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16話 ガルム視点
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もう長いこと借りている自身の宿の部屋に入り、腕の中のハルを下ろす。
「疲れただろう。先にシャワーを浴びてこい。」
その自身の発言にハッとする。ハルの替えの服がない……。今からレオとウィルに服を貸してもらいに行くのも悪いだろう。だからと言ってハルにボロボロな同じ服を着てもらうわけにはいかない。
仕方ないか……。
「お前がシャワーを浴びている間に俺の服だが見繕って置いておく。俺の服で申し訳ないが、良いか?」
「そ、そんな。え、えっと……、ガルムさんの服が嫌というわけではなく……、っこの服のままで大丈夫です。」
そうハルが慌てて言う。気を使わせてしまっただろうか。
「なるべく合うものを選んでおく。その服のままでいられるとこちらが心配になるのだ。」
短い間でわかったことだが、ハルは人を頼ることを知らない。相手に不利益を被ることは避けたい様子だからあえてこの言葉選びをした。これ以上断ろうとしないように。
「わ、分かりました。ではシャワー、お先に失礼します……。」
その言葉に安心した俺はシャワーの場所まで連れ行き、使い方をあらかた伝えた。また、石鹸を使うようにも言った。言わなければ、水だけしか使わなそうな雰囲気がしたからだ。そして俺は、ハルに服を見繕うため部屋に戻る。
悩んだ結果、紐で胸の辺りの調節ができるようなvネックのシャツとこれまた紐で調節ができる半ズボンを選んだ。それを分かりやすい所に置き、ベッドに座り込む。
明日はハルのための物を色々準備するか。
まず、服を最低でも三着は買ってやろう。それに物を入れる鞄も必要そうだ……。そういえば、冒険者になりたいと言っていたな。俺はレオやウィルと同じく反対だが……。
どうしてもというのなら、前衛職ではなく後衛職をやらせてみよう。それなら、多少魔力が使えなければ、いけないだろうから、今日の依頼料を受け取りに行くついでに魔力検査してみるか。
そこまで考えているとハルがシャワーから上がってきた。
「すみません、お先失礼しました。」
案の定、俺が用意した服はハルにはブカブカで、シャツは袖をまくらなければ手が見えないほど、半ズボンは長ズボンに見えるほどだ。シャツに関してはvの字の紐を最大まで引っ張って結んでも胸の中ほどまで見えてしまっている。湯上がりの湯気が体から立ち昇り、艶を多少取り戻した濡れた髪が、より見てはいけないものを見てしまった気分にさせる。
外に出る時は今日と同じく布を被せてやろう。
そう思いながら、俺の服を着たハルをまじまじと見てしまった。そこには謎の優越感もあった。
「あの、服もありがとうございます。……どうかなさいましたか?」
俺は慌てて咳払いをし、何でもないと言う。
「俺は今からシャワーに入るが、先に寝ていて良いぞ。安心しろ、俺はソファで寝る。」
「そんな、私は床で大丈夫です。今までで慣れているのでガルムさんがベッドを使ってください。」
「ダメだ。お前がベッドで寝ろ。そうでなければ明日、俺が怒られてしまう。床でなんて論外だ。」
「せ、せめて、私はソファで寝ます。ベッドでは私は眠れません。」
「諦めろ。ハルはベッドで寝ろ。良いな。」
そう言って俺はハルに背を向け、着替えを持ってシャワーに向かった。仮にハルが諦めずにベッド以外で寝ていたら、ベッドに運んでやろうと考えていた。
服を脱ぎ、シャワーへの扉を開ける。
今日は色々あったな……。
そう思いながら、シャワーの栓を開き、熱い湯を被る。湯を浴び、薄めを開けながら、上を見る。そして、ふと先ほど熊の蔵で食事をしていた時のことを思い出す。
長く全てを飲み込んでしまいそうな黒髪を耳にかけ、スプーンに掬った卵粥を冷ますように息を吹きかける。そしてそれが白く透き通った肌にある柔らかそうなピンクの唇に迎えられ……。
何を考えているのだ!俺は!
俺は慌てて首を振り湯の温度を下げ、多少熱を持ち始めた体を冷ます。そして、誰もいないが咳払いをする。
髪留めも買ってやったほうが良いな。
すっかり熱も冷めると、体を拭き、着替えをすます。今日着た服を慣れた手つきで魔道具を動かす。一度動かせば、洗いも乾かしも完璧に行う優れものだ。
部屋に戻ると案の定、ハルはベッドで横になっていた。よく見るとハルは涙で頬を濡らし、震えていた。
俺は慌ててハルの元へと近づく。すると、今にも消えそうな声が聞こえてきた。
「ごめ、……なさ、……、ゆ………る、……s、て。も、……いや……。……ささ、……なぃ……、で……。」
寝息に紛れたその声は俺を動揺させた。
『刺さないで』だとっ……!?確かに血を提供していたと言っていたが、無理やり血を流させられていたのか!?
