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第3章 エイレン城への道
かれを守る者 ⑥
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アビーの顔がくもる。
ニゲルはこわばった表情のアビーを見た。
「たぶん、これから先、ここには来れないと思って…。僕たちはエイレン城に向かっているんだ。けど、そこから先、どうなるか…僕にもわからない。僕はいつ死ぬか分からないし、サフィラスも…」
「え…」
くりくりした目が大きく見開かれた。
「サフィラスは追われているんだ」
…自分もだけど…でも、そこは言わなかった。
「そ、それなら!なおのこと、ドラゴンライダーになるべきです!」
「なんで」
「だって!ドラゴンライダーはどこにいてもドラゴンを呼べるのだそうです。ドラゴンは、唯一のライダーの声だけは、聴くのだとか。もちろん地上の生物では最強の獣です!」
「なにそれ。ドラゴンは湖から離れられるの?」
「…はい!アラン様からはそう聞いています!アラン様の一族には、ドラゴンに関する書物があるそうで。初代のドラゴンライダーは今から500年近く前に現れたそうですが、その方はドラゴンを常に従えていたそうです」
「…へぇ…」
これはアラン様に色々聞いてみる必要があるかもしれない。
正直に話してくれるとは限らないけれど。
「あの…私はそろそろ下がらせていただきますね」
「あ、サフィラスの手当てをするんだね」
彼女はうなずいた。
「はい。お待ちでしょうから」
「えっと、アビー…さん。アラン様はまだ執務室に?」
「いえ、おそらく寝室ではないでしょうか。もう真夜中ですから」
「場所をおしえてくれないかな?ちょっと今夜話したい事があって…」
「えっと…そうですね…ちょっとロジアン様に聞いてみないと…」
ロジアン?
ロジアンさんとは誰のことだろう?
アビー達使用人のリーダーかなんかだろうか。
「わかった。じゃあ、そのロジアン様って人のところに行きたいんだけど、場所知ってる?」
アビーは迷っているのか、小さくて細い指で前掛けをいじりだした。
「えっと…」
「だめ?」
「いえ!私が聞いてまいります!少しお待ちください!」
アビーが消えてからしばらく経ったけれど、彼女はなかなか戻らなかった。ニゲルは静かな部屋で再びうつらうつらしはじめていた。
コンコン。
「ロジアンです」
落ち着きのある優しい声にハッとしたニゲルは、寝台から起き上がると、どうぞと声をかける。
「お弟子様。私をお呼びだとうかがいましたが」
「あ…」
入ってきた人は、朝に薬を持って来てくれた人だった。白いまゆが印象的なおじいさん。上品な仕草で、頭の先から足の先まで身綺麗にしているのがニゲルにもよくわかる。
「おじいさんが、ロジアンさんだったんだ…」
「えぇ。そう言えば、名を名乗っておりませんでした」
ロジアンさんはきれいなお辞儀をしてくれる。
「家令のロジアンと申します」
「ううん。いいんです。ぼくこそ、起こしちゃってごめんなさい」
「とんでもございません。どうなされましたか?」
「あの、アラン様に聞きたいことがあって。今から少しだけで良いので、アラン様のお部屋に連れて行ってくれませんか?」
ロジアンさんは、首をかしげる。
「よろしければ、どんなお話かうかがっても?」
「はい。ドラゴンライダーについてです」
それをきいて、白いまゆをハの字に下げて、あぁ、と言った。
「なるほど。たしかに…。では、アラン様に聞いて参ります。しばしお待ちいただいても?」
「はい!」
ニゲルはこわばった表情のアビーを見た。
「たぶん、これから先、ここには来れないと思って…。僕たちはエイレン城に向かっているんだ。けど、そこから先、どうなるか…僕にもわからない。僕はいつ死ぬか分からないし、サフィラスも…」
「え…」
くりくりした目が大きく見開かれた。
「サフィラスは追われているんだ」
…自分もだけど…でも、そこは言わなかった。
「そ、それなら!なおのこと、ドラゴンライダーになるべきです!」
「なんで」
「だって!ドラゴンライダーはどこにいてもドラゴンを呼べるのだそうです。ドラゴンは、唯一のライダーの声だけは、聴くのだとか。もちろん地上の生物では最強の獣です!」
「なにそれ。ドラゴンは湖から離れられるの?」
「…はい!アラン様からはそう聞いています!アラン様の一族には、ドラゴンに関する書物があるそうで。初代のドラゴンライダーは今から500年近く前に現れたそうですが、その方はドラゴンを常に従えていたそうです」
「…へぇ…」
これはアラン様に色々聞いてみる必要があるかもしれない。
正直に話してくれるとは限らないけれど。
「あの…私はそろそろ下がらせていただきますね」
「あ、サフィラスの手当てをするんだね」
彼女はうなずいた。
「はい。お待ちでしょうから」
「えっと、アビー…さん。アラン様はまだ執務室に?」
「いえ、おそらく寝室ではないでしょうか。もう真夜中ですから」
「場所をおしえてくれないかな?ちょっと今夜話したい事があって…」
「えっと…そうですね…ちょっとロジアン様に聞いてみないと…」
ロジアン?
ロジアンさんとは誰のことだろう?
アビー達使用人のリーダーかなんかだろうか。
「わかった。じゃあ、そのロジアン様って人のところに行きたいんだけど、場所知ってる?」
アビーは迷っているのか、小さくて細い指で前掛けをいじりだした。
「えっと…」
「だめ?」
「いえ!私が聞いてまいります!少しお待ちください!」
アビーが消えてからしばらく経ったけれど、彼女はなかなか戻らなかった。ニゲルは静かな部屋で再びうつらうつらしはじめていた。
コンコン。
「ロジアンです」
落ち着きのある優しい声にハッとしたニゲルは、寝台から起き上がると、どうぞと声をかける。
「お弟子様。私をお呼びだとうかがいましたが」
「あ…」
入ってきた人は、朝に薬を持って来てくれた人だった。白いまゆが印象的なおじいさん。上品な仕草で、頭の先から足の先まで身綺麗にしているのがニゲルにもよくわかる。
「おじいさんが、ロジアンさんだったんだ…」
「えぇ。そう言えば、名を名乗っておりませんでした」
ロジアンさんはきれいなお辞儀をしてくれる。
「家令のロジアンと申します」
「ううん。いいんです。ぼくこそ、起こしちゃってごめんなさい」
「とんでもございません。どうなされましたか?」
「あの、アラン様に聞きたいことがあって。今から少しだけで良いので、アラン様のお部屋に連れて行ってくれませんか?」
ロジアンさんは、首をかしげる。
「よろしければ、どんなお話かうかがっても?」
「はい。ドラゴンライダーについてです」
それをきいて、白いまゆをハの字に下げて、あぁ、と言った。
「なるほど。たしかに…。では、アラン様に聞いて参ります。しばしお待ちいただいても?」
「はい!」
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