転生少女は怠惰した生活の夢を見るか?

オウラ

文字の大きさ
1 / 22

怠惰なる生活のすヽめ

しおりを挟む

「まじか………」

 齢6歳にして偶然にも気づいてしまった事実に私は頭を悩ませると同時に、何だか物凄く世の中に対してやる気をなくしてしまったのは多分仕方のない事である。


 私、桃月 奏はいわば転生者という奴だ。おぎゃあと生まれたその日からその日以前の、所詮前世の記憶と言うものが存在する。 

前世の私は、記憶によると何とも悲惨な人生を送ってきたらしい。それを未練たらしくタラタラと話すのはどうかと思うので、詳しくは話さないが、取り敢えずそこまでかと言うほど可哀想で、散々で、悲惨な人生であった。

そして、生まれてからこの6年間。前世のような人生を送らないように、さぁ、頑張るか!!とそれはそれは意気込んで生きていたわけだが、残念なことに今この瞬間その決意は、粉々に砕け散ってしまった。


 私が気づいてしまったのだ。この世界が前世、少しだけはまった乙女ゲームの世界に類似していると言うことに。そして、私がそのゲームの悪役的ポジション転生してしまったことに。

 気がつきたくなかった事実。しかし気がついてしまったからにはもう遅い。
何故、私がそんな悲しき事実に気づいてしまったのか、それは偏に目の前の幼馴染にある。

 目の前で、私の名前を呼び、その瞳にたっぷりの涙を浮かべるのは、蘇芳 翔真。その姿は、将来イケメンに育つだろうと想像できてしまうほど、整っている。なぜ彼が泣いているのか、その理由は簡単。春から通う小学校が、私と違うからである。彼の家は歴史のある名家。なんの因果か我が家と隣同士の為、親同士、子供同士が仲良くこうして生まれてからずっと一緒に遊んでもらっている関係なのかだが、それでも彼は私の家とは桁違いの金持ち。(糞!折角なら私だって金持の家に転生したかったよ。今の家に不満はないけれど、むしろ両親は優しいし!!前世と比べるのが申し訳ないくらい最高だけど!!)故に彼が春から通うであろう学校は、私が通う公立の小学校とは比べ物にならないほどの金持ち学校。幼稚舎から、大学までが存在する超名門私立なのだ。そして、その学校というのが、乙女ゲームに出てくる学校の名前そのもの。加えて、確か私の記憶が正しければこの蘇芳 翔真という男は攻略キャラの1人であったのだ。単なる偶然にしてはできすぎている。これはもしかするともしかするかもしれないと考えてしまうのも無理はない。
  まぁ、翔真が攻略キャラで、ここが乙女ゲーというだけだったらなにも問題ないのだが、そう簡単にことは進まない。
 なんと、翔真ルートにおいてライバルキャラとして彼の幼馴染、つまるところ私が出てくるのだ。ゲームの中での幼馴染桃月 奏、つまり私は蘇芳に執着しており、自分から蘇芳を奪おうとするヒロインに容赦ない存在であった。所詮ヤンデレ、2次元でのヤンデレは萌えるがそんなの現実にいたら堪ったものではない。しかもそれが自分なんて……泣きたくなるにも程がある。

 この世界が乙女ゲームの世界とまだ確信したわけではないが、あり得ないという事はない。幸いな事に、私は蘇芳と小中高と違う学校に通うという設定だった為、今日から少しづつ距離を置いていけば、私がヤンデレになる事は多分ないので良いが、それでももし仮にこの世界が乙女ゲームで、本当に私がヤンデレになってしまったならばそれはとても残酷で悲しい事実である。というか生きている気、軽くなくす。だって、頑張って生きていてもヤンデレになって、最後は………ヒロインにした仕打ちのせいで刑務所送りなんだよ!? ありえなくない?
  個人的にヤンデレになるつもりはさらさらないが、ここがゲームの世界だとしたら、どうなるかわからない。
 これは私なりの自論だが、世界は常に自分中心に回っているのだ。私には私の世界が、私を中心として回っているし、誰かには誰かの世界が誰かを中心として回っているだろう。この世界は一人一人の為にある。だけど、仮にこの世界が乙女ゲームの世界なら、世界は私中心に回ってはくれない。乙女ゲー、所詮ヒロインの為の世界。彼女を中心に回る世界なのだ。つまり、彼女を中心に回ったが結果、是が非でも私がヤンデレになってしまう可能性も否めないわけである。世界の意思、それには逆らえないというわけだ。

 別に主人公になりたかった訳ではないが、死んで、生まれ変わった世界で何が楽しくてそんな結末を迎えなくてはならないのか。私にはわからない。

 今世こそは幸せになろうと思ったのにだ。叶わないかもしれないというのはあんまりだ。

 はっきり言おう。気づいてしまった以上、もう何もかもが無と化した。頑張るとか、努力するとか、そんな前向きな気持ちは、どこかにいってしまった。どうせ、頑張っても努力しても全て無駄なら、しないほうがいい。やるだけ無駄なのだ。だったら、やらないほうがいいじゃないか。怠惰でなんともやる気のない人生を送った方が、その方が楽だ。捕まるその日まで、ぐーたらした、自堕落な、ダメダメな人間になった方がずっといい。



「いやだ、嫌だ。僕は、奏とおんなじ学校にいきたい」

ぐすりぐすりと泣きじゃくる幼馴染。まぁ、取り敢えず、ダメダメな人間になる、その前に。これが最後と言わんばかりに、目の前の幼馴染を慰める事にしよう。


「きっと、学校に行けば私より仲のいい子ができるよ。」

これが本当に最後。彼と関わるのも、最後である。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

処理中です...