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第3章 エイレン城への道
かれを守る者 ⑤
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「あの…。背中って、本当に前のけがの手当て?」
サフィラスの足音が遠のいたのを確認して、ニゲルはアビーに声をかけた。
アビーはニゲルの足のすり傷の当て布を変える手を止めて、伏せていたまぶたを上げる。
「…えぇ。そうです」
「サフィラスの背中の状態は良くないんですか?」
「…いえ…そういうわけでは…」
アビーはゆるく首をふりながら、ぎこちなく顔にほほえみを浮かべた。
何か歯切れの悪い言い方に、ニゲルは眉をしかめる。
「じゃあ、どうして僕には見せられないんだろう…。なんで…。アビーは何か知ってますか?」
「私ですか…?さぁ…。でも、サフィラス様は高名な魔導師ですから、そうそう弱みを誰かに見せられないのでは…ないかという気はします…」
アビーの率直な意見に、ニゲルは納得した。
「弱み…。僕が、頼りにならないからだね…。きっと…」
「そんなことありませんよ」
アビーが疑問そうに首をかしげる。
「でも、頼りにならないのは本当だ。だから、いつもサフィラスは一人で無茶をしてるんだ。僕が子供だし、なんの頼りにもならないやつだから…。なさけないよ…」
「でも、サフィラス様はなんだか生き生きしていらっしゃるみたいですよ」
「生き生き?」
「はい。アラン様がそうおっしゃってました。死にそうな顔をいつもしていたのに、今回は目が生き生きしていて、久しぶりに笑った顔を見た、と」
「え?アラン様はサフィラスの笑った顔をずっと見てなかったってこと?」
「えぇ…そういう事になるかと。ですから、お弟子様がいて、なんだかんだ、毎日張り合いがあるんだろうとおっしゃってましたよ」
「…う…お弟子様って、それやめて…恥ずかしい…です…」
「お弟子様とお呼びしたらいけませんか」
くりくりとした瞳がぱちぱちまばたいて、ニゲルを見つめている。
彼女の視線をかんじるとどうにも顔に熱が集まる…。
「…恥ずかしいです!それは!…僕は名ばかりで、まだ何も学んでないから」
「何も学んでない?でも…。ドラゴンを呼んだってみんな騒いでましたよ…」
アビーは手当てを終えて薬の置かれた机を片付け始める。
「ぼくが!?えぇっ??」
「はい。アラン様も将来ドラゴンライダーになれるかもしれないって…」
「な、なんでそんな事を…」
確かに湖ではドラゴンに呼ばれているような気はした。それに、目が合ったけど食べられなかったから、少なくとも敵とは思われていないだろう。だけど、だからと言って、好かれているとは考えにくい。
サフィラスからも死ぬところだったと言われたくらいだから、気に食わないけど、生かしておいてやるといった所だろう。
(実際ドラゴンにはすごく怖い顔ですごまれたし…。僕が石を投げたり湖に入ったり、色々余計な事をしたから腹を立てたんだろうな…)
そう思って遠目でぼんやりする。
相手はずっと湖に棲んでいる特別な生き物だ。やられて嫌な事くらい想像がついただろうに、なんでそんな失礼な事を、してしまったのか。
「けれどアラン様はサフィラス様に叱られてましたね。余計な事を吹き込まないでくださいって。でも私は本当にドラゴンライダーになれそうな方だと思いました!」
色々考えていた頭に急に嬉しそうな声が入る。
「だ、だれが?」
「もちろん、お弟子様です!」
キラキラとした瞳は好奇心でいっぱいで、ニゲルは思わず顔を背けた。
「そんな事ない…それに、もう無茶はしないって約束したから、もう湖には入らないよ」
「え?ご存知ないんですか?」
アビーは至極おどろいたような顔をして、手に持つ薬品を壁に備え付けの棚に戻す。
「アラン様の一族ではドラゴンを呼べるのはドラゴンライダーのみと言われています。それにライダーは100年に一度しか現れないと。お弟子様がドラゴンを呼んだのでないならば、きっとそれはドラゴンが認めて自ら姿を表したという事です。私達はここでずっと働いていますが、この湖にドラゴンが本当にいる事さえ、信じられずに今日まで来ました。それほど、姿を現す事がないのです」
「じゃあ、誰も見た事がなかったんだ…」
「そうです!だから、大騒ぎでしたよ!お弟子様はサフィラス様よりもすごい大魔導師になられるに違いありませんよ!それに、アラン様が家宝を授けた方ですし!」
