【完結】后狩り

音羽夏生

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融点

8

 皇帝の御前で『ジュリアとロザーリオ』を上演する日が訪れた。
 翻案と基本の演出のみを担当するはずだったシェルも、リュートの演奏で参加することになっていた。
 あの恐ろしい夜が明け、リンネ大公邸から戻った皇帝は、変わり果てたシェルの姿に激怒した。
 去勢手術を手配した女官長を罷免し牢につなぎ、皇后付の医官は別の者に替え、御殿勤めの宦官二人も下働きに落として、シェルの目に触れないようにした。
 女官長が口にした「御旨」とは、第一皇女の御旨だったのである。
 運命を司る女神のように現れたウルリカは、『R』の使いで皇宮に赴いた後、女官長の巧妙な妨害によりシェルの側へ戻れずにいた。
『氷の騎士』と揶揄される自分がやけに呼び止められることを不審に思い、駆け戻った外殿にシェルの姿はなく、すぐさま最も危惧すべき医院に走ったのだという。

「もっと警戒すべきでした。ハルディス様がどのような御方か、一番よく知るのは私ですのに」

 非力な医官と宦官など、女将軍の敵ではない。無言の剣先でウルリカはその場を制圧し、間一髪でシェルの肉体は損なわれることはなかった。
 しかし心が受けた傷は深く、体にも現れ、一夜にしてシェルはすっかり窶れてしまった。目覚めた後も生気に欠け、元々乏しかった表情はさらに平坦になった。
感想 78

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