ルピナスは恋を知る

葉月庵

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234話

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「えっ……?」

番になる?誰と……?私と、王子様が……?

私が王様の言葉に混乱していると、ガルムさんが怒りを押し殺しながら話し出す。

「お言葉ですが、既にハルは俺とアルトという二人の番がおります。それなのに、番になるというのは……!」

「別にそなたに聞いてはおらん。それに、昔と違って今は番を解消させる薬もある上、前例はないが望めば王族側ではない方が複数の番を作ることも認められている。何もおかしなことはない。」

「ですが……!」

「しつこいぞ。全て本人次第だろう。そなたはこの子の話しを黙って聞いておればいい。」

「くっ……!」

ガルムさんはそこでギリッと歯を悔しそうに噛んでいた。

「ふん。……それで、どうだ?王子との番になるのは。別に悪いようにはせん。むしろ、王子の番となれば相応な待遇を用意しよう。何でも好きなものを与え、好きなようにさせることを約束しよう。悪い条件ではないであろう?」

「わ、私は……、」

「ん?」

これを断ってしまえば、私達はどうなってしまうの……?そもそも、私と番になることによるメリットは……?それに、これは当の本人である王子様は望んでいることなの……?

そんなことが頭の中で、ぐるぐると回る。

それでも、私は……!

「も、申し訳ございません……!その提案に乗ることはできません……!本当に申し訳ございません……!」

同じことを繰り返してしまうくらい私は動揺してしまっていたが、言いたいことはきちんと伝えた。

王様に頭を下げて言いたいことを伝えた後でも、嫌な汗が全身から噴き出ているような気がする。私が意見をした後から辺りが静かになったこともそれを加速させる原因となっていた。

やっぱり、王様の提案にのらないことで反感を買って、私は処されてしまうのかな……?

「……まぁ、いい。突然言われて動揺しての答えだろう。ともかく、まずは王子に会ってもらおうか。話しはそれからでも遅くはない。」

話しは終わったとばかりに王様はその身を翻す。

「用は済んだ。連絡は追ってさせるから、そなた達は心に決めておけ。余は戻る。」

王様がそう言って歩き出すと、ガルムさんを牽制していた龍人さんがいつの間にか後ろにつかえていた。そして、王様達が離れ、声も届かないほどの距離になってやっとピンと張っていた糸が切れたかのように私も含めて周りの人達は息を吐いた。

よ、良かった……。ん?良かった、のかな……?少なくとも、反感を買ってはいない気がする。

「ハル、話したいことは山々あるが、一先ず今日はもう帰ろう。ガルムもそれでいいな?」

「あぁ。……というわけで、ギル。俺達は一足先に帰らせてもらおう。」

「分かった。今日はすまんかった。まさか、王様が直々に来るとは……。ローラン、王様には連絡していないよな?」

「もちろん。ハル君の王族とのゴタゴタは父さんから聞いていたしね。」

「だよな……。まさか、誰か王様と繋がっている者が騎士団内にいるのか……?いや、まさかな……。」

そう少し考え込む仕草を見せたギルさんを見て、ガルムさんは周りを警戒しながら話しかける。

「話しはもういいか?王族がもう来ないとも限らんし、俺達は帰るぞ。」

「あぁ、すまない。後日詫びの品を送ろう。改めて本当にすまない。」

「ギル、ましてやローランも知らないのなら仕方のなかったことだろう。気にしなくて良い。ではな。試合自体は楽しかった。」

「……あぁ!こちらもいい経験になった!ありがとう!」

ギルさんはニカッとした笑顔でアルトさん、そしてガルムさんに言った。その後私の方を向くと、視線を合わせてきた。

「ハル、嫌な思いをさせてごめんな?詫びの品は好きなものを教えてくれれば、それに合わせよう。」

「あ、いえ!お気になさらず……!」

「では、甘い物を所望しよう。」

「が、ガルムさん……!」

「ガハハッ!ハルは甘い物が好きなのか!分かった、そうしよう。」

私がこんな皆さんがいる前で好きなものを公開されるなんて思っていなくて恥ずかしくって顔を赤くする。

こうして私達は乗ってきた場所に乗り込んだ。ちなみにレオさんとウィルさん、ウォルトさんはカズラさんを探しに行き、試合が中止になった旨を伝え連れてきてくれていた。
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