「…そう、なんだ。…けど、僕は明日ここを出発すれば、もう二度とここには来れないかもしれない。だから、もう、ドラゴンにも会うことは…」
「え?二度と来れないとは…?」
サフィラスの足音が遠のいたのを確認して、ニゲルはアビーに声をかけた。
アビーはニゲルの足のすり傷の当て布を変える手を止めて、伏せていたまぶたを上げる。
「…えぇ。そうです」
「サフィラスの背中の状態は良くないんですか?」
「…いえ…そういうわけでは…」
アビーはゆるく首をふりながら、ぎこちなく顔にほほえみを浮かべた。
何か歯切れの悪い言い方に、ニゲルは眉をしかめる。
「じゃあ、どうして僕には見せられないんだろう…。なんで…。アビーは何か知ってますか?」
「私ですか…?さぁ…。でも、サフィラス様は高名な魔導師ですから、そうそう弱みを誰かに見せられないのでは…ないかという気はします…」
アビーの率直な意見に、ニゲルは納得した。
「弱み…。僕が、頼りにならないからだね…。きっと…」
「そんなことありませんよ」
アビーが疑問そうに首をかしげる。
「でも、頼りにならないのは本当だ。だから、いつもサフィラスは一人で無茶をしてるんだ。僕が子供だし、なんの頼りにもならないやつだから…。なさけないよ…」
「でも、サフィラス様はなんだか生き生きしていらっしゃるみたいですよ」
「生き生き?」
「はい。アラン様がそうおっしゃってました。死にそうな顔をいつもしていたのに、今回は目が生き生きしていて、久しぶりに笑った顔を見た、と」
「え?アラン様はサフィラスの笑った顔をずっと見てなかったってこと?」
「えぇ…そういう事になるかと。ですから、お弟子様がいて、なんだかんだ、毎日張り合いがあるんだろうとおっしゃってましたよ」
「…う…お弟子様って、それやめて…恥ずかしい…です…」
「お弟子様とお呼びしたらいけませんか」
くりくりとした瞳がぱちぱちまばたいて、ニゲルを見つめている。
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「…恥ずかしいです!それは!…僕は名ばかりで、まだ何も学んでないから」
「何も学んでない?でも…。ドラゴンを呼んだってみんな騒いでましたよ…」
アビーは手当てを終えて薬の置かれた机を片付け始める。
「ぼくが!?えぇっ??」
「はい。アラン様も将来ドラゴンライダーになれるかもしれないって…」
「な、なんでそんな事を…」
確かに湖ではドラゴンに呼ばれているような気はした。それに、目が合ったけど食べられなかったから、少なくとも敵とは思われていないだろう。だけど、だからと言って、好かれているとは考えにくい。
サフィラスからも死ぬところだったと言われたくらいだから、気に食わないけど、生かしておいてやるといった所だろう。
(実際ドラゴンにはすごく怖い顔ですごまれたし…。僕が石を投げたり湖に入ったり、色々余計な事をしたから腹を立てたんだろうな…)
そう思って遠目でぼんやりする。
相手はずっと湖に棲んでいる特別な生き物だ。やられて嫌な事くらい想像がついただろうに、なんでそんな失礼な事を、してしまったのか。
「けれどアラン様はサフィラス様に叱られてましたね。余計な事を吹き込まないでくださいって。でも私は本当にドラゴンライダーになれそうな方だと思いました!」
色々考えていた頭に急に嬉しそうな声が入る。
「だ、だれが?」
「もちろん、お弟子様です!」
キラキラとした瞳は好奇心でいっぱいで、ニゲルは思わず顔を背けた。
「そんな事ない…それに、もう無茶はしないって約束したから、もう湖には入らないよ」
「え?ご存知ないんですか?」
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「じゃあ、誰も見た事がなかったんだ…」
「そうです!だから、大騒ぎでしたよ!お弟子様はサフィラス様よりもすごい大魔導師になられるに違いありませんよ!それに、アラン様が家宝を授けた方ですし!」
「…そう、なんだ。…けど、僕は明日ここを出発すれば、もう二度とここには来れないかもしれない。だから、もう、ドラゴンにも会うことは…」
「え?二度と来れないとは…?」
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