16 / 300
16話 ガルム視点
しおりを挟む
もう長いこと借りている自身の宿の部屋に入り、腕の中のハルを下ろす。
「疲れただろう。先にシャワーを浴びてこい。」
その自身の発言にハッとする。ハルの替えの服がない……。今からレオとウィルに服を貸してもらいに行くのも悪いだろう。だからと言ってハルにボロボロな同じ服を着てもらうわけにはいかない。
仕方ないか……。
「お前がシャワーを浴びている間に俺の服だが見繕って置いておく。俺の服で申し訳ないが、良いか?」
「そ、そんな。え、えっと……、ガルムさんの服が嫌というわけではなく……、っこの服のままで大丈夫です。」
そうハルが慌てて言う。気を使わせてしまっただろうか。
「なるべく合うものを選んでおく。その服のままでいられるとこちらが心配になるのだ。」
短い間でわかったことだが、ハルは人を頼ることを知らない。相手に不利益を被ることは避けたい様子だからあえてこの言葉選びをした。これ以上断ろうとしないように。
「わ、分かりました。ではシャワー、お先に失礼します……。」
その言葉に安心した俺はシャワーの場所まで連れ行き、使い方をあらかた伝えた。また、石鹸を使うようにも言った。言わなければ、水だけしか使わなそうな雰囲気がしたからだ。そして俺は、ハルに服を見繕うため部屋に戻る。
悩んだ結果、紐で胸の辺りの調節ができるようなvネックのシャツとこれまた紐で調節ができる半ズボンを選んだ。それを分かりやすい所に置き、ベッドに座り込む。
明日はハルのための物を色々準備するか。
まず、服を最低でも三着は買ってやろう。それに物を入れる鞄も必要そうだ……。そういえば、冒険者になりたいと言っていたな。俺はレオやウィルと同じく反対だが……。
どうしてもというのなら、前衛職ではなく後衛職をやらせてみよう。それなら、多少魔力が使えなければ、いけないだろうから、今日の依頼料を受け取りに行くついでに魔力検査してみるか。
そこまで考えているとハルがシャワーから上がってきた。
「すみません、お先失礼しました。」
案の定、俺が用意した服はハルにはブカブカで、シャツは袖をまくらなければ手が見えないほど、半ズボンは長ズボンに見えるほどだ。シャツに関してはvの字の紐を最大まで引っ張って結んでも胸の中ほどまで見えてしまっている。湯上がりの湯気が体から立ち昇り、艶を多少取り戻した濡れた髪が、より見てはいけないものを見てしまった気分にさせる。
外に出る時は今日と同じく布を被せてやろう。
そう思いながら、俺の服を着たハルをまじまじと見てしまった。そこには謎の優越感もあった。
「あの、服もありがとうございます。……どうかなさいましたか?」
俺は慌てて咳払いをし、何でもないと言う。
「俺は今からシャワーに入るが、先に寝ていて良いぞ。安心しろ、俺はソファで寝る。」
「そんな、私は床で大丈夫です。今までで慣れているのでガルムさんがベッドを使ってください。」
「ダメだ。お前がベッドで寝ろ。そうでなければ明日、俺が怒られてしまう。床でなんて論外だ。」
「せ、せめて、私はソファで寝ます。ベッドでは私は眠れません。」
「諦めろ。ハルはベッドで寝ろ。良いな。」
そう言って俺はハルに背を向け、着替えを持ってシャワーに向かった。仮にハルが諦めずにベッド以外で寝ていたら、ベッドに運んでやろうと考えていた。
服を脱ぎ、シャワーへの扉を開ける。
今日は色々あったな……。
そう思いながら、シャワーの栓を開き、熱い湯を被る。湯を浴び、薄めを開けながら、上を見る。そして、ふと先ほど熊の蔵で食事をしていた時のことを思い出す。
長く全てを飲み込んでしまいそうな黒髪を耳にかけ、スプーンに掬った卵粥を冷ますように息を吹きかける。そしてそれが白く透き通った肌にある柔らかそうなピンクの唇に迎えられ……。
何を考えているのだ!俺は!
俺は慌てて首を振り湯の温度を下げ、多少熱を持ち始めた体を冷ます。そして、誰もいないが咳払いをする。
髪留めも買ってやったほうが良いな。
すっかり熱も冷めると、体を拭き、着替えをすます。今日着た服を慣れた手つきで魔道具を動かす。一度動かせば、洗いも乾かしも完璧に行う優れものだ。
部屋に戻ると案の定、ハルはベッドで横になっていた。よく見るとハルは涙で頬を濡らし、震えていた。
俺は慌ててハルの元へと近づく。すると、今にも消えそうな声が聞こえてきた。
「ごめ、……なさ、……、ゆ………る、……s、て。も、……いや……。……ささ、……なぃ……、で……。」
寝息に紛れたその声は俺を動揺させた。
『刺さないで』だとっ……!?確かに血を提供していたと言っていたが、無理やり血を流させられていたのか!?
