14 / 279
14話
しおりを挟む
「おっ、来た来た!」
レオさんのその声に顔を上げ、視線の方へ目を向けると、そこには大きな盆に大量の料理を乗せた、満面の笑顔のサリアさんがいた。
「はい!おまちどーさん!これが、コッコのトマト煮。こっちがカウのステーキ。」
サリアさんは慣れた手つきで料理を次々に注文した人の元へと運ぶ。コッコは鶏、カウは牛の魔獣
で、それぞれ牧畜に成功している。他にも、豚や数は少ないが、羊の魔獣も牧畜できているそうだ。なので、こうして食卓に並ぶことができている。
ちなみに、今回見た二つの料理は私が調理したことがなかったため、見たことがなかった。
「そしてこれが、卵粥ね。そして、ハルちゃん、これは私からの気持ちね。フフフッ。」
そう言って私の前に卵粥と、大きめのグラスに注がれた綺麗な色の液体が出された。
「えっと……これは?」
「これはね、カウのミルクと果物を混ぜたミックスジュースだよ。味は保証するからね。安心して飲みな。」
「そんな!悪いですよ!」
「いいの、いいの。私の気持ちだから。それに、ハルちゃんは痩せ過ぎだからね、心配しちゃうのよ。」
私が未だ受け取れないと思っているのを察してかサリアさんは言葉を続けた。
「じゃあ、可愛いハルちゃんには、これからも仲良くしてもらおうかな。これでも家の旦那はこの町でトップのガルムさんに次いで実力のある冒険者だからね。困った時は頼ってね。」
そうウィンクまでされて言われてしまうと、引下がざるを得なかった。ただ、一瞬耳に入ったガルムさんの情報には目を見開いた。
「分かりました……。こちらこそよろしくお願いします。」
「じゃあ、冷めないうちに食べてね。ごゆっくり。」
こちらに手を振りながらサリアさんが去っていった。
「では、冷めてしまう前にいただくとするか。」
ガルムさんのその合図と同時に三人は食べ始める。私はその様子をただ眺めていた。そのステーキを幸せそうに頬張るウィルさんとふと目線があった。
「ん?ハル君、食べないんすか?もしかして、口に合わなかったとか?」
思いもよらないウィルさんの言葉に首を大きく振る。
「いえ、そんなことはありません。ただ、自分は皆さんが食べ終わった後に食べようと……。」
「何故だ?一緒に食べれば良いではないか。」
ガルムさんの言葉に私は心の中で首を傾げる。
「私のような者が皆さんと同じ食卓に並ぶなど、恐れ多いですから。」
その言葉に三人は息をのんだ。
「とにかく、お前も食べろ。」
私は短い時間でその言葉の真意を探り答えを見つけた。
「そ、そうですよね。私に見られながらの食事など気分が悪いですよね。そのようなことに気付かず、申し訳ございませんでした。」
「そういうことではないのだが……。」
ガルムさんは苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。私はこれ以上気分を害されないよう、目の前の卵粥を食べ始めた。
初めて口に入れた卵粥はとても優しい味で、体の芯まで温まるような気分がした。伸びた髪が垂れてきた私は、髪を耳にかけ、冷ましながら食べた。
数十年ぶりに食べた温かいご飯は、冷たい食事ばかりとっていた私には少々熱すぎたのだ。
そこでパチリとガルムさんと目が合ってしまう。
どうしたのだろう。何か粗相をしてしまったのだろうか。
謝ろうと口を開いたが、ガルムさんは何事もなかったかのように食事を再開したので、謝るタイミングを見失ってしまった。
私は一人気まずさを感じ、サリアさんがご厚意でくれたミックスジュースを手に取る。
卵粥で熱された舌にそれを冷ますかのような冷たいそれはとても心地よかった。
フルーツは食べ慣れていないので、何が入っているかはイマイチよく分からないが、喉を通るジュースはとても美味しかった。
私が久しぶりの食事に舌鼓を打っている間に、三人は明日のことについて話していたようだ。どうやら、目線を合わせないように私が下を向いて食べていたからか、夢中で食べていると思われたようだ。こうして食事の時間は過ぎていった。
レオさんのその声に顔を上げ、視線の方へ目を向けると、そこには大きな盆に大量の料理を乗せた、満面の笑顔のサリアさんがいた。
「はい!おまちどーさん!これが、コッコのトマト煮。こっちがカウのステーキ。」
サリアさんは慣れた手つきで料理を次々に注文した人の元へと運ぶ。コッコは鶏、カウは牛の魔獣
で、それぞれ牧畜に成功している。他にも、豚や数は少ないが、羊の魔獣も牧畜できているそうだ。なので、こうして食卓に並ぶことができている。
ちなみに、今回見た二つの料理は私が調理したことがなかったため、見たことがなかった。
