僕とあなたの賞味期限の恋

光猫

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第3章ー春

チグハグなオモイ

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 年末、奏多はコタツで暖をとりながらカウントダウンを今か今かと待っている人達が写っているテレビを眺めていた。
結局、洋平とは授業では会うものの連絡は一切なかった。
「何そんなに落ち込んでるの、もうすぐで年が明けるっていうのに」
「いや、別に落ち込んでないよ…」

「…3・2・1ハッピーニューイヤー!皆さん、新しい年が始まり…」

 除夜の鐘がなり、家族で一言挨拶を交わし、みんなで餅を食べた。ボーッとしている奏多に母親が口を開いた。
「奏多、今年は私達と初詣いくの?」
「ん~多分…」
 テレビを見ながら餅を食べていると、携帯から着信音が鳴った。見てみると洋平からだった。

『あけましておめでとうございます。急にメールしてごめんね、もし日下部君が大丈夫なら一緒に初詣行かないかい?』

奏多はすぐに返信をした

『あけましておめでとうございます!僕は大丈夫です!ぜひ行きたいです』

さっきまで肌寒かったはずなのに頬が火照るくらい暑くなっていた。数分たち返信が返ってきた。

『よかった。じゃあ、5時頃に秋明菊神社前で集合しよう、』

『分かりました、着いたらまた連絡しますね!』

(やばい、なんてこった、椿先生から初詣誘われた…嬉しすぎる)

「お母さん、僕初詣誘われたからその人と行くからね」
「あら、そうなの。何時に家出るの?」
「4時半くらいにはでるよ」
「お母さん達4時くらいに出るからね」

 奏多はコタツの上のみかんを食べながらテレビを見ていたがいつの間にか眠りについていた…

プルルル…プルルル…

 電話の音で奏多は目が覚めた。寝ぼけた状態で電話に出た。
「もしもし?俺神社に着いたんだけど、日下部君はもう着いてる?」
「…」
「日下部君…?」
「ごめんなさい寝てました!!急いで向かいます!!」
(やばいやばいやばい、なんてことしてるんだ自分馬鹿かよ。なんで寝過ごすんだよこんな大事な事なのに)
 奏多は急いで服を着替え、ボサボサの頭で家を飛び出した。

5時10分秋明菊神社前

「椿…先生…遅れてごめん…なさい…」
「俺は大丈夫だけど、そんなに急がなくても大丈夫だったのに、少し公園のベンチで休もうか」
「ごめんなさい…」
奏多は申し訳ないまま少し息を整え、洋平の後をついて歩いた。
「あそこのベンチ空いてるねあそこに座ってちょっと待ってて」
「分かりました、」
奏多は洋平に言われてベンチに腰をかけた。少し経ってペットボトルを持った洋平が来た。
「お茶とコーヒーどっちがいい?」
「じゃあコーヒーを」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
(もうほんとに申し訳ない。どうしてこうなるんだろう、)
洋平は奏多の横に腰をかけお茶を1口飲んだ。
「あの椿先生、ほんとにごめんなさい」
「気にしないで、落ち着いた?」
「はい、おかげさまで」
「それなら良かった。混んできたしそろそろお参り行くか」
洋平は立ち上がりつられて奏多も立ち上がった。神社に向かい2人でお参りをしておみくじを引いた。
「日下部君どうだった?」
「中吉でしたよ、椿先生はどうでしたか?」
「俺はね、小吉だった…」
「…ッアハハハハ」
「そんなに笑わないでよ、」
「ごめんなさい…笑」
(恋愛運は…新しい出会いあり。思い続ければ吉か…椿先生のは、待ち人あり。正直になれば吉…)

「おみくじも引いたし、そろそろ行くか、」
「あ、はい」
(え、もう帰るのか…まぁそんなもんだよね…)
神社を出て奏多は洋平の隣を歩いた。大通りの脇の道に入りシャッター街まで歩いてきた頃洋平が口を開いた。
「そういえばさ、ちょっと行きたいところがあるんだけどまだ時間大丈夫?」
「全然大丈夫です!」
「よかった、あと少しだから…あ、ここだここだ」
「ここは…?」
「綺麗でしょ?ここから街がよく見渡せる、この前見つけたんだ」
「すごい綺麗」
「日下部君…」
「はい、何でですk…」
 振り向いた瞬間、目の前の視界に洋平が写ったと同時に唇に柔らかい何かが触れた。奏多は心臓が飛び出すのではないかと言うくらい激しい鼓動を打った。
「日下部君、俺と付き合おう」
何が起きたのか分からず頭が真っ白になる中、じーんと鼻の奥が痺れ奏多は自分が泣いていることに気づいた。洋平は奏多の頬に手を添えて涙を拭い微笑んだ。
「待たせてごめんね」

