転生少女は怠惰した生活の夢を見るか?

オウラ

文字の大きさ
8 / 22

傲慢な変人

しおりを挟む
 
 ジンジンと痛む肌、灼熱の太陽とコンクリ地獄、霞む視界、そしてべたりと衣服が肌にくっつく感覚はなんとも気持ち悪い。日差しよけの為、かぶった帽子が裏目に出た。帽子の中はとうに蒸れている。うぅ、暑い、否、熱いよぉ~。焼けるよ。気持ち悪いよぉ~。





 現在私は、真夏の真昼間、炎天下をよろよろと歩いている。ぐーたら、自堕落を目標に生きている私にとって、これはあり得ないことであるが、こうなってしまった経緯にはとても深いわけがあるのだ。

 今日発売の新刊。今度立花くんと見にいく映画の原作を手に入れる為、本屋に行ってきたのである。いつもはネット予約しているが、今回はついつい忘れてしまった。後でいいや、面倒いしと思っていたら予約終了。ショックだった。取り敢えずもう2度と後回しにはしないと決めたよ、好きなことに関しては……



 取り敢えず、朝イチで買いに行こう。と昨日早く寝たが、気づけば11時。あー、支度するのめんどくさいなぁと思っていたら時間は驚くほど早く過ぎていき、こんな熱い時間帯に出かける羽目になったのだ。もう少し、涼しい時間帯に買いに行くことも考えたけど、やっぱりすぐに欲しいものは欲しい。一応、毎週週刊誌を買っており、最新話まで、くまなく読んでいるが、週刊誌と単行本は全然違うのだ、欲しいと感じても仕方ないよ。それに気づいたら週刊誌は、翔真に捨てられているんだよ?あり得なくない。一回物凄く大好きな回のものを捨てられマジギレした為、捨てる前に、確認してくれるようにはなったが、それでもある程度溜まると捨てられてしまうのだ。そりゃぁ邪魔になるけど、私に乗っては血肉同然なのに、全くもって酷い話だと思う。



 あー、それにしても本当に熱い。死ぬ……でも、目当てなものは既に手元にある。お家に帰れば、冷え冷えのお部屋とアイス、それから新刊!あの角を曲がれば、数十メートル先には我が家が待っている!!!















「……ん?」

 角を曲がり、私の家の玄関後少し!なのはいいが……誰かいる。いや、うちの前じゃなくて、翔真の家の前に。

 翔真の家はここらじゃ一番大きな家、というか豪邸。私の家と並んで立っている為、我が家は平均的よりも少し大きなサイズというにもかかわらず、「え?物置小屋かな?」と思われるほど、奴の家はでかい。何度か、というか結構な頻度で遊びに行くが、中も中々広く、今でもたまに迷子になるレベル。いやぁ、金持ちの幼馴染を持つと苦労するよ、本当に。


 でだ、そんな大きな豪邸だから、ついつい目を追ってしまう人間はこれまでに何人も見てきた訳で、今回もその類だろうか。
 まぁ、可能性は低いが、こう言うのは犯罪にも繋がる可能性がある。ご近所で事件ごとはごめんだし、隣人としても犯罪を防ぐ義務がある。………取り敢えず、声をかけるか。




「あの、すいません。何かご用ですか?」

 ただジーッとさっきからその場を動かずに、翔真の家を見る少女ーー綺麗な黒髪だし、身長的にも、体格的にも多分女の子だと思う、これで男だったら怖いーーに声をかける。興味心で見てたやつはこれで、去ってくし、犯罪目的だったら、抑止力にはなるだろう。しかもお隣さんは現在旅行中だからなぁ、狙われたら大変だ。いい仕事するよ、私。頑張った。ご褒美に、アイスは2個食べよう。





「何かよう?」

 瞬間なんとも不機嫌そうにこちら向いた少女に、なんとなく既視感。美しい黒髪、大きな瞳、夏なのに白く透き通る肌、まるでお姫様みたいな容姿の女の子。何処かで、私は彼女を見たことがある……が思い出さない。こんな可愛い子見たら忘れないはずなのにな。年齢も近そうだから、翔真の学校の友人か?


「……ああ、どっかで見たことがある顔と思ったら、桃月奏か。何?早速私と翔真の邪魔するって言うの?」
「はぁ……」

 うむ、私の名を知っていると言う事はやっぱり知り合い?でもなぁ、本当に思い出せない。なんだろ、後ちょっとで出そうなんだけど、出ない。まさかこの歳でアルツハイマー!?

「まぁ、どんなに嫌がらせしても私と翔真は、運命の赤い糸で繋がっているから意味ないけれど。所詮貴方は当て馬。刑務所送りの女なの」


ふふっと笑う少女。

「私の翔真は、私だけのもの」

 その悪魔のような恐ろしい発言とは真逆の笑顔で私に笑いかける少女。この表情、この笑顔、どっかで観たことが………あ!とその瞬間、彼女が何者かの疑問が解ける。思い出した。彼女は。眼の前の美少女は………もしや


「せいぜい指をくわえて見てなさい。桃月奏」

ドンっと力一杯押されれる。暑さの為、そして目の前の衝撃的な事実のせいで、力が入らなく、そのまま倒れこむ。


「私が、この世界のヒロインである私が、翔真と結ばれるところを、大人しく見てればいいよの」


そうだ、そうなのだ。目の前のこの美少女は、ヒロイン。所詮この世界の中心、私の人生を狂わせる歯車なのである。

「じゃあ、さようなら」


 ふわりとスカートを翻がえし、この場を去って行く彼女。
 あぁ、鬱だ。絶望だ。最悪だ。まさか、ヒロインに会うなんて。ある程度の覚悟はできていたけど、やっぱり私は刑務所送りなんだ!!うわぁ、嫌だぁ。しかも、なんか、あの子、転生者?ぽかったし、マジでヤバくね?これ。仮に転生者だったら、確実に私、刑務所送りは免れないよ。し、死にたい。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

処理中です...