自分のなかで怒りが沸々と上がっているのを感じたが、それよりもハルが心配だ。俺は、急いで持っていたタオルを放り出し、ハルをベッドへと移した。
そして、自分の体を滑り込ませ、ハルの顔を頭を撫でやすいよう胸へと抱き寄せる。首に相手の匂いをつけるのは求愛行動だが、そんなこと、今は知ったことではない。
「大丈夫だ、安心しろ。俺がいる。俺がいる限りお前は俺が守ってやる。」
ハルの頭を撫でながら、囁くように声をかける。安心させるように、落ち着けるように。何度も何度も撫でてやる。
「あた、……たか、い。」
ふと抱き寄せたハルの口から怯えた音色の消えた声が聞こえる。俺は安心し、ハルを優しく、だが離さぬように抱き寄せてから、瞼を閉じた。
「疲れただろう。先にシャワーを浴びてこい。」
その自身の発言にハッとする。ハルの替えの服がない……。今からレオとウィルに服を貸してもらいに行くのも悪いだろう。だからと言ってハルにボロボロな同じ服を着てもらうわけにはいかない。
仕方ないか……。
「お前がシャワーを浴びている間に俺の服だが見繕って置いておく。俺の服で申し訳ないが、良いか?」
「そ、そんな。え、えっと……、ガルムさんの服が嫌というわけではなく……、っこの服のままで大丈夫です。」
そうハルが慌てて言う。気を使わせてしまっただろうか。
「なるべく合うものを選んでおく。その服のままでいられるとこちらが心配になるのだ。」
短い間でわかったことだが、ハルは人を頼ることを知らない。相手に不利益を被ることは避けたい様子だからあえてこの言葉選びをした。これ以上断ろうとしないように。
「わ、分かりました。ではシャワー、お先に失礼します……。」
その言葉に安心した俺はシャワーの場所まで連れ行き、使い方をあらかた伝えた。また、石鹸を使うようにも言った。言わなければ、水だけしか使わなそうな雰囲気がしたからだ。そして俺は、ハルに服を見繕うため部屋に戻る。
悩んだ結果、紐で胸の辺りの調節ができるようなvネックのシャツとこれまた紐で調節ができる半ズボンを選んだ。それを分かりやすい所に置き、ベッドに座り込む。
明日はハルのための物を色々準備するか。
まず、服を最低でも三着は買ってやろう。それに物を入れる鞄も必要そうだ……。そういえば、冒険者になりたいと言っていたな。俺はレオやウィルと同じく反対だが……。
どうしてもというのなら、前衛職ではなく後衛職をやらせてみよう。それなら、多少魔力が使えなければ、いけないだろうから、今日の依頼料を受け取りに行くついでに魔力検査してみるか。
そこまで考えているとハルがシャワーから上がってきた。
「すみません、お先失礼しました。」
案の定、俺が用意した服はハルにはブカブカで、シャツは袖をまくらなければ手が見えないほど、半ズボンは長ズボンに見えるほどだ。シャツに関してはvの字の紐を最大まで引っ張って結んでも胸の中ほどまで見えてしまっている。湯上がりの湯気が体から立ち昇り、艶を多少取り戻した濡れた髪が、より見てはいけないものを見てしまった気分にさせる。
外に出る時は今日と同じく布を被せてやろう。
そう思いながら、俺の服を着たハルをまじまじと見てしまった。そこには謎の優越感もあった。
「あの、服もありがとうございます。……どうかなさいましたか?」
俺は慌てて咳払いをし、何でもないと言う。
「俺は今からシャワーに入るが、先に寝ていて良いぞ。安心しろ、俺はソファで寝る。」
「そんな、私は床で大丈夫です。今までで慣れているのでガルムさんがベッドを使ってください。」
「ダメだ。お前がベッドで寝ろ。そうでなければ明日、俺が怒られてしまう。床でなんて論外だ。」
「せ、せめて、私はソファで寝ます。ベッドでは私は眠れません。」
「諦めろ。ハルはベッドで寝ろ。良いな。」
そう言って俺はハルに背を向け、着替えを持ってシャワーに向かった。仮にハルが諦めずにベッド以外で寝ていたら、ベッドに運んでやろうと考えていた。
服を脱ぎ、シャワーへの扉を開ける。
今日は色々あったな……。
そう思いながら、シャワーの栓を開き、熱い湯を被る。湯を浴び、薄めを開けながら、上を見る。そして、ふと先ほど熊の蔵で食事をしていた時のことを思い出す。
長く全てを飲み込んでしまいそうな黒髪を耳にかけ、スプーンに掬った卵粥を冷ますように息を吹きかける。そしてそれが白く透き通った肌にある柔らかそうなピンクの唇に迎えられ……。
何を考えているのだ!俺は!
俺は慌てて首を振り湯の温度を下げ、多少熱を持ち始めた体を冷ます。そして、誰もいないが咳払いをする。
髪留めも買ってやったほうが良いな。
すっかり熱も冷めると、体を拭き、着替えをすます。今日着た服を慣れた手つきで魔道具を動かす。一度動かせば、洗いも乾かしも完璧に行う優れものだ。
部屋に戻ると案の定、ハルはベッドで横になっていた。よく見るとハルは涙で頬を濡らし、震えていた。
俺は慌ててハルの元へと近づく。すると、今にも消えそうな声が聞こえてきた。
「ごめ、……なさ、……、ゆ………る、……s、て。も、……いや……。……ささ、……なぃ……、で……。」
寝息に紛れたその声は俺を動揺させた。
『刺さないで』だとっ……!?確かに血を提供していたと言っていたが、無理やり血を流させられていたのか!?
自分のなかで怒りが沸々と上がっているのを感じたが、それよりもハルが心配だ。俺は、急いで持っていたタオルを放り出し、ハルをベッドへと移した。
そして、自分の体を滑り込ませ、ハルの顔を頭を撫でやすいよう胸へと抱き寄せる。首に相手の匂いをつけるのは求愛行動だが、そんなこと、今は知ったことではない。
「大丈夫だ、安心しろ。俺がいる。俺がいる限りお前は俺が守ってやる。」
ハルの頭を撫でながら、囁くように声をかける。安心させるように、落ち着けるように。何度も何度も撫でてやる。
「あた、……たか、い。」
ふと抱き寄せたハルの口から怯えた音色の消えた声が聞こえる。俺は安心し、ハルを優しく、だが離さぬように抱き寄せてから、瞼を閉じた。
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