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1章 訣別
24-1. 最後の戦い
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前話に引き続き戦闘シーンが超地味です。
________________________
「――国王軍、再び森外縁に展開!」
その一報が入ったのは、前回の戦いから三か月ほど過ぎた頃だった。長引けば春小麦の種蒔きなどに影響が出る時期でもあるから、短期決戦を考えているのだろうと推測される。
先の戦いでは森を全体的に焼きながら縮小させていたが、今回は道を作るように細く森を切り開いていく。
勿論、辺境側は黙って見ていることなどしない。夜、森から兵士が引き上げた後に上空から生肉を投げ獣を誘き寄せるほか、昼間は上空から攻撃を仕掛けた。結果、思うように森に道を作ることは叶わず、国王軍による辺境攻略は遅々として進んでいない。
「上手く撃退できているようで、何かがおかしい……」
状況的に辺境有利とはいえ、無謀ともいえる国王軍のやりようが腑に落ちないのはマリエ一人だけではなく、辺境側の誰もが感じていることだった。
「どこかに、聖属性の結界を張りながら森を抜ける部隊がいたりしないかしら?」
「可能性はあるが、これだけ広いとどこを抜けているか見つけるのは困難だろう……」
イレネーの言葉に、やはりという気持ちが強くなる。
上空から森の中を歩く人物を見つけるのは難しい。低空飛行をすればもしかしたらみつかるかもしれないという程度だ。そして森の長さは百里ではきかない。魔力探知をしようにも、魔力の発生源の多い森では、目視よりマシという程度に難しかった。森の浅い位置――辺境側から入って夕暮れまでに戻ってこられるくらいの範囲は、人が分け入りながら地上を行くが、未だ発見の報はない。
前回の戦いの後、城壁からワイバーンを飛ばすのでは効率が悪いと、かつての外縁、辺境側から十里ほどの場所にいくつかの塔を建てて拠点にしている。
そこからも偵察を出して、ようやく森の中を行く兵士を発見したのは、一報が入ってから十日後だった。
『四の塔付近に敵三百を中心に百ほどの部隊が複数展開――』
通信魔法で次々と入る報告に、城壁の指令室は机に広げられた地図の上に敵を示す駒が乗せられていく。屋敷に待機するマリエも、領主の執務室で同じように父と地図をみながら状況を確認する。
約十里間隔で建てられた塔が十四ある。四の番号が振られたのはマンティアルグ辺境伯領の東部だった。道を作ろうと森を切り開いていたのはフォートレル辺境伯領の東、そもまま最短距離で辺境に到達した場合は六の塔に到達する場所であり、陽動なのは誰の目からも明らかだった。
『四の塔から撤退、崩壊させます――』
塔は魔獣の体当たりにも耐えられるよう堅牢な作りであり、安全な休息地帯として聖魔法による結界も十分だ。
しかし戦時、敵に奪取されれば辺境側に不利になるため、崩壊用の魔法陣を仕込んである。交戦した際は速やかに撤退し、敵兵もろとも崩壊させる。
――四の塔付近だとエドモンさんが一番近い位置ね。
城壁には辺境伯家の面子が何人も控えていた。
塔には投石用の石が用意している。退避後は上空から投石して、更に被害を拡大させている筈だ。国王軍と同じように地に下りて戦えば、敵の状況をより把握できるけど、味方の被害も増える。
だから上空から安全を優先しているし、殲滅させるよりも消耗させることを優先していた。第二城壁の足元は目隠しになるような高い木々はなく城壁に控えている騎士たちから丸見えだ。一旦、森を抜けた形になる場所から前に進むのは難しい。森の中を大型の兵器を移動させるのは現実的ではなく、歩兵だけで攻城戦をしかけるのは無茶でしかなかった。無論、その場で攻城兵器を作ろうとしても阻止が可能だ。
――無謀だと思うけど、森の幅が以前よりほんの少し広がっただけだと思っているからこそ……かな?
