【完結】后狩り

音羽夏生

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初光

12

 幼い頃から師とも父とも慕うリベルトなら、帝国にも詳しく相談相手として適任と思われた。その彼に、皇帝の執着も肉体の不能も、今だけのことだと喝を入れてほしい。ミレニオに呼び戻し、外交顧問として廷臣の一員となってもらえたら、どれほど心強いだろう。
 そのためには、懸案であるクリスティーナの立后を見届けなければならないのだが──。
 気分転換に両開きのガラス戸を開け、シェルは庭園に面したテラスに出た。
 悩みはあっても馬車旅の疲れのせいで、昨夜は吸い込まれるように眠りに落ち、目覚めは軽やかで、朝食もしっかり摂れた。今日は随員たちにも休むように伝えてあり、侍従が交代で隣室に控えるのみである。
 そもそも「まったく手の掛からない陛下」と評されているシェルは、自分でできることは一人で済ませるため、着替えも入浴も侍従の手を借りていない。男に触れられることにはいまだ嫌悪感があり、男として機能しない体を見られたくないというくらい引け目もあった。

(そういえば……)

 当時皇太子だった皇帝に初めて口づけられ、抱き締められた時、不思議と嫌悪は感じなかった。今思えばあの頃から、恐れはしても、たった一人の特別な御方だったのだ。
 三ヵ月ぶりの再会を前に、余計なことを改めて思い知ってしまった。
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