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侍童
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──弟皇子を皇太子に擁立するため、あらゆる謀略を企てたユングリング大公が、そのすべてを退け皇太子の座を手に入れた兄皇子の軍門に降った証だ。
嫡子ではあっても本領の大公国で過ごしたことは殆どなく、父に愛されたこともないシェルは、最愛の妹は別として、家に親しみを感じていない。父の犯した過ちの償いに使用人とされたのだとしても、宮廷人に「最も高貴な侍従」と揶揄されても、家の不名誉に自尊心を傷つけられることはなかった。
仕え始めてからも、手元に置いて、気が向いた時に折檻するのかもしれないと覚悟していたが、多忙な皇太子には、侍従を痛めつけるために使う時間などないようだ。心にも体にも痛みを受けることなく、新米侍従としての日々は過ぎていく。
「シェルは瞳が黒い上に黒目がちだから、表情が読みづらいな。……猫と同じか」
「猫の都合は存じませんが、皇宮に仕える者は感情を表さないのが嗜みですので、それでよいのでございます」
「二人だけの時に、『ございます』はやめろと言っただろう。字数の分、時間の無駄だ」
「……そのようにお気が短いと、令嬢方が怯えてしまわれますよ」
ミレニオに留学する頃にはそのような会話ができるほど、凍土のごとく硬いシェルの警戒心も、多少は和らいでいた。
嫡子ではあっても本領の大公国で過ごしたことは殆どなく、父に愛されたこともないシェルは、最愛の妹は別として、家に親しみを感じていない。父の犯した過ちの償いに使用人とされたのだとしても、宮廷人に「最も高貴な侍従」と揶揄されても、家の不名誉に自尊心を傷つけられることはなかった。
仕え始めてからも、手元に置いて、気が向いた時に折檻するのかもしれないと覚悟していたが、多忙な皇太子には、侍従を痛めつけるために使う時間などないようだ。心にも体にも痛みを受けることなく、新米侍従としての日々は過ぎていく。
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