1月8日

 その後はお互い予定が合わず、日付だけが過ぎていき、学校が始まった。いつもなら行きたくない学校も今日からは違った。

(あぁ、ついに椿先生と…嬉しいなぁ、結局冬休みはあの日しか会えなかったからな…早く会いたいな…)

 わくわくしながら大学の門を通った。今日は川凪先生の心理学の授業があり、奏多は駆け足で教室に向かった。
 教室に入ると椿先生の姿が見えた。声をかけようと思ったが川凪先生と話していたので声をかけずに席に座った。

 結局話せないまま学校が終わった。奏多はいつもの珈琲屋に向かった。店に入りいつもの席に座り、コーヒーを飲んだ。今日、外は寒く、お店の中は暖かかったのもありうたた寝してしまった。
「…君、奏多君」
(夢…?椿先生の声が聞こえる…)
体を起こし声のする方に顔を向けるとそこには洋平の姿があった。
「おはよう奏多君、よく眠れたかい?」
「ん…?!椿先生、なんでここに?」
「奏多君いつもここのお店いたからさ今日もいるかなって、今日話せなかったからさ」
「僕も話したかったです。そういえば授業が始まる前に川凪先生と何を話していたんですか?」
「あぁ、この前研究の発表会があったんだけど俺の研究に興味を持ってぜひうちの大学に来て欲しいって言われたらしくてね…」
「凄いですね!椿先生行くんですか?」
「まぁ、せっかくの機会だしね」
「いつ頃行くんですか?」
「3月下旬頃かな、東京の大学だから、引越ししようかなって」
「そうなんですね…」
洋平は話題を切り替えた。
「そういえば奏多君今度の土曜日予定空いてるかな」
「空いてますけど…」
「じゃあおいしい珈琲屋を見つけたんだけど一緒に行かないかい?」
「行きたいです!」
「よし、決まりだね。そろそろ出ようか」
洋平は立ち上がり、奏多も急いでコーヒーを飲みお店を出た。夜は冷えていっそう寒かった。洋平は左手を差し出し奏多はそっと右手を添えて握り、家に帰った。

 後日、奏多と洋平は珈琲屋に行った。洋平のおすすめを頼み、会話をしているうちに一日が終わった。その後は学校では会えたものの忙しくて遊んだりすることが減って行った。

 洋平と久しぶりに予定が合ったのが3月8日だった。

『今日家に来る?』

洋平からのメールで奏多は急いで支度をして返信も返さずに家を出た。洋平の家に行き、インターホンを鳴らした。少しして洋平は出て奏多は家に入った。
「寒くなかった?」
「走ってきたから寒くなかったです!」
「それならよかった、何飲む?」
「コーヒーで」
「そうだと思った」
洋平は奏多の分のコーヒーを入れテーブルに置いた。
「ごめんね、全然会えなくて」
「全然、引越しとかで色々忙しいんですもん仕方がないですよ」
「寂しい思いさせたよねごめんね」
「謝らないでください!僕は椿先生が東京に行っても椿先生を好きな気持ちは変わらないですよ」
「そうか、ありがとうな奏多」
そう言って洋平は奏多の頭を撫でた。
「そういえばいつ頃東京の方に引っ越すんですか?」
「3月28日かな、そういえばずっと言いたかったんだけど、そろそろ名前で読んで欲しいな?」
「え、それはさすがに勇気が…」
「俺と2人きりの時名前で呼んでほしいな?」
「分かりました…」
奏多は洋平の方を向きなおした。
「洋平…さん」
「ん?」
「洋平さん…洋平さん…好きです」
「俺もだよ」
冗談のように軽い口づけを交し次第にチョコレートのような甘い甘い口づけを交わした…

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