トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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16章※

13

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 一洋の手はゆるやかに志貴の欲望を扱き、焦らすことなく絶頂に導いていく。異形の快楽で身も心も擦り切れてしまった志貴には、恥じらう気力すら残っていない。男の手に唆されるまま、快楽の階を駆け上がっていく。

「はあぁ、……ァ! アァ、アンッ!」

 薄く、勢いはなくなっても、精を吐く瞬間は尻がぎゅっと締まった。そのせいで、ちょうど前立腺に当たっていた葡萄を強く締めつけてしまい、男の指を思い出して濡れた声で鳴いてしまう。
 快感に悶えるほどに葡萄は転がり、その動きに脆いしこりを何度も揉まれ、膝から力が抜け落ちる。頽れそうになったところを抱きとめた一洋に「よくできたな」と褒められて、志貴は恍惚としながら頷いた。

「ほら、あと少し頑張るんだ」
「は、い……。んっ、……ぅくっ、……はぁ、はあ……っ」

 再び男の首に腕を巻きつけて体を支え、震える膝を宥めながら、葡萄を外に押し出していく。圧迫感が減った分、粘膜を滑る感触が生々しく、何度も喉が引き攣った。

(……あと、少し……あと、すこしで、……らくに……なれる……)

 十二の鐘はとっくに鳴り終わり、新年はその歩を進めている。口も利けなくなるほど快楽に溺れ、『薬』の時間も終わりが近づいている。あと少しで、安寧の中に深い眠りを得られるのだ――一洋の腕に包まれて。
 そう自らを励まし、排泄と紙一重の異常な悦楽に鳥肌を立てながら、遠のきそうになる意識を必死に掻き集める。しかしそれも、最後の一粒が内側から穴を開き、ぽとりと浴槽の底に落ちた時が限界だった。

「あアァァ―――……」

 ガクリ、と濡れた体がすべての力を失う。
 一洋に抱き締められながら墜落するように意識を手放した志貴は、快楽に染め上げられた――しかしどこか満足気な微笑みを浮かべていた。

 どんな歪な形でもいい。どんなことでも耐えて、応えてみせる。
 それを一洋が望むなら――執着を深め、志貴から離れられなくなるなら。
 それで、心の底から求める一つを手にすることができるなら。
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