国王軍は塔の奪取に失敗した後、また森の中に消え、再び現れたのは更に六日ほど過ぎた後だった。
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「――国王軍、再び森外縁に展開!」
その一報が入ったのは、前回の戦いから三か月ほど過ぎた頃だった。長引けば春小麦の種蒔きなどに影響が出る時期でもあるから、短期決戦を考えているのだろうと推測される。
先の戦いでは森を全体的に焼きながら縮小させていたが、今回は道を作るように細く森を切り開いていく。
勿論、辺境側は黙って見ていることなどしない。夜、森から兵士が引き上げた後に上空から生肉を投げ獣を誘き寄せるほか、昼間は上空から攻撃を仕掛けた。結果、思うように森に道を作ることは叶わず、国王軍による辺境攻略は遅々として進んでいない。
「上手く撃退できているようで、何かがおかしい……」
状況的に辺境有利とはいえ、無謀ともいえる国王軍のやりようが腑に落ちないのはマリエ一人だけではなく、辺境側の誰もが感じていることだった。
「どこかに、聖属性の結界を張りながら森を抜ける部隊がいたりしないかしら?」
「可能性はあるが、これだけ広いとどこを抜けているか見つけるのは困難だろう……」
イレネーの言葉に、やはりという気持ちが強くなる。
上空から森の中を歩く人物を見つけるのは難しい。低空飛行をすればもしかしたらみつかるかもしれないという程度だ。そして森の長さは百里ではきかない。魔力探知をしようにも、魔力の発生源の多い森では、目視よりマシという程度に難しかった。森の浅い位置――辺境側から入って夕暮れまでに戻ってこられるくらいの範囲は、人が分け入りながら地上を行くが、未だ発見の報はない。
前回の戦いの後、城壁からワイバーンを飛ばすのでは効率が悪いと、かつての外縁、辺境側から十里ほどの場所にいくつかの塔を建てて拠点にしている。
そこからも偵察を出して、ようやく森の中を行く兵士を発見したのは、一報が入ってから十日後だった。
『四の塔付近に敵三百を中心に百ほどの部隊が複数展開――』
通信魔法で次々と入る報告に、城壁の指令室は机に広げられた地図の上に敵を示す駒が乗せられていく。屋敷に待機するマリエも、領主の執務室で同じように父と地図をみながら状況を確認する。
約十里間隔で建てられた塔が十四ある。四の番号が振られたのはマンティアルグ辺境伯領の東部だった。道を作ろうと森を切り開いていたのはフォートレル辺境伯領の東、そもまま最短距離で辺境に到達した場合は六の塔に到達する場所であり、陽動なのは誰の目からも明らかだった。
『四の塔から撤退、崩壊させます――』
塔は魔獣の体当たりにも耐えられるよう堅牢な作りであり、安全な休息地帯として聖魔法による結界も十分だ。
しかし戦時、敵に奪取されれば辺境側に不利になるため、崩壊用の魔法陣を仕込んである。交戦した際は速やかに撤退し、敵兵もろとも崩壊させる。
――四の塔付近だとエドモンさんが一番近い位置ね。
城壁には辺境伯家の面子が何人も控えていた。
塔には投石用の石が用意している。退避後は上空から投石して、更に被害を拡大させている筈だ。国王軍と同じように地に下りて戦えば、敵の状況をより把握できるけど、味方の被害も増える。
だから上空から安全を優先しているし、殲滅させるよりも消耗させることを優先していた。第二城壁の足元は目隠しになるような高い木々はなく城壁に控えている騎士たちから丸見えだ。一旦、森を抜けた形になる場所から前に進むのは難しい。森の中を大型の兵器を移動させるのは現実的ではなく、歩兵だけで攻城戦をしかけるのは無茶でしかなかった。無論、その場で攻城兵器を作ろうとしても阻止が可能だ。
――無謀だと思うけど、森の幅が以前よりほんの少し広がっただけだと思っているからこそ……かな?
国王軍は塔の奪取に失敗した後、また森の中に消え、再び現れたのは更に六日ほど過ぎた後だった。
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