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13話
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私がガルムさんに抱かれて店に入ると視線を向けてきた人達のほとんどが珍しいものでも見たかのようにニヤニヤと笑っていた。
そうだよな。私みたいなみすぼらしいものは、ガルムさん達とは不釣り合いだよな………。
そう思い、顔をうつむかせていると前方から愉快そうな声が飛んできた。
「これはまた、とんだ可愛い子ちゃんを連れてきて。どうしたんだ?お前が誰かをこうやって連れてくるなんて初めてじゃないか。なんだ?攫ってきたのか?」
ん?可愛い子ちゃん?誰のことだ?まず、私はありえないし……
「ベル、少しは静かにしろ。ハルが怖がるじゃないか。」
私が呆気に取られて二人の会話を聞いていると、ガルムさんが私を隠すようにベルと呼ばれた茶色の熊のような獣人から距離を取った。すると、その距離を詰めるように近づいてくる。
「良いだろ?減るもんじゃあるまいし。なぁ、ハルちゃん?」
「は、はい……。」
顔の左の切り傷がつく迫力のある顔を突然私に近づけてきたので、若干驚きつつ答える。
「ベル、もう良いだろう。俺達は今から食事をするんだ。邪魔しないでくれ。」
「あ~、はいはい。分かりましたよ。ったく……。ハルちゃん、気をつけろよ?狼獣人は特に気に入った奴には執着がスゴイからなぁ。」
ベルさんがクククッと笑いながら話す。ガルムさんの方を見ると、少し目を見開いている。
「早く席着きましょうよ~。俺もう、腹ペコペコっすよ。」
「あ、あぁ。そ、そうだな。」
ウィルさんが空気を読んだ発言をし、それに驚いたのかガルムさんがそれに応える。
そして、私はガルムさんに未だに抱えられながら、席へと向かった。その間、通りすがったほとんどの人にまじまじの見られてしまった。
人にここまで注目されることのなかった私はとても居た堪れない気持ちになった。
席に着くと、ようやくガルムさんから降ろされた。そこで私は促されたよう座ろうとしたが、私の身長は165センチくらいだったので、少し高い椅子に座るのに少し苦労した。それを見たガルムさんが手伝ってくれようとしたが、今まで迷惑しかかけていないので、遠慮しておいた。
席に座ってしばらくすると腰にエプロンをした、女性が現れた。
「注文はきまったかい?」
「サリアさん!じゃあ僕は、コッコのトマト煮で。」
「俺はカウのステーキでお願いするっす!」
「俺も同じくカウのステーキにしよう。ハルはどうする?」
ガルムさん達が思いの外早くメニューを決めたので、未だ何にするか決めていなかった。
私は、今までの人生で外食などしたことがなかったので、相場が分からなかったのだ。
そのため、なるべく安いものをと思い、探していたが、どれも似たような値段で決めかねていた。結果、このお店の人に聞いてみることにした。
「あの、このお店で一番安いものは何でしょうか。」
「おや、見ない顔だね。あぁ~!、あんたはさっき家のが騒いでた子だね!ごめんね、うるさかったでしょ!」
「い、いえ」
家の?てことは、ベルさんとこの女性は夫婦ということなのか?
