ルピナスは恋を知る

葉月庵

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229話 アルト視点

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「さて、ようやく二人とやれるぜ!さぁ、まずはどっちが相手だ?」

「団長、落ち着いて……。まったく、子供みたいだ……。」

「いいじゃねぇか、ローラン。ずっとこれが楽しみだったんだからよ!」

ローランも大変そうだな。試合に関してはまぁ、俺が最初だろうな。さっきガルムが試合をしたばかりだし。

案の定、次の試合は俺とギルだった。

「アルトさん、頑張ってください……!応援してます……!」

「あぁ、ありがとう。ハルに応援されたからには勝ってみせるさ。」

その時、ふといい考えが脳裏をよぎる。我ながらいい考えだ。

「ハル、次の試合に勝つために、勝利の女神のキスをくれるかい?」

「えっ……!?き、キス、ですか……!?」

キスという言葉が出てきただけで、こんなにも顔を赤く染めるなんて、やはり可愛すぎる。

ハルは辺りを見回して周囲の人をキョロキョロと確認している。恥ずかしそうにアワアワとしている姿を見つめていたいが、ここは誘導してあげるのが良さそうだ。

俺は顔をハルへと近づけ、唇をトントンと触り、ここにしてほしいとアピールする。

「えっ……?あっ……、うぅ……。」

顔を赤くしながら小さな声で呻く姿に胸をときめかせていると、決意を固めたハルが体を伸ばしてチュッと軽くキスをしてくれる。

「こ、これで、どう、ですか……?」

「フフッ……、ありがとう。じゃあ、行ってくる。」

さて、これで余計負けるわけにいかなくなったな。

俺はハルの可愛らしい姿を目に焼き付けてから、試合場へと向かう。ギルの方は待ちきれなかったようで、先に準備万端といった感じだった。

俺は深呼吸をして気持ちを切り替える。

よし、いける。

「始め!」

ドンッ……!

始まりの合図と同時にお互いが間合いを詰める。

ガンッ……!

互いの大剣が勢いよくぶつかり、辺りに衝撃が走る。

「ようやく、俺と同じくらいのヤツとやれるんだ。早々にくたばるなよ!」

「こっちのセリフ、だっ……!」

一気に詰められた間合いを相手を吹き飛ばすことで元に戻す。そして、今度はこちらからそれをなくし、連撃を入れる。

ガガガッ……!ガンッ……!

「流石に全て防ぐか……。」

「ったり前よぉ!」

下か……!

振り上げを後方に飛ぶことで躱すと、ギルも飛び上がって追撃してくる。空中で剣戟を繰り出してくるため、それをいなしながらこちらからも攻めるも当たり前のように防がれ、互いに距離を取りながら地面へ降りる。

次降りたら、また交戦が始まる。なら、こちらから……!

着地のタイミングでハルも使っていた飛び道具をギルの着地点へ飛ばす。ガンッと音を立てて地面を抉り、砂煙を立てる。

そこか……!

砂煙の中で影がゆらりと揺れる。そこに向かって大きく振りかぶり振り下ろす。だが、砂煙の中の影は後ろに飛んで、すんでのところで躱していた。

これを躱すのは想定内だ。だが……!

剣を地面に叩きつけたことで、割れた地面の塊が浮かび上がる。それを剣を支柱にして蹴り飛ばし、飛び上がった影へ向かって打ち込んでいく。着地する勢いのまま剣を抜き、飛ばした塊を弾いている所に追撃を加える。

「ゼェ゙ェ゙ェ゙ィ!」

「うぐっ……!」

ギルは俺の一撃を完璧に防ぐことはできず、地面に勢いよく叩きつけられる。

よし、やっと一撃入ったか。

「っ……!」

立て直しが早い……!

シュッと俺に向かって何かが顔に向かって飛んできて、顔を逸らすことによってそれを躱す。その一瞬ギルから視線を外したのが行けなかったのだろう。気づけば、目の前まで跳んできていた。

マズイ……!

そこからまた連撃を繰り出され、四方に跳びながらいなしていく……が。

「あまい……!」

「チッ……!」

こちらもまた一撃をいなしきれず、一発入れられる。ガンッと地面に剣を突き立て、衝撃を打ち消す。

フフッ、やるじゃないか……!柄にもなく熱くなってきた……!

それは向こうも同じようで再び動き回りながらの剣の撃ち合いが始まる。この一振り一振りで勝負が決まるかもしれないと思うとゾクゾクする。この懐かしい感覚に楽しくなってくる。

感覚が冴え渡っていく中僅かな隙を見つけてはお互いに撃ち合ってを繰り返す。だが、剣戟の途中一瞬、試合を決める急所に今までで一番の隙が空いた。

見えた、そこだ……!

「っ……!?」

剣を首元へ振り払わおうとすると、俺達よりも小さな影が入り込んできて、何とかその剣を止める。

「そこまで……!おぬしら、熱中しすぎじゃ。これ以上はいかん。この試合は引き分けじゃ。」

気づけば、ギルの剣も俺の首元で止まっていた。

「なんだよ、今いいとこだったのによぉ……。」

「団長、これ以上は父さんがいても止められるか危ういんだから諦めて。」

「そういうことじゃ。まぁ、魔法に触れる前にお互い剣を止めるのは流石の実力じゃな。ほれ、会場を直すから、下がらんか。」

「すまない、アッシュの爺さん。熱中しすぎてしまった……。」

「いいんじゃ、いいんじゃ。どうせ、ハル君に良いところを見せようとしたんじゃろう?」

「まぁ、そうだな。」

はぁ……、ハルが見ている手前、勝ちたかったんだがな……。格好良いと思ってくれているだろうか……。
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