ルピナスは恋を知る

葉月庵

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256話

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そんな……私、王子様に抱かれる……!

イヤ……、嫌だ……、やめて……、

つぷっ……、

「っ……!嫌っ……!」

バンッと音が響き、感じていた異物感はなくなっていた。ただ私は目を閉じていたため、何が起こったか何も分からなかった。

「貴様……!何をする……!」

この声は、アルト、さん……?

「こいつが魔法を王子に向けて使用したからに決まっているだろう。」

「見て分かるだろう!ハルの魔法は明らかに凌辱されるのを拒んだ正当防衛だ!」

「そんなもの、関係ない。」

「この……!」

そっか……私、魔法を使ったんだ……。だから、異変に気づいてガルムさんとアルトさんが助けに来てくれたのか。

私はゆるりと目を開けると、私を守るようにして覆いかぶさっているガルムさんと目が合った。

「ハル、もう大丈夫だ。安心しろ。俺達がついている。」

「ガルムさん……。っ……!」

私は安心感からか、涙がこみ上げてきて思わずガルムさんに抱きついてしまった。ガルムさんはそんな私を拒まず、優しく抱き起こしてなだめてくれる。

「そうだよな、怖かったよな。でも、もう大丈夫だ。」

「ガルムさん……、ガルムさん……、」

安心したからか、思考が正常にできるようになってきて、アルトさんが龍人さんと言い合っていたのを思い出す。顔を上げ辺りを見回すと、王子様は少し離れた所に呆然と立っており、アルトさんは龍人さんを一方的に睨み、龍人さんは変わらず冷たい目をしていた。すると、私の視線に気づいたアルトさんが龍人さんを警戒しながらこちらに言葉をかけてくれる。

「大丈夫、俺達がいる。さぁ、こんなところからは早く帰ろう。」

龍人さんに話すときと違い、優しい声色に心が落ち着く。私達が帰ろうとすることが分かり、龍人さんがずっと固まっている王子様に話しかける。

「王子、どうする。こいつらを見るに、今日はこれ以上の対話は難しいと思うが。」

「あ、あぁ……。許可しよう……。」

あれ……、何処か歯切れが悪いような……?

私は先程まで私に迫っていた王子様がここまで呆然としていることに疑問を持つ。そうしたいのはこちらの方なのに、と。すると、ガルムさんが上着を1枚脱ぎ、私にかけてくれる。

「ハル、取り敢えずこれを。」

「あっ……!……あ、ありがとうございます。」

ずっとガルムさんに縋っていたため忘れていたが、私は今とんでもない格好をしていることに気づき、恥ずかしくなってくる。

「だ、そうだ。お前達は帰ってもいいそうだ。ついてこい。」

「ハル、俺に捕まっておいてくれ。今は自分で歩かない方が良い。」

「は、はい……。ありがとうございます。」

こうして私達は、未だに一人立っている王子様を残し、部屋を出ていった。何故そこまで呆然としているのか少し腹立たしさも感じながらも、疑問に思っていた。
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