「ベルとサリアさんは夫婦なんだよ。」
「そうなんですね。」
考えてたことが顔に出ていたのか、レオさんが補足してくれた。
「で、一番安いやつだっけ?それだと卵粥になるけど、大丈夫?」
「ハル、遠慮しなくて大丈夫だぞ?」
隣に座ったガルムさんがこちらの表情を伺うように覗く。
「いえ、遠慮などではなくて……。えっと、サリアさん、私は卵粥でお願いします。」
実際、遠慮していないといえば若干嘘になるが、迷惑をかけたくない思いの方が強いのでそのままお願いした。
「分かったよ。じゃあ、できるまで待っててね!」
サリアさんが注文を受け、料理場へ戻っていく。
「ハル君、本当に良かったんすか?普通に注文してくれて良かったっすよ?」
「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ。」
私はこれ以上私なんかに気を使わなくてもいいと思い、そう言った。
その後、料理が来るまでは、とりとめのない会話を三人が繰り広げ、時折こちらに振っては私が応えるというのを数回繰り返していた。
そうだよな。私みたいなみすぼらしいものは、ガルムさん達とは不釣り合いだよな………。
そう思い、顔をうつむかせていると前方から愉快そうな声が飛んできた。
「これはまた、とんだ可愛い子ちゃんを連れてきて。どうしたんだ?お前が誰かをこうやって連れてくるなんて初めてじゃないか。なんだ?攫ってきたのか?」
ん?可愛い子ちゃん?誰のことだ?まず、私はありえないし……
「ベル、少しは静かにしろ。ハルが怖がるじゃないか。」
私が呆気に取られて二人の会話を聞いていると、ガルムさんが私を隠すようにベルと呼ばれた茶色の熊のような獣人から距離を取った。すると、その距離を詰めるように近づいてくる。
「良いだろ?減るもんじゃあるまいし。なぁ、ハルちゃん?」
「は、はい……。」
顔の左の切り傷がつく迫力のある顔を突然私に近づけてきたので、若干驚きつつ答える。
「ベル、もう良いだろう。俺達は今から食事をするんだ。邪魔しないでくれ。」
「あ~、はいはい。分かりましたよ。ったく……。ハルちゃん、気をつけろよ?狼獣人は特に気に入った奴には執着がスゴイからなぁ。」
ベルさんがクククッと笑いながら話す。ガルムさんの方を見ると、少し目を見開いている。
「早く席着きましょうよ~。俺もう、腹ペコペコっすよ。」
「あ、あぁ。そ、そうだな。」
ウィルさんが空気を読んだ発言をし、それに驚いたのかガルムさんがそれに応える。
そして、私はガルムさんに未だに抱えられながら、席へと向かった。その間、通りすがったほとんどの人にまじまじの見られてしまった。
人にここまで注目されることのなかった私はとても居た堪れない気持ちになった。
席に着くと、ようやくガルムさんから降ろされた。そこで私は促されたよう座ろうとしたが、私の身長は165センチくらいだったので、少し高い椅子に座るのに少し苦労した。それを見たガルムさんが手伝ってくれようとしたが、今まで迷惑しかかけていないので、遠慮しておいた。
席に座ってしばらくすると腰にエプロンをした、女性が現れた。
「注文はきまったかい?」
「サリアさん!じゃあ僕は、コッコのトマト煮で。」
「俺はカウのステーキでお願いするっす!」
「俺も同じくカウのステーキにしよう。ハルはどうする?」
ガルムさん達が思いの外早くメニューを決めたので、未だ何にするか決めていなかった。
私は、今までの人生で外食などしたことがなかったので、相場が分からなかったのだ。
そのため、なるべく安いものをと思い、探していたが、どれも似たような値段で決めかねていた。結果、このお店の人に聞いてみることにした。
「あの、このお店で一番安いものは何でしょうか。」
「おや、見ない顔だね。あぁ~!、あんたはさっき家のが騒いでた子だね!ごめんね、うるさかったでしょ!」
「い、いえ」
家の?てことは、ベルさんとこの女性は夫婦ということなのか?
「ベルとサリアさんは夫婦なんだよ。」
「そうなんですね。」
考えてたことが顔に出ていたのか、レオさんが補足してくれた。
「で、一番安いやつだっけ?それだと卵粥になるけど、大丈夫?」
「ハル、遠慮しなくて大丈夫だぞ?」
隣に座ったガルムさんがこちらの表情を伺うように覗く。
「いえ、遠慮などではなくて……。えっと、サリアさん、私は卵粥でお願いします。」
実際、遠慮していないといえば若干嘘になるが、迷惑をかけたくない思いの方が強いのでそのままお願いした。
「分かったよ。じゃあ、できるまで待っててね!」
サリアさんが注文を受け、料理場へ戻っていく。
「ハル君、本当に良かったんすか?普通に注文してくれて良かったっすよ?」
「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ。」
私はこれ以上私なんかに気を使わなくてもいいと思い、そう言った。
その後、料理が来るまでは、とりとめのない会話を三人が繰り広げ、時折こちらに振っては私が応えるというのを数回繰り返していた。
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