自分のなかで怒りが沸々と上がっているのを感じたが、それよりもハルが心配だ。俺は、急いで持っていたタオルを放り出し、ハルをベッドへと移した。
そして、自分の体を滑り込ませ、ハルの顔を頭を撫でやすいよう胸へと抱き寄せる。首に相手の匂いをつけるのは求愛行動だが、そんなこと、今は知ったことではない。
「大丈夫だ、安心しろ。俺がいる。俺がいる限りお前は俺が守ってやる。」
ハルの頭を撫でながら、囁くように声をかける。安心させるように、落ち着けるように。何度も何度も撫でてやる。
「あた、……たか、い。」
ふと抱き寄せたハルの口から怯えた音色の消えた声が聞こえる。俺は安心し、ハルを優しく、だが離さぬように抱き寄せてから、瞼を閉じた。
「疲れただろう。先にシャワーを浴びてこい。」
その自身の発言にハッとする。ハルの替えの服がない……。今からレオとウィルに服を貸してもらいに行くのも悪いだろう。だからと言ってハルにボロボロな同じ服を着てもらうわけにはいかない。
仕方ないか……。
「お前がシャワーを浴びている間に俺の服だが見繕って置いておく。俺の服で申し訳ないが、良いか?」
「そ、そんな。え、えっと……、ガルムさんの服が嫌というわけではなく……、っこの服のままで大丈夫です。」
そうハルが慌てて言う。気を使わせてしまっただろうか。
「なるべく合うものを選んでおく。その服のままでいられるとこちらが心配になるのだ。」
短い間でわかったことだが、ハルは人を頼ることを知らない。相手に不利益を被ることは避けたい様子だからあえてこの言葉選びをした。これ以上断ろうとしないように。
「わ、分かりました。ではシャワー、お先に失礼します……。」
その言葉に安心した俺はシャワーの場所まで連れ行き、使い方をあらかた伝えた。また、石鹸を使うようにも言った。言わなければ、水だけしか使わなそうな雰囲気がしたからだ。そして俺は、ハルに服を見繕うため部屋に戻る。
悩んだ結果、紐で胸の辺りの調節ができるようなvネックのシャツとこれまた紐で調節ができる半ズボンを選んだ。それを分かりやすい所に置き、ベッドに座り込む。
明日はハルのための物を色々準備するか。
まず、服を最低でも三着は買ってやろう。それに物を入れる鞄も必要そうだ……。そういえば、冒険者になりたいと言っていたな。俺はレオやウィルと同じく反対だが……。
どうしてもというのなら、前衛職ではなく後衛職をやらせてみよう。それなら、多少魔力が使えなければ、いけないだろうから、今日の依頼料を受け取りに行くついでに魔力検査してみるか。
そこまで考えているとハルがシャワーから上がってきた。
「すみません、お先失礼しました。」
案の定、俺が用意した服はハルにはブカブカで、シャツは袖をまくらなければ手が見えないほど、半ズボンは長ズボンに見えるほどだ。シャツに関してはvの字の紐を最大まで引っ張って結んでも胸の中ほどまで見えてしまっている。湯上がりの湯気が体から立ち昇り、艶を多少取り戻した濡れた髪が、より見てはいけないものを見てしまった気分にさせる。
外に出る時は今日と同じく布を被せてやろう。
そう思いながら、俺の服を着たハルをまじまじと見てしまった。そこには謎の優越感もあった。
「あの、服もありがとうございます。……どうかなさいましたか?」
俺は慌てて咳払いをし、何でもないと言う。
「俺は今からシャワーに入るが、先に寝ていて良いぞ。安心しろ、俺はソファで寝る。」
「そんな、私は床で大丈夫です。今までで慣れているのでガルムさんがベッドを使ってください。」
「ダメだ。お前がベッドで寝ろ。そうでなければ明日、俺が怒られてしまう。床でなんて論外だ。」
「せ、せめて、私はソファで寝ます。ベッドでは私は眠れません。」
「諦めろ。ハルはベッドで寝ろ。良いな。」
そう言って俺はハルに背を向け、着替えを持ってシャワーに向かった。仮にハルが諦めずにベッド以外で寝ていたら、ベッドに運んでやろうと考えていた。
服を脱ぎ、シャワーへの扉を開ける。
今日は色々あったな……。
そう思いながら、シャワーの栓を開き、熱い湯を被る。湯を浴び、薄めを開けながら、上を見る。そして、ふと先ほど熊の蔵で食事をしていた時のことを思い出す。
長く全てを飲み込んでしまいそうな黒髪を耳にかけ、スプーンに掬った卵粥を冷ますように息を吹きかける。そしてそれが白く透き通った肌にある柔らかそうなピンクの唇に迎えられ……。
何を考えているのだ!俺は!
