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后狩り <破>
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「長らえたいなら、御心という王国に誰も住まわせないことです。ルチアは国境なき国の王だった。彼女に魅了された者は誰もが膝を折り、王の翼の下に集い、王の愛を乞うた。だが、その愛が太陽のように注がれても、より強い光を渇望する者は現れる。王は、身の程知らずの捧げる愛を無造作に飲み干し、そのせいで死んだのだ──ともに馬に乗り秘密を分け合った夫を、最愛の者としなかったせいで」
汚泥をすべて沈めた、上澄みのような目をした父に、シェルは言いようのない不安を抱いた。
これが父の素顔なら、あまりにも透き通り底の見えない淵のようで──その静謐さが恐ろしい。
「私には、あの女こそがルチアの命を奪った仇だった。妃となり御子を儲けながら、いつまでもルチアを女神のように崇め支えとしたあの女……。そのせいでルチアは──光り輝く私の王は、囚われた民を見捨てることができなかった」
「父、上……?」
縋りつこうと、シェルは父に歩み寄った。
闇深い過去を口にしながら、イリスは真っ直ぐに、そして穏やかにシェルを見つめている。
「あの女もその血を受け継ぐ御子も、生かしておくつもりはなかった。先帝陛下が何を言い残されようと、私は悔いていない。悔いているとしたら、あの女の血筋を絶やせなかったことだ」
近寄る息子を床に突き飛ばし、イリスはエーヴェルト目掛けて突進した。
その手には、短剣。──蝋燭の灯りを受け、鈍く光る白刃。
「父上‼︎」
イリスとエーヴェルトの影が重なるその時──一発の銃声が地下に轟いた。
汚泥をすべて沈めた、上澄みのような目をした父に、シェルは言いようのない不安を抱いた。
これが父の素顔なら、あまりにも透き通り底の見えない淵のようで──その静謐さが恐ろしい。
「私には、あの女こそがルチアの命を奪った仇だった。妃となり御子を儲けながら、いつまでもルチアを女神のように崇め支えとしたあの女……。そのせいでルチアは──光り輝く私の王は、囚われた民を見捨てることができなかった」
「父、上……?」
縋りつこうと、シェルは父に歩み寄った。
闇深い過去を口にしながら、イリスは真っ直ぐに、そして穏やかにシェルを見つめている。
「あの女もその血を受け継ぐ御子も、生かしておくつもりはなかった。先帝陛下が何を言い残されようと、私は悔いていない。悔いているとしたら、あの女の血筋を絶やせなかったことだ」
近寄る息子を床に突き飛ばし、イリスはエーヴェルト目掛けて突進した。
その手には、短剣。──蝋燭の灯りを受け、鈍く光る白刃。
「父上‼︎」
イリスとエーヴェルトの影が重なるその時──一発の銃声が地下に轟いた。
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