ルピナスは恋を知る

葉月庵

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12話

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いつぶりだろう。こんなに温かい気持ちになれたのは。

出会って間もない私に不器用にも回されたその太く逞しい腕はとても温かった。誰かに縋って泣いてしまったのは初めてで、心の底から泣いてしまった。

それは他人に優しくされる経験が乏しい私にはとても心地よかった。いままでの苦労が報われるようなそんな気さえした。

街まで抱えていくと言われた時にはこんな私に対して……とも思ったがあの温もりが忘れられず、嬉しかった。

一定のリズムで揺れるガルムさんの温かい腕の中で気づけば私は寝てしまっていた

そんな私は道中であんなことが決まっていたなんて想像もしていなかった。


「ハル、着いたぞ。」

私はその声にハッと目を覚ました。声のする方へ顔を向けるとこちらを見下ろすガルムさんと目が合った。その瞬間私の顔からサッと血の気が引いた。

「も、申し訳ございません!!運んでもらってる分際で眠ってしまうなんて……」

しまった、こんなの、いくらなんでも失礼すぎるではないか!?いつもは物音一つでも起きてしまうのに!なんで今日は起きなかったんだ……!?

「そんな慌てなくても大丈夫っすよ。ガルムさん見ての通り、筋肉スゴイっすから。それに、ハル君は心配になるくらい痩せてるっすからね。」

「ウィルの言う通りだ。ハルは何も気にしなくてもいい。そうだ。レオ、席を取ってきてくれないか。」

「わかったよ。」

二人の説得に唖然としている中、レオさんは私達から離れていった。私はガルムさんに視線を戻した。

「あの、ここは一体どこなんですか?」

「ん?あぁ、ここは冒険者が集まる食堂で熊の蔵という。今日はここで夕食をとることにしたんだ。」

私はなるほどと納得し、言葉を紡いだ。

「では、私は外で皆さんをお待ちしておりますね。」

「何を言っているんだ?お前も入るんだぞ?」

「でも、私お金を持っていません。なので、皆さんの迷惑にならないようにと……。」

そこでガルムさんは盛大に溜息をついた。

「……迷惑だなんて思っていない。お前は大人しく奢られていろ。」

「そうっすよ。俺達がやりたくてやってることなんすから。」

「ですが、……。」

どうやって断ろうかと考えているとタイミングが良いのか悪いのかレオさんが店から出てきた。

「席、丁度4人分空いてたよ。」

「じゃあ、入るか。」

「あっ、ちょっと……!」

「もう、ハル君。諦めが悪いっすよ?」

私はそのまま店に入ったことに後悔することになった。
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