俺は慌てて首を振り湯の温度を下げ、多少熱を持ち始めた体を冷ます。そして、誰もいないが咳払いをする。
髪留めも買ってやったほうが良いな。
すっかり熱も冷めると、体を拭き、着替えをすます。今日着た服を慣れた手つきで魔道具を動かす。一度動かせば、洗いも乾かしも完璧に行う優れものだ。
部屋に戻ると案の定、ハルはベッドで横になっていた。よく見るとハルは涙で頬を濡らし、震えていた。
俺は慌ててハルの元へと近づく。すると、今にも消えそうな声が聞こえてきた。
「ごめ、……なさ、……、ゆ………る、……s、て。も、……いや……。……ささ、……なぃ……、で……。」
寝息に紛れたその声は俺を動揺させた。
『刺さないで』だとっ……!?確かに血を提供していたと言っていたが、無理やり血を流させられていたのか!?
自分のなかで怒りが沸々と上がっているのを感じたが、それよりもハルが心配だ。俺は、急いで持っていたタオルを放り出し、ハルをベッドへと移した。
そして、自分の体を滑り込ませ、ハルの顔を頭を撫でやすいよう胸へと抱き寄せる。首に相手の匂いをつけるのは求愛行動だが、そんなこと、今は知ったことではない。
「大丈夫だ、安心しろ。俺がいる。俺がいる限りお前は俺が守ってやる。」
ハルの頭を撫でながら、囁くように声をかける。安心させるように、落ち着けるように。何度も何度も撫でてやる。
「あた、……たか、い。」
ふと抱き寄せたハルの口から怯えた音色の消えた声が聞こえる。俺は安心し、ハルを優しく、だが離さぬように抱き寄せてから、瞼を閉じた。
96
あなたにおすすめの小説
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
冷徹王子と身代わりの妃
ミンク
BL
精霊に愛された大国カナーディル。
暖かく住みやすい気候、豊富な水源、恵まれた土壌、
述べれば限りないほどの精霊の加護を建国以来変わらず守り続けている。
カナーディルでは加護を受け続けるために、かの伝説に乗っ取り「王族は精霊をルーツとする一族の男子と婚姻を結ぶ」という仕来りを長年守り続けていた。
年に一度の精霊祭りの日、城では、仕来り通り第二王子の婚姻式が厳粛に執り行われていた。
王族や宰相、教会、貴族、騎士達が見守る中、精霊の血を引く家に生を受けたユウト・マグドー(17)は名実ともにカナーディル第二王子の妃となった。
「氷の情炎」という奇妙な二つ名のついたリオルド・カナーディル(20)の元へと、さまざまな思惑の末に嫁がされていく。
第一王子に嫁いだ自身の兄クリスの身代わり品として。
王家に嫁いだ後も様々な事件がユウトを襲う。
身代わりとして嫁ぎ、運命に翻弄されながらも
愛の為に突き進んで行くストーリー
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
影の織り手たち
あおごろも
BL
ー『君と織る光』前日譚ー
士官学院。
若き血統と才能が集い、中枢を担う者たちが育つ場所で、彼らは出会い、交差する。
交わされた言葉、触れた肌の温度。
数度の夜と、たった一度の夜。
選び取った距離、手放した想い。
未来が光を織るその前に、
密やかに交差した、影の物語。
2025/9/22完結
以降は番外エピソードを更新
【完結】私の番には飼い主がいる
堀 和三盆
恋愛
獣人には番と呼ばれる、生まれながらに決められた伴侶がどこかにいる。番が番に持つ愛情は深く、出会ったが最後その相手しか愛せない。
私――猫獣人のフルールも幼馴染で同じ猫獣人であるヴァイスが番であることになんとなく気が付いていた。精神と体の成長と共に、少しずつお互いの番としての自覚が芽生え、信頼関係と愛情を同時に育てていくことが出来る幼馴染の番は理想的だと言われている。お互いがお互いだけを愛しながら、選択を間違えることなく人生の多くを共に過ごせるのだから。
だから、わたしもツイていると、幸せになれると思っていた。しかし――全てにおいて『番』が優先される獣人社会。その中で唯一その序列を崩す例外がある。
『飼い主』の存在だ。
獣の本性か、人間としての理性か。獣人は受けた恩を忘れない。特に命を助けられたりすると、恩を返そうと相手に忠誠を尽くす。まるで、騎士が主に剣を捧げるように。命を助けられた獣人は飼い主に忠誠を尽くすのだ。
この世界においての飼い主は番の存在を脅かすことはない。ただし――。ごく稀に前世の記憶を持って産まれてくる獣人がいる。そして、アチラでは飼い主が庇護下にある獣の『番』を選ぶ権限があるのだそうだ。
例え生まれ変わっても。飼い主に忠誠を誓った獣人は飼い主に許可をされないと番えない。
そう。私の番は前世持ち。
そして。
―――『私の番には飼い主がいる』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる