「この石はニゲルが剣をふるうときにその力を押さえるんだ」
「こんな小さな石が!?」
ニゲルはおどろいて目をひん剥いていた。
「そうだよ。これは砂金石と言う。小さくても私の力が込められているから、割れたりしないはず。ニゲルが力をうまくコントロールできるようになるまではこれをはめておこうと思ってね」
おそるおそる手に取ってみると、前と違って今回は熱さを感じない。前は持った瞬間に温かさを感じたが、今はむしろひんやりしているくらいだ。
「…本当だ…まえと違って冷たい…」
「…今の姿をニゲルは鏡で見ていないから分からないだろうけど、私にははっきりとニゲルの周りにアダマの対流が見える。それも、全身をおおうほどのすごい量だ。身体が熱いのはそのせいもある。しばらくはつらいだろうが、なれるしかない…調子が悪い時は迷わず言ってくれ。いいね?」
「うん…どうりで熱を発散したい気分になるわけだね」
「発散したい?とは?」
またしてもアラン様に話しかけられる。
「…うーん。なんて言うか…熱いもやもやを飛ばして消したくなる感じです…そうすると楽になりそう…」
そう言ったとたん、アラン様は顔を青くした。
「おいおい…ここでは止めてくれ!城が崩れる!」
************
いつも読んでくれている少年少女の皆さん。そして大人の皆さん。ありがとうございます。
前回に引き続き、無料画像を持ってきたり作ったりしました。
西洋の剣の説明が足りていないので、参考にどうぞ!
今回出てきた石は砂金石(アベンチュリン、またはさきんすいしょうとも呼ばれます)。ストレスを緩和させたり落ち着きを取り戻させたり、精神を安定させる効果があるパワーストーンのようです。
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