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傲慢な変人
しおりを挟むジンジンと痛む肌、灼熱の太陽とコンクリ地獄、霞む視界、そしてべたりと衣服が肌にくっつく感覚はなんとも気持ち悪い。日差しよけの為、かぶった帽子が裏目に出た。帽子の中はとうに蒸れている。うぅ、暑い、否、熱いよぉ~。焼けるよ。気持ち悪いよぉ~。
現在私は、真夏の真昼間、炎天下をよろよろと歩いている。ぐーたら、自堕落を目標に生きている私にとって、これはあり得ないことであるが、こうなってしまった経緯にはとても深いわけがあるのだ。
今日発売の新刊。今度立花くんと見にいく映画の原作を手に入れる為、本屋に行ってきたのである。いつもはネット予約しているが、今回はついつい忘れてしまった。後でいいや、面倒いしと思っていたら予約終了。ショックだった。取り敢えずもう2度と後回しにはしないと決めたよ、好きなことに関しては……
取り敢えず、朝イチで買いに行こう。と昨日早く寝たが、気づけば11時。あー、支度するのめんどくさいなぁと思っていたら時間は驚くほど早く過ぎていき、こんな熱い時間帯に出かける羽目になったのだ。もう少し、涼しい時間帯に買いに行くことも考えたけど、やっぱりすぐに欲しいものは欲しい。一応、毎週週刊誌を買っており、最新話まで、くまなく読んでいるが、週刊誌と単行本は全然違うのだ、欲しいと感じても仕方ないよ。それに気づいたら週刊誌は、翔真に捨てられているんだよ?あり得なくない。一回物凄く大好きな回のものを捨てられマジギレした為、捨てる前に、確認してくれるようにはなったが、それでもある程度溜まると捨てられてしまうのだ。そりゃぁ邪魔になるけど、私に乗っては血肉同然なのに、全くもって酷い話だと思う。
あー、それにしても本当に熱い。死ぬ……でも、目当てなものは既に手元にある。お家に帰れば、冷え冷えのお部屋とアイス、それから新刊!あの角を曲がれば、数十メートル先には我が家が待っている!!!
「……ん?」
角を曲がり、私の家の玄関後少し!なのはいいが……誰かいる。いや、うちの前じゃなくて、翔真の家の前に。
翔真の家はここらじゃ一番大きな家、というか豪邸。私の家と並んで立っている為、我が家は平均的よりも少し大きなサイズというにもかかわらず、「え?物置小屋かな?」と思われるほど、奴の家はでかい。何度か、というか結構な頻度で遊びに行くが、中も中々広く、今でもたまに迷子になるレベル。いやぁ、金持ちの幼馴染を持つと苦労するよ、本当に。
でだ、そんな大きな豪邸だから、ついつい目を追ってしまう人間はこれまでに何人も見てきた訳で、今回もその類だろうか。
まぁ、可能性は低いが、こう言うのは犯罪にも繋がる可能性がある。ご近所で事件ごとはごめんだし、隣人としても犯罪を防ぐ義務がある。………取り敢えず、声をかけるか。
「あの、すいません。何かご用ですか?」
ただジーッとさっきからその場を動かずに、翔真の家を見る少女ーー綺麗な黒髪だし、身長的にも、体格的にも多分女の子だと思う、これで男だったら怖いーーに声をかける。興味心で見てたやつはこれで、去ってくし、犯罪目的だったら、抑止力にはなるだろう。しかもお隣さんは現在旅行中だからなぁ、狙われたら大変だ。いい仕事するよ、私。頑張った。ご褒美に、アイスは2個食べよう。
「何かよう?」
瞬間なんとも不機嫌そうにこちら向いた少女に、なんとなく既視感。美しい黒髪、大きな瞳、夏なのに白く透き通る肌、まるでお姫様みたいな容姿の女の子。何処かで、私は彼女を見たことがある……が思い出さない。こんな可愛い子見たら忘れないはずなのにな。年齢も近そうだから、翔真の学校の友人か?
「……ああ、どっかで見たことがある顔と思ったら、桃月奏か。何?早速私と翔真の邪魔するって言うの?」
「はぁ……」
うむ、私の名を知っていると言う事はやっぱり知り合い?でもなぁ、本当に思い出せない。なんだろ、後ちょっとで出そうなんだけど、出ない。まさかこの歳でアルツハイマー!?
「まぁ、どんなに嫌がらせしても私と翔真は、運命の赤い糸で繋がっているから意味ないけれど。所詮貴方は当て馬。刑務所送りの女なの」
ふふっと笑う少女。
「私の翔真は、私だけのもの」
その悪魔のような恐ろしい発言とは真逆の笑顔で私に笑いかける少女。この表情、この笑顔、どっかで観たことが………あ!とその瞬間、彼女が何者かの疑問が解ける。思い出した。彼女は。眼の前の美少女は………もしや
「せいぜい指をくわえて見てなさい。桃月奏」
ドンっと力一杯押されれる。暑さの為、そして目の前の衝撃的な事実のせいで、力が入らなく、そのまま倒れこむ。
「私が、この世界のヒロインである私が、翔真と結ばれるところを、大人しく見てればいいよの」
そうだ、そうなのだ。目の前のこの美少女は、ヒロイン。所詮この世界の中心、私の人生を狂わせる歯車なのである。
「じゃあ、さようなら」
ふわりとスカートを翻がえし、この場を去って行く彼女。
あぁ、鬱だ。絶望だ。最悪だ。まさか、ヒロインに会うなんて。ある程度の覚悟はできていたけど、やっぱり私は刑務所送りなんだ!!うわぁ、嫌だぁ。しかも、なんか、あの子、転生者?ぽかったし、マジでヤバくね?これ。仮に転生者だったら、確実に私、刑務所送りは免れないよ。し、死にたい。
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