「そしてこれが、卵粥ね。そして、ハルちゃん、これは私からの気持ちね。フフフッ。」
そう言って私の前に卵粥と、大きめのグラスに注がれた綺麗な色の液体が出された。
「えっと……これは?」
「これはね、カウのミルクと果物を混ぜたミックスジュースだよ。味は保証するからね。安心して飲みな。」
「そんな!悪いですよ!」
「いいの、いいの。私の気持ちだから。それに、ハルちゃんは痩せ過ぎだからね、心配しちゃうのよ。」
私が未だ受け取れないと思っているのを察してかサリアさんは言葉を続けた。
「じゃあ、可愛いハルちゃんには、これからも仲良くしてもらおうかな。これでも家の旦那はこの町でトップのガルムさんに次いで実力のある冒険者だからね。困った時は頼ってね。」
そうウィンクまでされて言われてしまうと、引下がざるを得なかった。ただ、一瞬耳に入ったガルムさんの情報には目を見開いた。
「分かりました……。こちらこそよろしくお願いします。」
「じゃあ、冷めないうちに食べてね。ごゆっくり。」
こちらに手を振りながらサリアさんが去っていった。
「では、冷めてしまう前にいただくとするか。」
ガルムさんのその合図と同時に三人は食べ始める。私はその様子をただ眺めていた。そのステーキを幸せそうに頬張るウィルさんとふと目線があった。
「ん?ハル君、食べないんすか?もしかして、口に合わなかったとか?」
思いもよらないウィルさんの言葉に首を大きく振る。
「いえ、そんなことはありません。ただ、自分は皆さんが食べ終わった後に食べようと……。」
「何故だ?一緒に食べれば良いではないか。」
ガルムさんの言葉に私は心の中で首を傾げる。
「私のような者が皆さんと同じ食卓に並ぶなど、恐れ多いですから。」
その言葉に三人は息をのんだ。
「とにかく、お前も食べろ。」
私は短い時間でその言葉の真意を探り答えを見つけた。
「そ、そうですよね。私に見られながらの食事など気分が悪いですよね。そのようなことに気付かず、申し訳ございませんでした。」
「そういうことではないのだが……。」
ガルムさんは苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。私はこれ以上気分を害されないよう、目の前の卵粥を食べ始めた。
初めて口に入れた卵粥はとても優しい味で、体の芯まで温まるような気分がした。伸びた髪が垂れてきた私は、髪を耳にかけ、冷ましながら食べた。
数十年ぶりに食べた温かいご飯は、冷たい食事ばかりとっていた私には少々熱すぎたのだ。
そこでパチリとガルムさんと目が合ってしまう。
どうしたのだろう。何か粗相をしてしまったのだろうか。
謝ろうと口を開いたが、ガルムさんは何事もなかったかのように食事を再開したので、謝るタイミングを見失ってしまった。
私は一人気まずさを感じ、サリアさんがご厚意でくれたミックスジュースを手に取る。
卵粥で熱された舌にそれを冷ますかのような冷たいそれはとても心地よかった。
フルーツは食べ慣れていないので、何が入っているかはイマイチよく分からないが、喉を通るジュースはとても美味しかった。
私が久しぶりの食事に舌鼓を打っている間に、三人は明日のことについて話していたようだ。どうやら、目線を合わせないように私が下を向いて食べていたからか、夢中で食べていると思われたようだ。こうして食事の時間は過ぎていった。
75
あなたにおすすめの小説
閉ざされた森の秘宝
はちのす
BL
街外れにある<閉ざされた森>に住むアルベールが拾ったのは、今にも息絶えそうな瘦せこけた子供だった。
保護することになった子供に、残酷な世を生きる手立てを教え込むうちに「師匠」として慕われることになるが、その慕情の形は次第に執着に変わっていく──
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。
ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。
ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。
"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。
airria
恋愛
勝手に召喚され
「お前が番候補?」と鼻で笑われ
神獣の前に一応引っ立てられたら
番認定されて
人化した神獣から溺愛されてるけど
全力で逃げ出したい私の話。
コメディ多めのゆるいストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる